「アレルギーの本当?」は、へっちゃらの管理人「まっさん」が子供のアレルギーを調べる中で、気になった「アレルギーの雑学」「様々な治療法」「噂話」をまとめて編集しています。詳しくはこちらをご覧ください。
「魚油はアレルギーにいい」なんて話を見かけることがあります。
魚は体にいい。魚に含まれる油も体にいい。ここまではなんとなく分かります。でも、「魚油がアレルギーにもいい」となると、ちょっと気になりますよね。
そもそも、魚油の何がアレルギーにいいと言われているのでしょうか。
調べてみると、どうやらポイントは魚油そのものというより、そこに含まれているEPAとDHAにあるようです。
EPAとDHAは「オメガ3脂肪酸」と呼ばれる脂肪酸で、体の中の炎症や免疫反応に関係しています。さらに、炎症が起きたあと、それを落ち着かせていく仕組みにも関係していることが分かっています。
「それなら、アレルギーにもいいんじゃない?」
そう思うのも自然ですよね。
ところが、実際にアレルギーについて調べてみると、話はもう少し複雑でした。
ここがポイント
魚油に含まれるEPA・DHAは、炎症や免疫反応との関係が研究されています。
ただし、魚油を摂ればアレルギー症状が改善する、というところまで研究結果がそろっているわけではありません。
魚油の何が注目されているの?
魚油に含まれている代表的な成分がEPAとDHAです。
どちらもオメガ3系の脂肪酸で、体の中でさまざまな働きをしています。
特にアレルギーとの関係で面白いのが、炎症との関係です。
アレルギーでは、免疫反応によって炎症が起こります。鼻なら鼻の粘膜、喘息なら気道、アトピー性皮膚炎なら皮膚というように、症状が出る場所は違っても、炎症が関係しているケースがあります。
EPAやDHAは、こうした炎症反応に関係する物質の材料になります。
さらにEPAやDHAからは、レゾルビン、プロテクチン、マレシンといった物質が作られます。これらは、炎症をただ抑えるというより、起きた炎症を終わらせていく仕組みとの関係が研究されています。
このあたりが、「魚油ってアレルギーにもいいんじゃない?」と言われる理由のひとつです。
ただ、ここで注意したいのが、体の中で炎症に関係していることと、魚油を飲めばアレルギーが良くなることは別だということ。
実際の患者さんで症状がどう変わるのかは、また別に調べる必要があります。
アトピー性皮膚炎にはどうなの?
アトピー性皮膚炎と魚油の関係は、以前から研究されています。
EPAやDHAが炎症に関係するなら、皮膚の炎症にも何か良い影響があるのではないか。そんなところから研究されてきたようです。
でも、研究結果をまとめてみると、魚油を摂ることでアトピー性皮膚炎がはっきり改善する、とまでは言いにくい結果になっています。過去のメタ解析でも、魚油による明確な改善効果は確認されませんでした。
一方で、小規模な研究ではEPAやDHAを摂取した人の症状が改善したという結果もあります。
つまり、研究によって結果がそろっていないんです。
アトピー性皮膚炎では?
EPA・DHAと炎症には関係がある
↓
改善を示した小規模な研究もある
↓
でも、全体として「魚油がアトピーに効く」と言えるほどではない
「全然関係ない」と言い切るほどでもないけれど、「魚油を飲めば良くなる」と期待するのもまだ早い。そんな感じでしょうか。
喘息ではどう?
喘息も気道の炎症が関係するため、EPAやDHAとの関係が研究されています。
魚油を使った研究はいくつもありますが、こちらも結果は一枚岩ではありません。
2021年のシステマティックレビュー・メタ解析では、オメガ3脂肪酸のサプリメントによって喘息の症状やコントロールが一貫して改善するとはいえない結果でした。
以前から「魚をよく食べる人は喘息が少ないのでは?」という話もありますが、食生活には魚以外のいろいろな要素があるので、魚油だけの効果とは簡単に分けられません。
このあたりも、なかなか難しいところです。
花粉症などのアレルギー性鼻炎は?
花粉症などのアレルギー性鼻炎についても、EPAやDHAが研究されています。
最近では、持続性アレルギー性鼻炎の人を対象に、EPAとDHAを2か月間摂取してもらった研究がありました。EPAを1日1340mg、DHAを924mg摂取するグループとプラセボのグループを比べています。
結果はというと、鼻の症状や生活の質に明らかな差は確認されませんでした。
最近の研究では
EPA 1340mg+DHA 924mg/日を2か月
→ 鼻症状・QOLに明らかな改善なしただし、小規模な研究なので、この結果だけですべてを判断することもできません。
「EPAとDHAって炎症にいいんだから、花粉症にも効きそう」と思ってしまいますが、実際の症状になると、そう簡単にはいかないようです。
食物アレルギーとの関係は?
食物アレルギーについてもEPAやDHAの研究があります。
特に動物実験では、オメガ3脂肪酸によって腸内環境や炎症反応が変化し、食物アレルギーの反応に影響する可能性が調べられています。
マウスを使った研究では興味深い結果も出ていますが、ここはまだ人間での研究が十分とはいえません。
食物アレルギーについては
動物研究では興味深い結果がある
↓
でも、人間での研究はまだ少ない
↓
「魚油を摂れば食物アレルギーが改善する」とは言えない
なので、食物アレルギーのある子どもに「魚油がいいらしいから」と自己判断でサプリメントを使う、というところまではおすすめできません。
妊娠中のEPA・DHAは子どものアレルギーに関係する?
ここは少し面白い研究があります。
妊娠中にオメガ3脂肪酸を摂ることで、生まれた子どもの喘鳴や喘息に影響するのではないか、という研究です。
研究をまとめたメタ解析では、妊娠中の長鎖オメガ3脂肪酸の摂取によって、子どもの喘鳴・喘息のリスクが低下したという結果が出ています。
ただし、すべての研究で同じ結果が出ているわけではありません。
妊娠中のEPA・DHA
子どもの喘鳴・喘息が少なくなったという研究がある
↓
でも研究結果は完全には一致していない
↓
「アレルギー予防になる」とまでは言えない
ここは「魚油を飲めば子どものアレルギーを防げる」という話ではなく、母親のオメガ3摂取と、子どもの呼吸器系のアレルギーとの関係が研究されていると考えたほうがよさそうです。
EPAとDHA、どっちがいいの?
EPAとDHAはどちらもオメガ3脂肪酸ですが、まったく同じものではありません。
EPAは炎症に関係する脂質メディエーターとの関係がよく研究されていて、DHAは細胞膜や神経系など、さまざまな働きがあります。
では、アレルギーにはEPAとDHAのどちらがいいのでしょう。
ここは、今のところ**「こっちのほうがアレルギーに効く」と簡単には決められません。**
そもそも研究ではEPAとDHAを一緒に使っているものも多く、アレルギーの種類によっても結果が違います。
魚を食べるのと魚油サプリは同じ?
ここも少し注意したいところです。
魚を食べればEPAやDHAを摂ることができます。でも、魚を食べることと魚油サプリメントを飲むことは同じではありません。
魚にはEPA・DHA以外にも、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどが含まれています。一方、魚油サプリはEPAやDHAを集中的に摂りやすいものです。
だから、「魚油の研究で何か効果があったから、魚を食べれば同じ」とも言えませんし、逆に「魚を食べるよりサプリのほうがいい」という話でもありません。
結局、魚油に含まれるEPAとDHAはアレルギーに良いの?
ここまで調べてみると、魚油がアレルギーに良いと言われる理由は、まったく根拠のない話ではありませんでした。
EPAとDHAは、実際に炎症や免疫反応に関係しています。さらに、炎症を終わらせる仕組みとの関係も研究されています。
ただ、魚油を摂ればアレルギー症状が良くなる、というところまでは確認されていません。
アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎では研究結果がそろっておらず、食物アレルギーについても人間での研究はまだ十分ではありません。
一方で、妊娠中のオメガ3摂取と子どもの喘鳴・喘息との関係など、気になる研究結果があるのも事実です。
なので、「魚油はアレルギーに効く!」と考えるのもちょっと違うし、「アレルギーとは関係ない」と切り捨てるのも少し違う。
EPAやDHAが炎症や免疫にどう関わって、実際のアレルギー症状にどこまで影響するのか。ここはこれからも研究されていきそうです。
魚油について調べると、単純な「効く・効かない」では終わらないところが、なかなか面白いところでした。
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