免疫細胞の7割は、腸に集まっています
ちょっと意外に聞こえるかもしれませんが、体の免疫細胞のおよそ7割は、腸に集まっているんだそうです。腸って、食べ物を消化・吸収するだけの場所だと思われがちですが、実は「これは受け入れて大丈夫」「これは異物だから攻撃しよう」というジャッジをする、体の中の判定役でもあるんですね。
そう考えると、腸のコンディションって、アレルギーとも何か関係がありそうな気がしませんか?実際、最近の研究で、腸内細菌のバランス(腸内フローラ)とアレルギーの発症には、何かしらのつながりがありそうだ、ということが少しずつ分かってきています。この記事では、そのあたりで分かってきていることと、毎日の食事でできる腸活の工夫を、ゆるっとまとめてみます。
なぜ腸内環境がアレルギーに関係するの?
アレルギーのある子は、腸内細菌の多様性が低いみたい
関西医科大学の研究チームが、卵アレルギーのある子とない子の腸内細菌を比べてみたところ、アレルギーのある子は腸内細菌の種類の豊かさ(多様性)が低くて、なかでも「酪酸」という物質を作る「酪酸産生菌」の割合が、アレルギーのない子の3分の1くらいしかなかった、という報告があるそうです。
酪酸には、免疫の暴走を抑える「制御性T細胞(Tレグ)」を増やす役割があると言われていて、酪酸産生菌が少ないと、Tレグも増えにくくなるかもしれない、と考えられているんですね。つまり、腸内細菌のバランスが、アレルギーになりやすいかどうかに、間接的に関わっているかもしれない、ということなんです。
アレルギー物質って、どこで分解・吸収されるの?
食べ物に含まれるアレルギー物質(アレルゲン)は、そのほとんどが「たんぱく質」なんです。口から入った食べ物は、まず胃で胃酸と消化酵素によってざっくり分解されて、次に小腸で、すい臓から出る消化酵素によって、さらに細かいアミノ酸やペプチド(アミノ酸がいくつか連なったもの)にまで分解されていきます。そして主に小腸の壁(絨毛と呼ばれる無数の細かい突起がある部分)から、体の中に吸収されていくんですね。
普段は、たんぱく質はアミノ酸のレベルまで分解されてから吸収されるので、体はそれを「食べ物」だと分かって、過剰には反応しません。これを「経口免疫寛容」と呼ぶそうです。ただ、消化がしっかり進まないまま、アレルゲンとしての性質を保ったペプチドが腸の壁を通り抜けてしまうことがあるんです。腸のバリア機能がまだ未熟な赤ちゃんや、腸の壁の結びつきが緩んでいる状態(この記事の後半で紹介する「リーキーガット」みたいなケース)だと、これが起こりやすくなると考えられています。腸の壁のすぐ下には免疫細胞が集まっていて、そこで未消化のペプチドが「異物だ」と認識されると、IgE抗体が作られて、アレルギー反応につながっていく、という流れなんですね。腸内環境を整えることが、この一連の流れ全体に関わってくる、というわけです。
腸内フローラの土台は、3歳ごろまでにできるみたい
赤ちゃんはお腹の中ではほぼ無菌状態で生まれてきて、出産のときや母乳・離乳食、家族とのスキンシップを通して少しずつ腸内細菌をもらっていくと言われています。そして、その人の腸内フローラの基礎は、だいたい3歳ごろまでに決まってくるとされているんです。だからこそ、乳幼児期の食事や生活習慣が大切になってくる、ということみたいですね。
もちろん、3歳を過ぎたからもう手遅れ、というわけではありません。腸内環境は日々の食事によって、大人になってからでも変わっていくものなので、今日から意識することにはちゃんと意味があります。
毎日の腸活、何をすればいい?
発酵食品で「善玉菌」を取り入れる
納豆、味噌、ヨーグルト、キムチ、ぬか漬けなど、発酵食品には乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌(プロバイオティクス)が含まれています。ただ、これらの菌はずっと腸に住み着いてくれるわけではないので、毎日少しずつ、コツコツ取り入れていくのがよさそうです。
- 朝食にヨーグルト(無糖タイプがおすすめ。果物を添えると食べやすくなります)
- 味噌汁を習慣に(わかめ、豆腐、きのこなどの具と組み合わせると、なお良いみたいです)
- 納豆、キムチ、ぬか漬けなどをローテーションで(菌の種類が偏らないようにする工夫です)
食物繊維で「善玉菌のエサ」を届ける

野菜、豆類、海藻、きのこなどに含まれる食物繊維やオリゴ糖は、善玉菌のエサになる「プレバイオティクス」と呼ばれています。発酵食品(菌そのもの)と食物繊維(菌のエサ)を組み合わせて摂ると、それぞれ別々に摂るより効果的だと言われているんです。
- ヨーグルト+バナナ:食物繊維と乳酸菌を同時に
- 味噌汁+きのこ・海藻:プレバイオティクスをプラスできます
- ごぼう、ほうれん草、豆類、全粒穀物なども積極的に
朝ごはんが排便リズムを整えてくれる
便秘がちだと、腸内環境も崩れやすくなります。3食バランスよく食べるのが基本ですが、特に朝食は、寝ている間に休んでいた腸を動かして、排便のリズムを整えるうえで大事な役割を持っているそうです。朝食を毎日食べる子と食べない子とでは、便秘の割合に差が出るという調査結果もあるみたいです。
腸内環境に良くないと言われている食べ物
加工食品・高脂肪食・砂糖の摂りすぎ
スナック菓子やインスタント食品などの加工食品、揚げ物などの高脂肪食、砂糖の多いお菓子・飲み物は、腸内の善玉菌より悪玉菌が優位になりやすい方向に働いてしまう、と言われています。ここまで紹介してきた発酵食品・食物繊維とは、ちょうど逆の存在、というイメージです。
小麦(グルテン)については、ちょっと慎重に考えたいところ
「小麦は腸内環境を壊す」という話、聞いたことがある方もいると思います。これにはいくつか理由があるみたいです。小麦に含まれる「グルテン」が分解されるときにできる「グリアジン」という物質が、腸の細胞同士の結びつき(タイトジャンクション)を緩める信号を出す、という仕組みが研究で報告されているんです。これが「リーキーガット(腸もれ)」と呼ばれる状態につながることがある、という理屈なんですね。
ただ、ここはちょっと慎重に受け止めたいポイントでもあります。この仕組みは、セリアック病やグルテン過敏症など、特定の体質を持つ人に特に強く影響することは分かっているものの、健康な人みんなに同じくらい当てはまるかどうかは、まだ十分なエビデンスがあるわけではないみたいなんです。実際、「すべての人にグルテンフリーが効く」という医学的な根拠は今のところ無い、という指摘もあります。安易にグルテンフリーにしてしまうと、かえって栄養バランスを崩してしまうこともあるようです。
小麦アレルギーがある場合はもちろん除去が必要ですが、そうでない場合に「小麦は体に悪いから避けたほうがいい」と一律に決めつける必要はなさそうです。気になるときは、自己判断で除去を始める前に、一度お医者さんに相談してみるのが安心だと思います。
まとめ
腸内細菌とアレルギーの関係は、まだ研究が進んでいる途中の分野ではあるものの、「腸を整えることが、体にとって良い方向に働きやすい」ということは、いろいろな研究から少しずつ見えてきています。発酵食品と食物繊維を組み合わせた食事、そして朝ごはんをしっかり食べる習慣。特別なことをしなくても、今日から少しずつ始められることばかりです。栄養面で気になることがあれば、自己判断せず、医師や管理栄養士に相談してください。
免責事項
この記事は、食物アレルギーのあるお子さんを育てる運営者「まっさん」が、自身の経験と厚生労働省・専門機関等の公開情報をもとにまとめています。治療方針については、必ず主治医の指示を優先してください。詳しくは免責事項をご覧ください。
参考情報源
・カネリョウメディア「アレルギーは腸内細菌の乱れが原因?」
・日本小児アレルギー学会誌「小児アレルギー疾患の発症・予後と腸内環境」
・腸内細菌学会 用語集「食物アレルギーと腸内菌叢」
・キッズアライズ「子どもに食べさせたい発酵食品の健康パワーとは?」
・腸の辞典「グルテンはカラダに良くないって本当?」
・自然免疫応用技研株式会社「リーキーガットとLPS」
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