「アレルギーの本当?」は、へっちゃらの管理人「まっさん」が子供のアレルギーを調べる中で、気になった「アレルギーの雑学」「様々な治療法」「噂話」をまとめて編集しています。詳しくはこちらをご覧ください。
スマホを使っていると頭が痛くなる。
Wi-Fiの近くにいると、だるくなったり、皮膚がピリピリしたりする。
そんな症状を訴える人がいて、「電磁波アレルギー」という言葉が使われることがあります。
スマートフォン、Wi-Fi、パソコン、携帯電話の基地局など、電磁波を出す機器が身の回りに増えた今、「電磁波もアレルギーの原因になるの?」と気になる人がいても不思議ではありません。
ところが、この話を調べていくと、ちょっと不思議なところがあります。
電磁波を浴びると症状が出ると感じている人は実際にいる。
でも、実験室で「本当に電磁波が出ているときだけ症状が出るのか」を調べると、話が違ってくるのです。
そもそも「電磁波アレルギー」は医学的に存在するのでしょうか?
「電磁波アレルギー」と呼ばれているもの
医学や研究の世界では、「電磁波アレルギー」という名前よりも、**電磁過敏症(EHS:Electromagnetic Hypersensitivity)**という言葉が使われてきました。
近年は、電磁場が原因だと本人が考えている症状という意味で、**IEI-EMF(電磁場に起因すると考える特発性環境不耐症)**という表現も使われています。
WHOは、EHSを、電磁場への曝露と関連していると本人が考えるさまざまな症状として説明しています。
報告されている症状には、皮膚の赤みやピリピリ感、灼熱感、疲労、頭痛、集中しにくい、めまい、吐き気、動悸などがあります。症状が強く、生活に大きな支障が出る人もいるとされています。
| 報告されている症状 | 例 |
|---|---|
| 皮膚 | ピリピリする、灼熱感、赤みなど |
| 神経・全身 | 頭痛、疲労、めまい |
| 消化器 | 吐き気、消化器症状 |
| 循環器 | 動悸など |
| 認知・睡眠 | 集中しにくい、睡眠の問題など |
ここで大切なのは、「症状を訴える人がいる」ということと、「電磁波が原因だと証明されている」ということは別だということです。
そもそもアレルギーとは違う?
ここで「電磁波アレルギー」という名前を考えてみます。
一般的なアレルギーでは、花粉や食物など特定の物質に対して免疫系が反応します。
たとえば食物アレルギーなら、特定のタンパク質に対するIgE抗体などが関係することがあります。
一方、電磁波については、
電磁波
↓
特定のアレルゲンとして認識
↓
免疫反応
↓
症状
という仕組みは確認されていません。
そのため、現在の医学では**「電磁波アレルギー」という病気が確立しているわけではありません。**
WHOもEHSについて、明確な診断基準がなく、医学的な診断名として確立していないとしています。
「電磁波アレルギー」という名前があるからといって、花粉症や食物アレルギーと同じ仕組みとは限りません。
電磁波によって症状が出ると感じる人がいることと、その原因が免疫反応として確認されていることは別の話です。
でも、本当に症状が出る人はいる
ここで「じゃあ全部気のせいなの?」と思ってしまうかもしれません。
これは、そんなに単純な話ではありません。
WHOも、EHSを訴える人の症状は現実のものであり、ときには生活に大きな支障を与えるとしています。
問題になっているのは、
「症状があるかどうか」ではなく、「その症状を電磁波が直接引き起こしているのか」
という部分です。
そこで研究者たちは、かなり面白い実験をしてきました。
「電磁波が出ているか」を本人に知らせず調べる
たとえば、本人には電磁波が出ているのか分からないようにして、
本物の電磁波を浴びる時間と
電磁波を浴びていない時間
を比較します。
これが、いわゆるブラインド試験・二重盲検試験です。
もし本当に電磁波そのものが症状の直接的な原因なら、電磁波が出ているときに症状が増えるはずです。
2005年の系統的レビューでは、電磁波過敏症を訴える人を対象とした31件の実験、725人を検討しました。
24件では、電磁波への過敏性を支持する証拠が見つからず、残りの研究にも再現性などの問題がありました。全体として、電磁波を実際に浴びているかどうかを、本人が正確に判別できるという証拠は得られませんでした。
さらに2010年の更新版では、46件・1,175人のブラインドまたは二重盲検試験が検討されています。
このレビューでも、電磁波曝露が症状を引き起こすという説を支持する、再現性のある証拠は確認されませんでした。
「電磁波がないのに症状が出る」こともある?
ここで出てくるのが、ノセボ効果という考え方です。
これは簡単にいうと、
「これを浴びたら具合が悪くなるかもしれない」
という予想や不安などが、実際の症状の感じ方に影響する現象です。
2010年の系統的レビューでは、電磁波を実際に浴びているかどうかとは別に、ノセボ効果が急性症状に関係する可能性が示されています。
また、基地局からの電磁波を使った2015年の二重盲検研究でも、電磁波曝露を本人が知らない条件では、実際の曝露と症状の悪化との明確な関係は確認されませんでした。一方で、「電磁波がある」と分かっている条件では体調評価が低下する結果がみられています。
ただし、これをもって「症状は心理的なもの」と単純に決めつけることもできません。
症状そのものは実際に起きているからです。
電磁波を浴びたとき、体に何も起こらないの?
ここも研究者が調べています。
2011年の系統的レビューでは、電磁波過敏症を訴える人について、電磁波を浴びたときに心拍、血圧、脳波、注意力などの客観的な生理反応が変化するかを調べた29件の実験が検討されました。
一部の研究では変化が報告されましたが、多くは他の研究で再現されず、全体として「電磁波を浴びると、この人たちには特有の生理反応が起こる」といえる信頼できる証拠は得られていません。
つまり、研究者たちは「症状を訴えている人の体に何が起きているのか」まで調べているわけです。
それでも研究が続いているのはなぜ?
ここが少し面白いところです。
これまでの研究では、電磁波と症状の因果関係を支持する結果が一貫して得られていません。
それでも研究が続いているのは、「症状を訴える人が実際に存在する」という事実があるからです。
症状がある以上、
「なぜ起こるのか?」
「電磁波以外に何が関係しているのか?」
「環境への不安やストレスはどの程度関係しているのか?」
といった問題は残ります。
WHOも、電磁波との因果関係を確認できていない一方で、症状そのものを無視するのではなく、本人が訴える健康問題に対して適切な医療的対応を行うことを重視しています。
電磁波以外の原因が隠れている可能性
「スマホを使うと頭痛がする」という場合でも、電磁波だけが原因とは限りません。
たとえば、
- 長時間画面を見る
- 目の疲れ
- 姿勢の悪さ
- 睡眠不足
- 騒音
- 室内環境
- 仕事や生活上のストレス
など、同じ状況で一緒に起こっている要因があります。
WHOも、職場や住環境の空気、照明、作業環境、ストレスなど、電磁波以外の環境要因が関係する可能性を挙げています。
「スマホを触ると頭痛がする」という経験自体は本物でも、その原因が電磁波とは限らないわけです。
「電磁波を感じる」という感覚はどうなの?
ここは現在でも研究が続いている部分です。
電磁波過敏症を訴える人の中には、自分が電磁波を浴びていることを感覚的に分かると考えている人もいます。
ところが、電磁波の有無を本人に知らせずに調べた研究では、電磁波が出ているかどうかを安定して判別できるという結果は得られていません。
そのため、現時点では「人間には電磁波を感じ取る特殊な感覚器官がある」とする医学的な証拠はありません。
一方で、研究そのものが完全に終わったというわけでもありません。
電磁波以外の環境要因や個人差を含めて、症状がなぜ起こるのかを調べる研究は続いています。
電磁波アレルギーと普通のアレルギーを比べると?
ここで一度、違いを整理してみます。
| 一般的なアレルギー | 電磁波アレルギーと呼ばれるもの | |
|---|---|---|
| 原因 | 花粉、食物など | 電磁波が原因だと本人が認識する |
| 免疫反応 | IgEなど、疾患によって確認できる | 電磁波に対する特異的な免疫反応は確認されていない |
| 診断基準 | 疾患ごとに存在 | 確立していない |
| 症状 | 疾患ごとに特徴がある | 頭痛、疲労、皮膚症状などさまざま |
| 曝露との因果関係 | 確認できる疾患がある | 現在の研究では一貫して確認されていない |
この違いを見ると、「電磁波アレルギー」という呼び方が、医学的には少し違和感のある言葉だということが分かります。
「電磁波アレルギーってあるの?」を調べてみると
最初の疑問に戻ってみましょう。
現時点では、「電磁波アレルギー」という医学的に確立した病気はありません。
電磁波によって症状が出ると訴える人は実際にいます。
頭痛、疲労、めまい、皮膚のピリピリ感など、その症状も現実のものとして扱われています。
しかし、本人に電磁波が出ているかどうかを知らせない条件で調べた研究では、電磁波曝露と症状の間に一貫した因果関係は確認されていません。WHOも現在、電磁波を原因とする医学的診断としてEHSを認めていません。
だからといって、「症状なんてない」と片付けてしまうのも違います。
症状はある。
でも、その原因が電磁波だとはまだ証明されていない。
現在の医学では、この位置づけが一番近いでしょう。
「電磁波アレルギー」という言葉から想像するような、花粉症や食物アレルギーと同じ免疫反応が確認されているわけではありません。
それでも、なぜ特定の環境で症状が起こるのか。
電磁波以外の環境要因や、ノセボ効果、ストレス、生活環境などがどのように関係しているのか。
そこにはまだ調べる余地が残っています。
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