「アレルギーの本当?」は、へっちゃらの管理人「まっさん」が子供のアレルギーを調べる中で、気になった「アレルギーの雑学」「様々な治療法」「噂話」をまとめて編集しています。詳しくはこちらをご覧ください。
「花粉症には甜茶がいいらしいよ」
そんな話を聞いたことがある人も多いんじゃないでしょうか。
スーパーやドラッグストアでも、花粉の季節になると「花粉対策」をうたった甜茶の商品を見かけることがあります。
でも、そもそも甜茶って普通のお茶と何が違うんでしょう。
そして本当に、花粉症の症状が楽になるのでしょうか。
調べてみると、甜茶とアレルギー性鼻炎については、かなり前から人を対象にした研究が行われていました。
しかも、研究によって結果が少し違います。
まず、甜茶ってどんなお茶?
甜茶は、中国などで昔から飲まれてきた甘いお茶です。
今回の話で出てくるのは、Rubus suavissimus(ルブス・スアビシムス)という植物の葉を使った甜茶です。
甜茶という名前から、「甘い普通のお茶なのかな?」と思うかもしれませんが、一般的な緑茶や紅茶とは植物そのものが違います。
この甜茶には、ポリフェノールなどの成分が含まれていて、以前からアレルギーとの関係が研究されてきました。
実験室レベルでは、甜茶エキスが肥満細胞からのヒスタミン放出を抑える作用についても研究されています。
ただし、ここで一つ大事なのは、試験管の中でアレルギー反応に関係する作用が見られたことと、人が飲んで花粉症が改善することは別の話だということです。
甜茶にはアレルギー反応との関係が研究されている成分があります。
でも、
「成分に作用がある」=「飲めば花粉症が良くなる」
とは限りません。そこで、人を対象にした研究を見る必要があります。
「甜茶で症状が改善した」という研究はあった
1990年代には、通年性アレルギー性鼻炎の患者を対象に、甜茶エキスを使った研究が行われています。
21人を対象に、甜茶エキスを含むキャンディーを1日3個、4週間摂取してもらったところ、くしゃみや鼻水などの症状について統計学的に有意な改善が認められたと報告されています。
最終的な全般改善度では、**「中等度改善」以上が47.6%**でした。
患者へのアンケートでは、「良くなった」以上と答えた人が66.7%だったとも報告されています。
この研究だけを見ると、
「やっぱり甜茶って効くんじゃない?」
と思いますよね。
実際、このころから甜茶は花粉症対策として広く知られるようになっていきました。
最初の研究で見られた結果
対象:通年性アレルギー性鼻炎 21人
期間:4週間
摂取:甜茶エキス入りキャンディー中等度改善以上:47.6%
患者自身の評価では、
「良くなった」以上:66.7%この研究だけなら、甜茶に期待したくなる結果です。
スギ花粉症でも研究されていた
さらに、スギ花粉症の患者30人を対象にした研究もあります。
この研究では、甜茶エキスを含む飲料を、スギ花粉が飛び始める前から飲むグループと、症状が出てから飲み始めるグループに分けています。
興味深いのは、鼻や目の症状そのものを点数化した「症状スコア」では、両グループに明確な差が認められなかった一方、薬の使用量を含めた評価では、花粉が飛ぶ前から飲み始めたグループのほうが良い結果になったことです。
研究終了時の医師による総合評価では、「中等度改善」以上が**花粉飛散前から飲み始めたグループで53.3%、症状が出てから飲み始めたグループで6.7%**でした。
この研究では、甜茶飲料を花粉飛散前から飲むことで、スギ花粉症の症状を予防的に抑える可能性が示されています。
スギ花粉症の研究では?
30人を対象に比較
花粉が飛ぶ前から摂取
→ 中等度改善以上 53.3%症状が出てから摂取
→ 中等度改善以上 6.7%ただし、症状スコアそのものでは、両グループに明確な差が確認されたわけではありません。
「飲む時期によって違いがあるのか?」という点が、この研究の面白いところです。
ここまでを見ると、かなり期待したくなります。
ところが、その後の研究を見ると話が少し変わってきます。
プラセボを使って調べたら、どうだった?
2011年に発表された研究では、チリダニによる通年性アレルギー性鼻炎の患者89人を対象に、甜茶エキスとプラセボを比較しています。
プラセボというのは、見た目や飲み方などは似ているけれど、調べたい成分を含まないもの。
「飲んだ本人が、効いていると思っているだけではないか?」
という影響をできるだけ取り除くために使われます。
この研究では、4週間にわたって甜茶エキスを摂取してもらい、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどを調べました。
すると、甜茶を飲んだグループでは症状が改善する傾向は見られたものの、プラセボを飲んだグループと比べて、明確な有意差は確認されませんでした。
「甜茶を飲んだ人の症状が良くなった」ことと、「甜茶だから症状が良くなった」ことは、同じではなかったわけです。
ここで結果が変わってきます
甜茶を飲んだグループ
→ 症状は改善する傾向があったでも……
甜茶 vs プラセボ
→ 明確な有意差は確認されなかった「改善した人がいた」だけでは、甜茶そのものの効果とは判断できない。
だから、プラセボと比較する研究が重要になります。
ここで、ちょっと話がややこしくなる
研究を並べてみると、こんな感じです。
| 研究 | 対象 | 結果 |
|---|---|---|
| 1990年代 | 通年性アレルギー性鼻炎21人 | 症状などに改善が見られた |
| 1990年代 | スギ花粉症30人 | 花粉飛散前からの摂取で良い結果 |
| 2011年 | ダニによるアレルギー性鼻炎89人 | プラセボとの明確な差は確認されず |
研究結果を並べると……
「甜茶で改善した」という研究はある。
↓
「花粉が飛ぶ前から飲んだほうが良かった」という研究もある。
↓
でも、プラセボと比べると明確な差が出なかった研究もある。
つまり、研究結果は一方向にそろっていません。
しかも、対象となったアレルギーも同じではありません。
スギ花粉症を調べた研究もあれば、ダニによる通年性アレルギー性鼻炎を調べた研究もあります。
「甜茶」という一つの言葉で全部をまとめてしまうと、この違いが見えなくなってしまいます。
じゃあ、昔の研究は間違いだったの?
ここも、単純に「昔の研究は間違い」と考える必要はありません。
研究によって、使っている甜茶エキスの量や製品、対象者、飲み始める時期、症状の評価方法などが違います。
また、花粉症の症状はその年の花粉飛散量や、その人の状態によっても変化します。
だから、一つの研究で改善が見られたからといって、それだけで効果が確立したことにはならないし、反対に一つの研究で差が出なかったからといって、すべての可能性が消えるわけでもありません。
研究を見るときに大事なのは「効いた・効かなかった」だけじゃない
・何人を対象にしたのか
・何を飲んだのか
・どれくらいの期間続けたのか
・何と比較したのか
・何を「改善」としたのか同じ「甜茶の研究」でも、条件が違えば結果の意味も変わってきます。
だからこそ、同じような研究を重ねて、結果がそろってくるかを見ることが大切なんです。
「ヒスタミンを抑える」なら効きそうだけど……
甜茶について調べると、「ヒスタミンを抑える」という説明をよく見かけます。
実際、甜茶エキスが肥満細胞からのヒスタミン放出に影響する仕組みについては、基礎研究があります。
でも、
ヒスタミンの放出を抑える作用がある
↓
人が甜茶を飲む
↓
花粉症の症状が改善する
というところには、いくつか段階があります。
今回の人を対象にした研究でも、結果は一枚岩ではありません。
だから、「ヒスタミンを抑える成分が入っているから、甜茶を飲めば花粉症が良くなる」と一直線につなげてしまうのは少し乱暴です。
「成分の作用」と「実際の効果」は別
試験管などで
アレルギー反応に関係する作用が確認された↓
実際に人が飲んで
花粉症の症状が改善するこの2つの間には、まだ確認しなければならないことがあります。
厚生労働省の調査では、実際に飲んでいる人もいた
甜茶がここまで花粉症対策として知られているのは、研究だけが理由ではありません。
厚生労働省の資料では、アレルギー性鼻炎に対して利用されている民間療法の一つとして甜茶が挙げられています。
成人のアレルギー性鼻炎患者を対象とした調査では、甜茶を利用した人の自己評価は「効果あり」が14%、「効果なし」が51%、「不明」が35%でした。
つまり、実際に試している人はいるけれど、「飲んだ人の大多数が効いたと感じている」という状況ではありませんでした。
実際に使った人の評価
効果あり:14%
効果なし:51%
不明:35%研究だけでなく、実際に甜茶を試した人の感じ方を見ても、評価はかなり分かれています。
甜茶は花粉症に効く?
ここまで研究を追ってみると、甜茶についてはちょっと面白い位置にあることが分かります。
昔の研究では、アレルギー性鼻炎やスギ花粉症の症状が改善したという結果が出ています。
一方で、89人を対象にプラセボと比較した研究では、甜茶を飲んだグループがプラセボより明らかに良かったとは確認されませんでした。
今回見えてきたこと
「甜茶で改善した」という研究はある
↓
「花粉前から飲む」という条件で良い結果が出た研究もある
↓
でも、プラセボと比べて明確な差が出なかった研究もある
だから、現時点で
「甜茶は花粉症に効く」と一言で決めてしまうのは難しい。
かといって、最初から
「甜茶なんて何の意味もない」
と片づけるのも、これまで実際に行われてきた研究を見ると少し違います。
研究結果がそろっていない。
今のところは、これが一番近いところだと思います。
「花粉症だから甜茶を飲んでみようかな」と思うこと自体は、今回の研究だけで否定されるものではありません。
ただ、甜茶だけで花粉症をコントロールできると期待するのは別の話。
症状が強い場合には、一般的な花粉症治療をきちんと受けながら、「そういえば甜茶については研究ではどうなってるんだろう?」くらいの距離感で見ておくのがよさそうです。
そして調べてみると、昔から言われてきた「甜茶が花粉症にいい」という話にも、ちゃんと研究の積み重ねがありました。
ただ、その研究結果を一つずつ見ていくと、思っていたほど単純な話ではなかった。
こういうところが、ちょっと面白いところですね。
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