卵・乳のアレルギーでは、除去によって特定の栄養素が不足しやすいという話がありますが、小麦アレルギーの場合は少し事情が違います。
独立行政法人環境再生保全機構の資料によると、小麦の除去によって特に配慮すべき栄養素はないとされています。むしろ、主食を米飯にすることで副食のバランスがとりやすくなり、栄養面からは望ましい食事になるとも言われています。
つまり、「小麦を除去しているから栄養が心配」と思い詰める必要は、卵・乳ほどにはないということですね。ただし、代替食品の選び方によっては、気をつけたい点もいくつかあります。ここでは、その内容を整理していきます。
小麦そのものの除去は、実はそれほど心配いりません
小麦の主成分は炭水化物(糖質)で、米にも同じように炭水化物が含まれています。主食を小麦から米に置き換えることで、エネルギー源はしっかり確保できます。
小麦アレルギーの場合、しょうゆ・味噌・穀物酢・麦茶といった調味料は、原材料表示に「小麦」の記載がなければ基本的に除去の必要はないとされています。つまり、日常の調味料まで神経質に避ける必要は少なく、主食を米に置き換えれば、意外と対応しやすいアレルゲンだと言えます。
気をつけたいのは「代替食品の選び方」
小麦そのものの除去は心配いらない一方で、代替食品(米粉パンなど)の選び方によっては、栄養が偏ってしまう可能性があります。
日清製粉グループの研究によると、小麦粒の外側にある「ふすま(ブラン)」には、食物繊維・ビタミン・ミネラルが含まれていて、特に日本人が不足しがちな食物繊維・亜鉛・鉄分・マグネシウムを多く含む素材として注目されているとされています。
つまり、全粒粉のパンなどを食べていた方が小麦を除去すると、実はこうした栄養素をまとめて摂れる機会も一緒に失っている可能性がある、ということなんですね。米粉や雑穀粉など、小麦粉の代わりに使われる粉にはそれぞれ栄養価の違いがあります。精製された米粉は、小麦粉と比べてたんぱく質や食物繊維が少ない傾向があるとされています。市販の米粉パンなど、精製度の高い代替食品ばかりに頼っていると、次のような栄養素が不足しがちになることがあると言われています。
| 栄養素 | 不足しがちな理由 |
|---|---|
| 食物繊維 | 全粒粉に含まれる不溶性食物繊維が、精製された代替食品には少ないことがあるとされています |
| 亜鉛・鉄・マグネシウム | 小麦ふすまに多く含まれるこれらのミネラルが、精製された代替食品では少なくなる傾向があるとされています |
| ビタミンB群 | 小麦製品に含まれるビタミンB1・B2が、代替食品には少ないことがあるとされています |
とはいえ、これも「小麦を除去したから」というより、「精製度の高い食品に偏った場合」の話です。主食を米飯にして、副食(おかず)でバランスよく栄養を摂れば、大きな心配はいらないと考えられます。
バランスよく摂るための工夫
- 主食は米飯を基本にし、市販の米粉パンなどはたまに楽しむ程度にする
- 白米だけでなく、玄米や雑穀米を取り入れると、食物繊維やビタミンB群を補いやすくなります
- 野菜・きのこ・海藻類を積極的に取り入れ、食物繊維を補う
- 肉・魚・レバーなど、ビタミンB群や鉄を多く含む食材をおかずに取り入れる
- 牡蠣・ナッツ類・大豆製品など、亜鉛やマグネシウムを含む食材も意識して取り入れる
パンより手軽な選択肢「白米を玄米に変える」
米粉パンなど「小麦の代わりになるもの」を探す前に、もっと手軽な方法があります。それは、いつものご飯を白米から玄米に変えることです。
玄米には、ビタミンB1が白米ごはんの8倍、マグネシウムが7倍含まれているとされています。食物繊維は白米の4〜5倍とも言われ、まさに今回挙げた「不足しがちな栄養素」を、主食を変えるだけでまとめて補える計算になります。
白米150g×3杯と玄米150g×3杯を比べると、食物繊維量は1.35gと6.3gで、その差は4.6倍にもなるとされています。米粉パンを探す・作るという手間をかけなくても、「いつものお米を玄米に置き換える」だけで、栄養バランスを底上げできる可能性があるということですね。
玄米にはビタミンA・D・K・B12・Cはあまり含まれていないため、これらはおかずで補う意識も大切です。
ただし、玄米はパサついた食感で、お子さんによっては食べづらく感じることもあります。いきなり完全な玄米にするのではなく、白米と玄米を混ぜた「五分づき米」くらいから始めるのがおすすめです。白米に近い食べやすさを保ちながら、栄養面のメリットも取り入れやすくなります。慣れてきたら、少しずつ玄米の割合を増やしていくのも良い方法です。
米粉パンを選ぶときのポイント
- 米粉パンには小麦たんぱく質「グルテン」が使用されている場合があるため、「グルテン(小麦由来)」等の表示がないか、原材料表示を必ず確認してください。
- 食物繊維やビタミンが強化されている製品を選ぶと、栄養面での偏りを減らしやすくなります
- 米粉パンだけに頼らず、おかずと組み合わせてバランスを取ることを意識する
サプリメントは補助として
食事だけで栄養バランスを整えるのが難しいと感じるときは、サプリメントを補助的に取り入れるという選択肢もあります。ただし、サプリメントはあくまで食事の補助であり、置き換えるものではありません。原材料に小麦由来の成分が使われていないか、必ずパッケージの表示を確認してください。使用を検討する場合は、事前に医師や管理栄養士に相談してから取り入れることをおすすめします。
まとめ
小麦アレルギーによる除去そのものは、公的機関の見解でも「特に配慮すべき栄養素はない」とされており、卵・乳のアレルギーほど心配する必要はありません。ただし、精製された代替食品(米粉パンなど)に頼りすぎると、食物繊維・ビタミンB群・鉄・亜鉛・マグネシウムが不足しがちになることがあります。主食を米飯にして、おかずでバランスよく栄養を摂ることを意識すれば、無理なく対応できると思います。
なお本記事は一般的な情報提供を目的としており、症状の診断や治療方針については、必ず医師にご相談ください。
この記事は、食物アレルギーのあるお子さんを育てる運営者「まっさん」が、自身の経験と厚生労働省・専門機関等の公開情報をもとにまとめています。治療方針については、必ず主治医の指示を優先してください。詳しくは免責事項をご覧ください。
参考にした情報源
- 独立行政法人環境再生保全機構「原因食物別 除去のポイント 小麦」
- 日清製粉グループ「小麦の栄養と機能」
- 公益財団法人ニッポンハム食の未来財団「小麦|除去食と代替食」
- Panasonic UP LIFE「玄米の豊富な栄養とは?」(管理栄養士監修)
- 株式会社玄米酵素「玄米食がよい理由」
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