「いつか治りますか?」、診察室でよく聞かれる質問です
子どものアトピー性皮膚炎と付き合っていると、ふとした瞬間にこんな疑問が浮かびませんか。
「このかゆみや湿疹、いつか治るんだろうか」「大人になっても続くんだろうか」
まっさんも、保湿剤を塗りながら何度もこの疑問を抱きました。実はこの質問、多くの保護者が診察室で医師に投げかける、とてもよくある質問なんです。今日は「治る」という言葉の医学的な意味と、年齢による症状の変化、そして長く付き合っていく上での気持ちの向き合い方について、お話ししていきますね。
「治る」よりも「寛解」という考え方
以前の記事「アトピーの治療」でも触れましたが、アトピー性皮膚炎の治療で目指すゴールは、「完全に治す」というよりも「症状がない、あってもごく軽くて日常生活に困らない状態を保ち続けること」です。
この状態を医学的には「寛解」と呼びます。適切な治療によって症状がコントロールされた状態が長く維持されると寛解が期待でき、年齢とともにある程度の割合で寛解することが示されています。
つまり「治る」か「治らないか」の二択ではなく、「症状に振り回されない状態を、どれだけ長く保てるか」という視点で捉えるのが実態に近いんですね。この考え方を知っておくと、日々のケアへの向き合い方も少し変わってくると思います。
成長とともに症状はどう変わるの?
年齢による経過については、いくつかの傾向が報告されています。
全体の6割が生後1年以内に発症し、ほぼ85%が5歳までに発症するとされ、大多数のお子さんは小児期後半までに湿疹が消失していきます。また、乳幼児期に発症した場合、約40〜70%が6〜7歳頃までに症状が軽減するというデータもあります。
つまり、「多くの子は成長とともに落ち着いていく傾向がある」というのは大きな流れとして事実です。ただし、それで全員が完全に消失するわけではなく、個人差がとても大きいというのが実際のところなんですね。
症状が長引きやすい人には、いくつかの傾向があります
「うちの子は治る側なんだろうか、それとも長く続く側なんだろうか」と気になる方も多いと思います。断定はできませんが、症状が成人期まで長引きやすい方には、いくつかの共通した傾向が報告されています。
- 発症時期が早い(乳児期の早い段階から症状が出ている)
- 発症時のアトピー性皮膚炎の症状が重い(範囲が広い、炎症が強い)
- 家族にアレルギー疾患(喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎など)の既往がある
- 本人が喘息やアレルギー性鼻炎など、他のアレルギー疾患も合わせて持っている
これらはあくまで「その傾向がある人の割合が高め」という統計的な話であって、当てはまるからといって必ず長引くわけではありませんし、当てはまらないからといって必ず治るわけでもありません。ただ、こうした傾向がある場合は、より根気よく治療とスキンケアを続けていくことが大切になる、という目安として知っておくとよいと思います。
大人になってからも付き合っていく場合もあります

期に軽快したように見えても、思春期や成人になってから症状が再燃したり、あるいは大人になって初めて発症したりするケースもあります。この点については、別記事「大人になってからのアトピー」で詳しく取り上げる予定です。
「子どもの頃の病気」というイメージが強いアトピー性皮膚炎ですが、年齢を重ねても付き合っていく可能性がある病気だと知っておくことも、長い目で見た心構えとして大切だと思います。
こんな状況のとき、症状がぶり返しやすくなります
一度落ち着いていた症状が、ある日急にぶり返すことがあります。よく知られている誘因には、次のようなものがあります。
- 食生活が乱れたとき:栄養バランスが崩れたり、不規則な食事が続いたりすると、体調全体のコンディションが崩れやすくなります
- 強いストレスを抱えたとき:ストレスによって免疫の働きが乱れたり、自律神経のバランスが崩れたりすることで、皮膚の乾燥やかゆみが強くなることがあります
- 睡眠不足が続いたとき:進学・受験・環境の変化など、生活リズムが乱れやすい時期は要注意です
- 汗をかいたまま放置したとき:汗そのものが刺激になり、かゆみのきっかけになることがあります
- 季節の変わり目、特に空気が乾燥する時期:肌のバリア機能が低下しやすいタイミングです
お子さんの場合、本人が「ストレスを感じている」と自覚していないことも多いので、進級・行事・環境の変化があった時期に症状が悪化していないか、保護者が振り返ってみると、意外な誘因に気づくこともあります。誘因に気づけたからといって完全に避けきれるとは限りませんが、「なぜ今悪化しているんだろう」と不安になったときの手がかりとして、知っておくと安心材料になると思います。
「自然に治るはず」と自己判断でやめてしまうリスク
症状が落ち着いてくると、「もう治療をやめても大丈夫かも」と感じることがあるかもしれません。ですが、寛解に近づいている状態は、治療によって炎症が抑えられているからこそ保たれていることが多いんです。
以前の記事でも触れた「プロアクティブ療法」のように、症状が落ち着いた後も間隔を空けながら治療を続けることで、良い状態を維持しやすくなるという考え方があります。自己判断で急に治療をやめてしまうと、せっかく落ち着いていた症状がぶり返してしまうこともあるので、治療をやめる・減らすタイミングについては、必ず主治医と相談しながら進めていくことが大切です。
長く付き合う病気だからこそ、気持ちとの向き合い方も大切です
「いつ治るんだろう」という先の見えない不安は、保護者にとって大きな負担になることがあります。
まっさんも、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すたびに、一喜一憂してしまう時期がありました。ですが、寛解という考え方を知ってからは、「ゼロか100か」ではなく「今日はどのくらい落ち着いているか」という視点で見られるようになった気がします。
長期戦になる病気だからこそ、完璧を求めすぎず、日々のケアを根気よく続けていくこと、そして不安な気持ちを一人で抱え込まずに医師に相談することが、結果的に一番の近道なのだと思います。
まとめ
アトピー性皮膚炎は、「治る」か「治らないか」よりも、「症状に振り回されない状態を保てるかどうか」という視点で捉えるのが実態に近い病気です。多くの子は成長とともに症状が落ち着く傾向がありますが、個人差が大きく、大人になっても付き合っていくケースもあります。
自己判断で治療をやめたり、先の見通しについて過度に心配しすぎたりせず、経過については主治医と相談しながら進めてください。なお本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の予後を保証するものではありません。詳しくは免責事項をご確認ください。この記事は、食物アレルギーのあるお子さんを育てる運営者「まっさん」が、実体験と公開情報をもとにまとめています。
参考にした情報源
- 日経メディカル「湿疹(アトピー性皮膚炎)」
- 竹ノ塚駅前クリニック「アトピー」
- こばとも皮膚科「アトピー性皮膚炎は何歳から発症する?」
- MSDマニュアル家庭版「アトピー性皮膚炎(湿疹)」
- SOKUYAKU「アトピー性皮膚炎が悪化する理由は?」
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