朝起きたら、子供が「なんだか顔が変」と訴えてくる。よく顔を見ると、まぶたや唇だけがぷっくりと大きく腫れていた。かゆがってはいないけど、突っ張って痛そう。虫刺されなのか、蕁麻疹なのか、すぐ病院に行くべきなのか分からない。
まぶたや唇だけが大きく腫れるのは、蕁麻疹とは少し違う「クインケ浮腫(血管性浮腫)」かもしれません。多くは1〜3日ほどで消えますが、のどや舌が腫れて息が苦しいときは、すぐに救急要請が必要です。
結論:クインケ浮腫(血管性浮腫)は、皮膚や粘膜の深い部分が腫れる症状で、日本皮膚科学会は蕁麻疹の特殊型の一つとして説明しています。多くは1〜3日ほどで消えますが、息苦しい・のどがつまる・舌や口の中が大きく腫れるときは、救急車を利用して直ちに受診してください(PMDAによる)。
血管性浮腫が現れたときは、直ちに受診するべきとされています(MSDマニュアルによる)。
クインケ浮腫は医学的には「血管性浮腫」と呼ばれます

クインケ浮腫は、1882年にこの症状を詳しく報告したドイツの内科医、ハインリッヒ・クインケの名前にちなんだ呼び名です。医学的には「血管性浮腫」と呼ばれ、「皮膚ないし粘膜の深部を中心に生じる、一過性、限局性の浮腫」と定義されています(PMDA・厚生労働省の資料による)。
口唇・まぶた・頬によく見られ、顔面・首・手足・体幹・陰部にも出ることがあります。口の中やのど、消化管の粘膜に起こることもあります。通常の蕁麻疹のような、境界のはっきりした膨疹ではなく、赤みもあまりはっきりしない腫れとして現れます。かゆみはないことが多く、皮膚が引っ張られるために痛みを感じることがあります(PMDA、日本皮膚科学会による)。
蕁麻疹との違い

通常の蕁麻疹は皮膚のごく浅い血管が反応するのに対し、血管性浮腫は皮膚の深いところの血管が反応します。血管性浮腫には、蕁麻疹と同じ仕組み(肥満細胞から出るヒスタミン)で起こるタイプのほか、血液中のたんぱく質「C1インヒビター」の働きが弱いために起こるタイプなどがあります(日本皮膚科学会による)。蕁麻疹については「蕁麻疹の原因は食べ物?|そうとは限らない原因と受診目安」で紹介しています。
| 蕁麻疹 | クインケ浮腫(血管性浮腫) | |
|---|---|---|
| 起こる場所 | 皮膚のごく浅い部分 | 皮膚や粘膜の深い部分 |
| 主な症状 | 赤みと強いかゆみ | 赤みやかゆみはなく、痛みを感じることがある |
| 起こりやすい場所 | 全身 | 口唇・まぶた・頬など顔に多い |
| 消えるまでの時間 | 数時間以内に急速に消える | 1〜3日ほどかかる |
原因は大きく分けて4つ

クインケ浮腫の原因は、MSDマニュアルでは次のように整理されています。
- アレルギー性:虫刺され、ある種の食物(特に卵・魚・貝・甲殻類・ナッツ類・果物)、造影剤などがきっかけになる
- 薬剤性:解熱消炎鎮痛薬(NSAID)、ACE阻害薬(血圧を下げる薬)、一部のオピオイド(モルヒネ・コデインなど)が誘因になる。PMDAの資料では、抗菌薬、造影剤、筋弛緩薬なども原因薬剤としてあげられている
- C1インヒビターの働きが弱いタイプ:C1インヒビターの欠損や機能不全で起こる。遺伝性のタイプのほか、後から起こるタイプもある
- 原因不明(特発性):蕁麻疹を伴わない血管性浮腫が繰り返し起こった場合、通常は具体的な原因を特定できない
ACE阻害薬では、薬の作用で血液中の「ブラジキニン」という物質が増え、血管が広がって水分がもれやすくなることで起こります。発症は投与開始後1週間以内が多いものの、最短で服用1時間後、最長で10年以上たってからの報告もあります(PMDAによる)。
遺伝するタイプ「遺伝性血管性浮腫」
クインケ浮腫そのものは、ごく一部を除いて遺伝しません。遺伝するものとして知られているのが、C1インヒビターの遺伝子の異常で起こる「遺伝性血管性浮腫(HAE)」です(日本皮膚科学会による)。
- 患者数は1万人に1人〜15万人に1人(5万人に1人とする報告が多い)とされる、とてもまれな病気(日本補体学会のガイドライン2010による)
- 大部分は常染色体優性遺伝だが、家族に患者がいない例も全体の約25%ある(同ガイドライン、PMDAによる)
- 症状は通常、小児期や青年期に始まる(MSDマニュアルによる)
- 表面の蕁麻疹は基本的に出ない(PMDAによる)
- 発作は通常24時間でピークとなり、72時間でおさまることが多い(同ガイドラインによる)
- 誘因として、軽い傷、ウイルス感染、特定の食べ物、妊娠、エストロゲンを含む薬、ACE阻害薬、寒冷刺激などがあげられている(MSDマニュアルによる)
- 腹痛・吐き気・嘔吐・下痢などの消化器症状が出ることもある(同ガイドラインによる)
C1インヒビターの異常の有無は、血液検査である程度まで調べることができます(日本皮膚科学会による)。
喉や舌が腫れた場合は要注意

口の中・のど・気道をおおう粘膜が腫れると、呼吸が苦しくなったり、飲み込みにくくなったりすることがあります(MSDマニュアルによる)。口やのどの腫れが広がって喉頭浮腫になると、気道がせまくなったり、ふさがったりすることがあり、極めて危険とされています(PMDAによる)。
PMDAの資料では、次のような症状がある場合は緊急に受診するよう示されています。息苦しい場合は、救急車を利用して直ちに受診することが勧められています。
- 急に、くちびる・まぶた・舌・口の中・顔・首が大きく腫れる
- のどがつまる
- 息苦しい
- 話しづらい
アナフィラキシーについては「食物アレルギーの症状|気を付けたいアナフィラキシーの緊急対応」で紹介しています。
受診の目安と治療

MSDマニュアルでは、血管性浮腫が現れた場合は、直ちに受診するべきとされています。腫れが消えるまで1〜3日かかることがあるため、「そのうち引くだろう」と様子を見る前に、まずは医療機関に相談してください。
治療は、軽症では抗ヒスタミン薬でかゆみと腫れがある程度和らぎます。重症では、新鮮凍結血漿やエカランチドなどの特定の薬が使われることがあります。のどの腫れなど緊急の場合は、アドレナリンの注射を行い、必要に応じて呼吸用のチューブを入れます(MSDマニュアルによる)。
なお、血管性浮腫は、数週間から数か月にわたって繰り返すこともあります(MSDマニュアルによる)。
まとめ
クインケ浮腫(血管性浮腫)は、まぶたや唇などが突然大きく腫れる症状です。
- 皮膚や粘膜の深い部分が腫れ、赤みやかゆみはなく、痛みを感じることがある
- 蕁麻疹は数時間以内に消えるが、血管性浮腫は消えるまで1〜3日かかる
- 原因は、アレルギー・薬・C1インヒビターの異常・原因不明に大きく分けられる
- 遺伝するのは、ごく一部(遺伝性血管性浮腫)
- 息苦しい・のどがつまる・話しづらいときは、救急車を利用して直ちに受診
- 血管性浮腫が現れたら、直ちに受診するのが目安
「へっちゃら」まっさんより
クインケ浮腫は息子には出たことがありませんが、実はまっさん自身、唇が腫れることがあります。
決まって実家に帰省しているときにクインケ浮腫が出るので、実家には、僕だけが反応する何かしらのアレルギー物質があるのかもしれません。
食事をしているときに出ているような気がするので、母がご飯のときによく割りばしを出してくれることもあり、「割りばしかな?」とワタクシは疑っているのですが、実際のところはどうなのでしょう?
>前の記事では
蕁麻疹の原因は食べ物?|そうとは限らない原因と受診目安
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