「体育のあとだけ、なぜか咳き込む」「運動すると苦しそうにしている」——そんな様子に気づいたことはありませんか?もしかすると、それは「運動誘発性喘息」かもしれません。
前回の記事(喘息の子の保育園・学校生活での配慮)でも少し触れましたが、今回はこの運動誘発性喘息について、原因から対策、おすすめのスポーツまで詳しくお伝えしていきます。
運動誘発性喘息ってなに?
運動誘発性喘息とは、運動をきっかけに喘息の症状(ゼーゼー・ハーハーという呼吸や咳)が引き起こされるもので、専門的には「運動誘発性気管支収縮(EIB:Exercise-Induced Bronchoconstriction)」と呼ばれています。
走ったあとに「息が切れてゼイゼイした」だけなのか、運動誘発性喘息を起こしているのかは、お子さん自身にはうまく区別がつかないこともあります。「体育の後だけいつも咳が長引く」「みんなより極端に息切れしている」といった様子があれば、一度意識して見てあげてください。
運動を制限する必要はない、というのが大原則
「うちの子は喘息だから、運動は控えさせたほうがいいのでは」と思う方もいらっしゃるかもしれません。ですが、喘息があるからといって運動を制限する必要はありません。予防薬を使うことで、運動をしても発作が起こらないように喘息をコントロールすることができます。
運動を避けすぎることには、体力や心肺機能の低下、生活習慣病のリスクが高まるといったデメリットもあります。治療で症状がコントロールできていれば、むしろ適度な運動は発作の予防にもつながります。
症状が出やすいスポーツ・出にくいスポーツ
同じ「運動」でも、種目によって症状の出やすさには差があります。
症状が出やすい傾向のスポーツ
- ランニング、サッカー、バスケットボール、マラソンなど、高い換気量が必要な持久系のスポーツ
- 屋外で行うスポーツ(気温・湿度など環境要因の影響を受けやすいため)
- スキーなどの冬のウィンタースポーツ(冷たく乾燥した空気が気道を刺激しやすいため)
症状が出にくい傾向のスポーツ
- 水泳:室内プールは湿度が高く保たれているため、気道が潤い、最も発作を起こしにくい環境の一つとされています。持久力を必要とするスポーツの中でも、特におすすめできる運動です
- ウォーキング:自分のペースで無理なく行える運動として取り入れやすいです
- ゴルフなど、途中で休憩を挟める運動
運動中・運動後に症状が出たときの対応
運動中や運動後に咳、喘鳴、呼吸困難などの症状が出て動きが鈍くなった場合は、運動を中止し、水分を摂りながら安静にしてください。多くの場合、10分ほどで回復するといわれています。
それでも回復しない場合は、処方されているβ2刺激薬(気管支拡張薬)を吸入します。10分ほど待っても症状が改善しない場合は、医療機関を受診してください。
「できる・できない」ではなく「合った運動を選ぶ」という視点
スポーツを選ぶときに大切なのは、「喘息だからできる・できない」で判断するのではなく、お子さんの症状や体力に合った運動を選ぶことです。
無理のない範囲から始めて、体調を見ながら少しずつ運動量を増やしていくこと、そして何より、お子さんが楽しみながら続けられる運動を見つけてあげることが、長い目で見て一番の近道になります。
運動誘発性喘息と付き合いながら活躍するアスリートたち
「運動誘発性喘息があるから、本格的なスポーツは難しいのでは」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。ですが、実際には運動誘発性喘息と付き合いながら世界トップクラスの実績を残しているアスリートも少なくありません。
フィギュアスケートの羽生結弦選手、レスリングの吉田沙保里選手、スピードスケートの清水宏保選手、プロ野球の藤川球児選手、プロサッカーの岡崎慎司選手など、国民的にもよく知られる選手たちが、運動誘発性喘息と付き合いながら競技生活を送ってきたことを公表しています。
たとえば岡崎選手は、プロ2年目に突然症状が現れ、急に思うように走れなくなったことに大きなショックを受けたと振り返っています。それでも、練習前に深呼吸をしたり、体調の予兆を感じたら無理をしないようにしたりと、自分の症状と向き合いながら「まずは大きく深呼吸してみる」ことを習慣にし、第一線で活躍を続けてきました。
適切な治療を行えば、パフォーマンスに影響が出ないこともわかっています。運動前に気管支拡張薬を吸入するなど、正しい対策を取りながら、多くのアスリートが第一線で活躍しています。「運動誘発性喘息があるから」とあきらめる必要はない、ということを、こうした先輩たちの姿が教えてくれます。
まとめ
運動誘発性喘息は、運動をきっかけに咳や息苦しさが出るもので、専門的には「運動誘発性気管支収縮」と呼ばれます。ですが、これがあるからといって運動そのものを避ける必要はなく、治療でコントロールしながら、症状に合ったスポーツを選んでいくことが大切です。
「できない」と決めつけず、「どうすれば楽しめるか」という視点で、お子さんに合った体の動かし方を一緒に見つけてあげてくださいね。
この記事は、食物アレルギーのあるお子さんを育てる運営者「まっさん」が、自身の経験と厚生労働省・専門機関等の公開情報をもとにまとめています。治療方針については、必ず主治医の指示を優先してください。詳しくは免責事項をご覧ください。
参考にした情報源
- 運動時のポイント|小児ぜん息基礎知識|独立行政法人環境再生保全機構
- 運動誘発性喘息(アスリート喘息)とは?症状・治療・予防法を解説|横浜弘明寺呼吸器内科クリニック
- 岡崎慎司初告白「突然のぜんそく…僕はこうして克服した」|女性自身
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