エピペンを処方されたとき、「本当に自分に打てるんだろうか」「いつ打てばいいんだろう」と、不安になった方も多いのではないでしょうか。使う場面が来ないに越したことはありませんが、いざというときに落ち着いて対応できるよう、保管方法と使い方を確認しておきましょう。
エピペンとは
エピペンは、アナフィラキシー(重いアレルギー症状)の際に使う、アドレナリンの自己注射薬です。根本的な治療薬ではなく、症状の進行を一時的に抑え、医療機関にたどり着くまでの時間を稼ぐための「補助治療剤」という位置づけです。過去にアナフィラキシーを起こしたことがある方や、重い症状を起こす可能性がある方に処方されます。
入手方法(処方の流れ)
エピペンは医師の処方が必要な医薬品で、講習を受けて処方医登録をした医師のみが処方できます。
- アレルギー科・小児アレルギー科・小児科など、アレルギーに詳しい医療機関を受診する
- これまでの症状・アレルゲン・既往歴をメモにまとめて持参すると、診察がスムーズ
- 医師の判断で、使い方の説明・同意書への署名を経て処方される
- 処方箋を保険調剤薬局に持って行き、受け取る(在庫のない薬局もあるため、事前に電話確認すると安心)
費用は保険適用です。3割負担の場合、初回は診察・指導料も含めて1万円前後、継続処方の場合は薬剤費のみで数千円程度が目安とされています(乳幼児医療費助成の対象なら、自己負担がさらに軽減される場合があります)。金額は医療機関・時期によって変わるため、詳しくは受診先にご確認ください。
いつ使う?打つタイミングの目安|迷ったら打つ

こんな予兆に気づいたら注意
本格的なアナフィラキシー症状が出る前に、次のようなサインが見られることがあります。
- しきりに咳き込みだす(喉のイガイガ・違和感を訴えることも)
- 体を激しくかきむしりだす(じんましんやかゆみが急に強くなっているサイン)
- 「なんだか変な感じ」「お腹が痛い」など、いつもと違う訴えをする
- 顔色が悪くなる、ぐったりし始める
こうした予兆が見えたら、様子を見つつも、すぐにエピペンを取り出せる状態にしておくことが大切です。症状は数分で急速に悪くなることがあるため、「まだ大丈夫そう」と時間を置きすぎないようにしましょう。
アナフィラキシーは、皮膚・呼吸器・消化器・循環器など、2つ以上の臓器に症状が同時に出ることが特徴です。
- 全身のじんましんに加えて、呼吸が苦しい(皮膚+呼吸器の症状)
- 全身のじんましんに加えて、顔色が悪い・ぐったりしている(皮膚+循環器の症状)
- 全身のじんましんに加えて、繰り返す嘔吐・強い腹痛がある(皮膚+消化器の症状)
- 息がしにくい、強い咳込み、のどが締め付けられる感じ
- 意識がもうろうとする、ぐったりする
日本小児アレルギー学会は、できるだけ早期に、特に呼吸器症状が出た時点で使用することを推奨しています。「打つべきか、まだ様子を見るべきか」と迷う場面もあると思いますが、迷った場合は打つことが推奨されています。
エピペンの誤使用(実際には不要だった場合の使用)による有害な影響は、これまで数%報告されていますが、いずれも自然に回復しており、比較的安全性の高い薬とされています。万が一「打たなくてもよかった」としても、命に関わるようなリスクにはなりません。一方で、必要な場面で打つのが遅れてしまうと、症状が急速に悪化し、取り返しがつかなくなることがあります。「打ちすぎて後悔する」より「打たずに後悔する」方が、はるかに重大なリスクだと知っておくと、いざというときに迷わず行動しやすくなります。
エピペンの使い方|太ももに打つ
エピペン®注射液0.15mg・0.3mgとも、使い方は共通です。使用前後で針が見えない設計になっており、安全性に配慮されています。
- ① 携帯用ケースからエピペンを取り出す
- ② 青色の安全キャップを、まっすぐ上に引き抜く
- ③ 太ももの前外側に、オレンジ色の先端を垂直に押し当てる(衣服の上からでも注射可能)
- ④ 「カチッ」と音がするまで強く押し込み、そのまま約10秒間押し当てる
- ⑤ ゆっくりと引き抜き、オレンジ色のニードルカバーが伸びていることを確認する
お尻や腕には絶対に注射しないでください。 もし誤った部位に注射してしまった場合は、直ちに医療機関を受診してください。注射後10〜15分たっても症状の改善がみられない場合は、追加投与が可能とされています(主治医の指示に従ってください)。
打った後にすること|すぐ救急要請
- エピペンを使用したら、すぐに救急要請(119番)をする
- 使用済みのエピペンは、携帯ケースに入れて医療機関に持参する(安全キャップも一緒に)
- 症状が落ち着いたように見えても、必ず医療機関を受診する
エピペンはあくまで「時間を稼ぐ」ための薬であり、根本的な治療にはなりません。使用後は必ず医療的な処置につなげることが大切です。
保管方法
- 保管温度の目安は15〜30℃。多少30℃を超える程度(30〜35℃くらいまで、常時でなければ)であれば、大きな影響はないとされている
- ただし、夏場の締め切った車内は50℃を超えることがあり、こうした極端な高温に数日間さらされると、アドレナリンの濃度が著しく低下し、いざというときに必要な量が投与できなくなるおそれがある
- 「常温で30〜35℃程度」は過度に心配しすぎなくてよいが、「炎天下の車内・ダッシュボードへの放置」のような極端な高温・長時間は避ける
- エアコンのない部屋は要注意:猛暑日には、対策なしの室内でも日中30℃台後半まで室温が上がることがある。特に窓際・直射日光の当たる場所は表面温度がさらに高くなりやすいため、エアコンの効いた部屋の、日の当たらない場所で保管するのが安心
- 冷蔵庫には入れない。急激な温度変化で、注射器が変形したり、正常な投与量が出なくなったりするおそれがある
- 直射日光や、夏場の車内・車のダッシュボードの中には放置しない
- 屋外で保管する場合は、木陰など風通しがよく直射日光が当たらない場所を選ぶ
- アドレナリンは光に分解しやすいため、携帯用ケースに入れた状態で保存・携帯する
使用期限の確認方法
- エピペンには使用期限があり、期限が近づいたら早めに主治医に相談して更新の処方を受ける
- 本体側面の小窓から、中の液の色を確認できる。液が茶色く変色していたら、古くなっているサインなので、期限内でも早めに相談する
夏場の持ち歩き方
- 保冷剤をタオルなどで包み、エピペンと一緒にバッグに入れる
- 保冷剤がない場合は、冷たい飲料水のペットボトルなどと一緒に入れてもよい
- 遮光・保冷機能のあるエピペン専用ポーチを使うと、持ち歩きの管理がしやすくなる
助成金・保険でカバーできる?
「エピペン専用の助成金」「エピペン特化の任意保険」というものは、今のところ見当たりません。ただ、次のような制度で負担を軽くできる可能性があります。
- お住まいの自治体の乳幼児・子供医療費助成制度:対象年齢は自治体によって異なり(中学卒業まで〜高校卒業までなど)、自己負担が無料〜軽減される場合が多い
- 該当する場合、小児慢性特定疾病医療費助成制度などの対象になることもある(アナフィラキシーの重症度・診断内容による)
- 一般的な学資保険・医療保険は「エピペン費用」を個別に保障する商品ではなく、通院給付金など既存の枠組みでカバーされる形になる
制度の詳細・対象条件は自治体や加入している保険によって異なるため、お住まいの自治体窓口や、加入中の保険会社に確認するのが確実です。
まとめ
- エピペンは「症状を一時的に抑え、時間を稼ぐ」ための補助治療剤
- 処方医登録をした医師の診察を受け、保険適用(3割負担で数千円〜1万円前後)で処方される
- 乳幼児医療費助成など、自治体の制度でさらに負担を軽減できる場合がある
- しきりな咳き込み・激しくかきむしるなどの予兆に気づいたら、すぐ取り出せる状態に
- 2つ以上の臓器に症状が出たら使用の目安。迷ったら打つ(打ちすぎるより、打たない方がリスクが大きい)
- 太ももの前外側に、衣服の上からでも注射できる
- 使用後は必ず救急要請し、医療機関を受診する
- 保管は15〜30℃、冷蔵庫はNG。携帯用ケースに入れて光を避ける
エピペンの使用・保管については、必ず処方を受けた主治医の指示に従ってください(詳しくは免責事項をご確認ください)。
この記事は、食物アレルギーのあるお子さんを育てる運営者「まっさん」が、自身の経験と厚生労働省・専門機関等の公開情報をもとにまとめています。
参考にした情報源
- エピペン®の保管方法について|滋賀県ホームページ
- 実践編|エピペンの使い方|アナフィラキシー補助治療剤 エピペン
- アドレナリン自己注射(エピペン)の使用について|学校保健ポータルサイト
- アナフィラキシー時のエピペン®の使用について|独立行政法人環境再生保全機構
- エピペンの有効期限切れと保管・交換|学校・保育園への提出書類と管理
- 真夏の室内環境変化に関する観測調査|日本気象協会「熱ゼロ研究室」
- エピペン(アドレナリン自己注射薬)の処方条件と費用|保険適用の基準
- 医療費の助成制度ってどんなものがある?|マネードクター
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