「ミルクを飲ませたら、なんだか機嫌が悪い」「吐き戻しや血便が続く」——生まれてまもない赤ちゃんにこうした様子が見られると、何が原因か分からず不安になり夜も眠れないですよね。実は乳児期のアレルギーで比較的多いのが、粉ミルクに含まれる牛乳のたんぱく質が原因のものです。また、「母乳とミルク、どちらの方がアレルギーになりにくいの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。ここでは、発症予防の考え方から、すでにミルクアレルギーがある場合に使われる「アレルギー用ミルク」の種類・選び方まで整理します。
ミルクアレルギーとはどんな状態?
ミルクアレルギーとは粉ミルクに含まれる牛乳のたんぱく質に体が過敏に反応してしまう状態です。よくある症状には次のようなものがあります。
- 飲んだあとの嘔吐、下痢、血便
- 体重の増えが悪い
- じんましんや湿疹
- まれに、飲んですぐ強い症状(アナフィラキシー)が出ることもある
症状が出るタイミングは赤ちゃんによって差があり、飲んですぐ症状が出るタイプもあれば、半日程度かけてゆっくり出てくるタイプもあります。気になる様子があれば、自己判断で対応を変えず、まずは小児科・アレルギー専門医に相談してください。
ちなみに、ミルクアレルギーは比較的見通しが明るいアレルギーのひとつともいわれます。国内の報告では、6歳までに84.8%のお子さんが食べられる(飲める)ようになる(耐性を獲得する)とされています。焦らず、経過を医師と一緒に見守っていきましょう。
母乳とミルク、発症予防の観点から

「できるだけ母乳だけで育てた方が、アレルギーを防げるのでは?」——そう考える方も多いのではないでしょうか。実はこのテーマ、研究が今も進んでいる分野で、少し意外な報告もあります。
完全母乳栄養が予防に優れているという十分な根拠はない
まず前提として、完全母乳栄養が食物アレルギーの発症予防という点で優れているという十分なエビデンスは、今のところ確認されていません。母乳育児には栄養面・免疫面でさまざまな利点がありますが、「アレルギーを防ぐために、なんとしても母乳だけで頑張らないと」と気負いすぎる必要はありません。
早期からの少量ミルクに、予防効果が報告されている
一方で、意外な報告もあります。同ガイドラインは、生後の早い時期から、母乳と一緒に少量の普通の粉ミルク(牛乳タンパク)を摂取することで、赤ちゃんの牛乳アレルギーの発症を予防できる可能性があるとしています。国内では沖縄県内の病院で行われた研究(通称:スペード試験)でも、生後1〜3か月の早い時期から少量の粉ミルクを毎日与えたグループと、粉ミルクを完全に避けたグループとで、牛乳アレルギーの発症率を比較する取り組みが行われました。
「粉ミルクは遅らせた方が安全」というのは、実は思い込みかもしれないという報告ですが、まだ「絶対にこうすべき」と言い切れる段階ではありません。自己判断でミルクを足す・足さないを決めず、気になるときは乳児健診などで相談してみてください。
授乳中のママさんの食事制限も基本的に不要
授乳中、「あれもダメ、これもダメ」と食事を我慢していませんか?結論から言うと、基本的には気にせず、好きなものを食べて大丈夫です。母親が食べたたんぱく質は消化管で細かく分解されるため、母乳に移行する量はごくわずかで、赤ちゃんに症状を引き起こすレベルにはほとんど達しません。「予防のために」と卵や乳製品を我慢しても、赤ちゃんのアレルギーを防げるわけではなく、かえって母親の栄養状態に悪影響が出るおそれがあるため、推奨されていません。
ただし、湿疹がスキンケアや薬でも改善しない、便に血が混じるなど、すでに気になる症状が赤ちゃんに出ている場合は別です。母乳中のアレルゲンが関わっていないか、医師の指導のもとで確認することがあり、その場合でも除去が必要になるのは短期間で済むことがほとんどです。まずは自己判断で我慢するのではなく、気になることがあれば医師に相談してみてくださいね。
アレルギー用ミルクの種類
アレルギー用ミルクは、大きく分けて2種類あります。医師の指示でアレルギー用ミルクへの切り替えが必要になった場合に使われるもので、分子量が小さいものほど、アレルギー反応を起こしにくいとされています。

加水分解乳
牛乳のたんぱく質を酵素であらかじめ分解し、分子を小さくすることでアレルギー反応を起こしにくくしたミルクです。
- まずはこちらから試すのが一般的な流れです
- 「乳清(ホエイ)」を分解したタイプと「カゼイン」を分解したタイプがあります
- 分解が進んでいる分、独特の風味があり、月齢が上がると飲みにくく感じるお子さんもいます
代表的な製品に、明治の「ミルフィーHP」などがあります。
アミノ酸乳
牛乳のたんぱく質をまったく含まず、アミノ酸だけで組成されたミルクです。
- 加水分解乳でも症状が出てしまう、重症度の高いケースで使われます
- たんぱく質を含まないため、アレルギーを起こす力が非常に低いとされています
- 加水分解乳よりもさらに風味の癖が強く、飲みづらさが課題になることがあります
代表的な製品に、明治の「エレメンタルフォーミュラー」などがあります。
ちなみに:「HA表示」の育児用ミルクとは別物です
ドラッグストアなどで見かける「低アレルゲン(HA)」表示の育児用ミルクは、あくまでアレルギー予防を目的とした通常の育児用ミルクで、軽く加水分解しただけのものです。すでにミルクアレルギーを発症している赤ちゃんには、アレルギー反応を十分に抑えられない場合があるため使用できません。治療用のアレルギー用ミルクとは分解の程度がまったく異なるので、混同しないよう注意してください。
アレルギー用ミルクを使うまでの流れ
自己判断で切り替える前に、次のようなステップを踏むのが基本です。
- 気になる症状をメモする:いつ、どのミルクを、どれくらい飲んだあとに、どんな症状が出たか
- 小児科・アレルギー専門医を受診する:血液検査や、必要に応じて食物経口負荷試験で原因を確認
- 医師の指示でアレルギー用ミルクに切り替える:まず加水分解乳から試し、症状が続く場合はアミノ酸乳を検討するのが一般的な流れです
- 栄養状態を定期的にチェックする:アレルギー用ミルクだけが栄養源になる時期は、微量栄養素が不足しないよう医師・管理栄養士と相談しながら進めます
アレルギー用ミルクへの切り替えは、必ず医師の指示のもとで行ってください。 自己判断で普通の育児用ミルクから急に切り替えたり、逆に「もう治ったかも」と自己判断で戻したりするのは避けましょう。
費用について(参考情報)
先天性代謝異常症などに使われる一部の「登録特殊ミルク」は公費で無償供給される仕組みがありますが、ミルクアレルギー用のミルクの多くは「市販品」という扱いで、この助成の対象外です。加水分解が進んだミルクほど価格も上がる傾向があるため、負担に感じる場合は、自治体によって独自の助成制度がないか、かかりつけ医や自治体の窓口に確認してみるとよいでしょう。子育て世帯向けの制度全般については「赤ちゃんの頃から使える制度まとめ」もあわせてご覧ください。
まとめ
- 粉ミルクの牛乳たんぱくが原因で起こるミルクアレルギーは、乳児期に比較的多くみられる
- アレルギー用ミルクには「加水分解乳」と「アミノ酸乳」があり、分子が小さいほど反応が起きにくい
- 「HA表示」の予防用ミルクと治療用のアレルギー用ミルクは別物なので混同しない
- 切り替えは自己判断せず、必ず医師の指示に従う
ミルクの選び方に迷ったときは、この記事だけで判断せず、必ずかかりつけ医に相談してください(詳しくは免責事項をご確認ください)。離乳期に入ってからの進め方は「乳幼児期の離乳食」もあわせてご覧ください。
この記事は、食物アレルギーのあるお子さんを育てる運営者「まっさん」が、自身の経験と厚生労働省・専門機関等の公開情報をもとにまとめています。
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