「アレルギーの本当?」は、へっちゃらの管理人「まっさん」が子供のアレルギーを調べる中で、気になった「アレルギーの雑学」「様々な治療法」「噂話」をまとめて編集しています。詳しくはこちらをご覧ください。
そもそも「抗ヒスタミン薬」って何をしているの?
ネトルの話に入る前に、まずヒスタミンについて少しだけ。
花粉などのアレルゲンが体内に入ると、免疫反応の一環として肥満細胞などからヒスタミンが放出されます。
このヒスタミンが、鼻のかゆみやくしゃみ、鼻水などのアレルギー症状に関係しています。
抗ヒスタミン薬は、このヒスタミンが作用する「H1受容体」をブロックすることで、アレルギー症状を抑える薬です。
ここがポイント
「抗ヒスタミン」と聞くと、ヒスタミンを直接なくすイメージがありますが、実際の抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが作用するH1受容体をブロックすることで症状を抑えます。
そこで気になるのが、ネトルです。
ネトルにはヒスタミンに関係する作用が見つかっていた
実は、ネトルについてかなり直接的にこの部分を調べた研究があります。
2009年に発表された研究では、ネトル(Urtica dioica)の抽出物を使って、アレルギー性鼻炎に関係するいくつかの反応が調べられました。
すると、ネトル抽出物には、ヒスタミンH1受容体に対する拮抗作用が確認されました。
さらに、肥満細胞の活性化に関係するトリプターゼや、炎症反応に関わるCOX-1、COX-2などについても、ネトル抽出物による抑制作用が調べられています。
研究で調べられたネトルの作用
| 調べられたもの | 研究で見られた作用 |
|---|---|
| ヒスタミンH1受容体 | 拮抗作用が確認された |
| 肥満細胞のトリプターゼ | 活性を抑える作用が確認された |
| COX-1・COX-2 | プロスタグランジン産生を抑える作用が確認された |
ここがちょっと面白い
ネトルは「ヒスタミンに効く」と一言で片づけられる植物ではありません。
ヒスタミンの作用に関係するH1受容体だけでなく、肥満細胞や炎症反応に関係する複数の仕組みが研究されています。
ただし、この研究は人にネトルを飲んでもらって効果を確認したものではありません。
あくまで実験室でネトル抽出物の作用を調べた研究です。
そこで次に気になるのが、
「じゃあ、人が飲んだらどうだったの?」
というところです。
実際に人のアレルギー性鼻炎を調べた研究がある
ここがネトルの面白いところです。
ネトルには実験室での研究だけではなく、実際に人を対象にしてアレルギー性鼻炎への効果を調べた臨床試験があります。
代表的なもののひとつが、1990年に発表された試験です。
この研究では、98人が参加し、冷凍乾燥したネトルとプラセボを比較するランダム化二重盲検試験が行われました。
最終的に試験を完了したのは69人でした。
研究結果をざっくり整理すると、こうなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 参加者 | 98人 |
| 研究方法 | ランダム化・二重盲検 |
| 比較 | ネトル vs プラセボ |
| 使用したもの | 冷凍乾燥したネトル |
| 医師による全般評価 | ネトルがプラセボより高く評価 |
| 症状日誌 | ネトルはプラセボをわずかに上回った |
「ネトルを飲んだら花粉症が劇的に改善した」という結果ではありません。
でも、プラセボと比較してネトルのほうが良かったという結果が出た研究が、実際に存在するんです。
その後の研究では、鼻の中にも変化があった
さらに2017年には、ネトルの根の抽出物を使った別のランダム化二重盲検プラセボ対照試験が行われています。
この研究にはアレルギー性鼻炎の患者74人が参加し、ネトル150mgまたはプラセボを1か月間使用しました。
この研究では、単純に「鼻水が減ったか」だけではなく、鼻の中の好酸球や、IgE、IL-4、IL-5、IFN-γなども調べています。
その結果、ネトルを使用したグループでは、鼻粘膜の好酸球数が有意に減少しました。
2017年の研究で見られた変化
| 調べた項目 | 結果 |
|---|---|
| 鼻粘膜の好酸球 | ネトル群で有意に減少 |
| SNOT-22症状スコア | ネトル群・プラセボ群ともに改善 |
| IgE | 有意な変化なし |
| IL-4 | 有意な変化なし |
| IL-5 | 有意な変化なし |
| IFN-γ | 両群間で変化に差あり |
ここが大事
この研究で特に興味深いのは、ネトルを使ったグループで鼻の中の好酸球が減ったこと。
好酸球はアレルギー性炎症に関係する細胞なので、「ネトルがアレルギー反応の一部に影響しているのでは?」と考える材料になります。
一方で、症状を点数化したSNOT-22では、ネトル群だけでなくプラセボ群でも改善が見られています。
なので、この研究では「ネトルを飲めば鼻炎が改善する」と単純に結論づけるより、鼻の炎症に関係する部分で興味深い変化が確認された研究として見るほうが分かりやすいです。
「抗ヒスタミン薬と同じくらい効く」という話になると、少し違う
ここまで見ると、
「やっぱりネトルって天然の抗ヒスタミン薬なんじゃない?」
と思いますよね。
確かに、そう呼びたくなる材料はあります。
実験ではH1受容体への作用が確認されていますし、人を対象にしたアレルギー性鼻炎の研究でも、症状や鼻の炎症に関係する指標の変化が報告されています。
ただ、「抗ヒスタミン薬と同じもの」という意味ではありません。
ここは一度整理しておきましょう。
| 「ネトル」 | 「抗ヒスタミン薬」 |
|---|---|
| 植物・ハーブ | 医薬品 |
| 抽出物などに複数の成分が含まれる | 有効成分・作用機序が明確 |
| H1受容体への作用が実験で確認されている | H1受容体を標的として治療に使用 |
| 人での研究もある | 多数の臨床研究・使用実績がある |
| 研究途中の部分が多い | 医薬品として有効性・安全性が評価されている |
つまり
「ネトルには抗ヒスタミン作用を研究したデータがある」
と、
「ネトルは抗ヒスタミン薬と同じように使える」
は、別の話です。
しかも、ネトルそのものがアレルギーの原因になることもある
ここで、ちょっと意外な話があります。
ネトルはアレルギー対策のハーブとして紹介されることがありますが、ネトルそのものがアレルギー反応の原因になることもあります。
2016年に報告された研究では、ネトルの花粉や葉に触れたことで症状が出た2人の成人について調査され、ネトル花粉によるIgEを介したアレルギー反応が確認されました。
さらに研究では、ネトル花粉に含まれる複数のアレルゲン候補も特定されています。
ちょっと不思議な話
「アレルギーに良い」と言われる植物なのに、その植物自体がアレルゲンになることもある。
アレルギーって、こういうところがなかなか一筋縄ではいきません。
じゃあ、ネトルは天然の抗ヒスタミン薬なの?
ここまで調べてみると、ネトルには確かに「抗ヒスタミン」と呼びたくなる研究があります。
実験ではH1受容体への作用が確認され、肥満細胞や炎症反応に関係する複数の経路にも作用が調べられています。
さらに、アレルギー性鼻炎の人を対象にした研究では、プラセボと比べて良い評価が出た試験や、鼻粘膜の好酸球が減少した試験もありました。
だから、
「ネトルにアレルギー反応に関係する作用を研究したデータがある」
これは、ちゃんと研究から出てきた話です。
ただし、「天然の抗ヒスタミン薬」という言葉を、そのまま**「病院でもらう抗ヒスタミン薬と同じように効く」**という意味で受け取るのは違います。
むしろ今回調べていて面白かったのは、ネトルが一つの作用だけではなく、ヒスタミンH1受容体、肥満細胞、好酸球、炎症に関係する経路など、アレルギー反応のいくつかの場所に関わる可能性が研究されていることでした。
「天然の抗ヒスタミン薬」という一言だけで見るより、研究を一つずつ追ってみると、ネトルがなぜアレルギーとの関係で注目されてきたのかが見えてきます。
ただのハーブの噂ではなく、実験と人を対象にした研究の両方が存在する植物。
ネトル、思っていたよりちゃんと研究されていました。
※ネトルをサプリメントなどで利用する場合は、医薬品との相互作用や製品ごとの成分・濃度の違いにも注意が必要です。ハーブやサプリメントは「天然だから必ず安全」とは限らず、薬を使用している場合などは医療者に相談することが勧められています。
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