子供のアレルギーに関する書類って、本当に種類が多いんですよね。「生活管理指導表」「与薬依頼書」「与薬依頼票」……名前が似ているものもあって、園や学校から「診断書と与薬依頼書を出してください」なんて言われると、「あれ、生活管理指導表だけじゃダメなの?」と混乱してしまうことがあります。
実際、あるアレルギーっ子の保護者コミュニティでも、こんなやり取りがありました。ゴールデンウィーク中に原因不明のアナフィラキシーを起こしたお子さんについて、園にエピペン(アドレナリン自己注射薬)を預かってほしいと相談したところ、園長先生から「診断書と、指定の書式はない与薬依頼書を出してください」と言われたそうです。相談した保護者は「生活管理指導表だけでいい気がするんだけど、どうなんだろう……」と迷っていました。
これに対して、詳しい別の保護者が「提出書類は指導表のみでいいはず」と教えてくれて、エピペンについては医師法第17条の解釈上、そもそも与薬依頼書自体が原則いらないんだよ、と説明していました。この記事では、それぞれの書類が何のためのものなのか、なぜエピペンだけ扱いが違うのかを、公的な資料をもとに整理してみます。
保険が使える「診療情報提供書」という位置づけ

生活管理指導表は、医師に記入してもらう専用の書類です。2022年4月からは保険が使える「診療情報提供書」という位置づけになったので、以前よりも作ってもらいやすくなったみたいです。
書かれている内容
主に書かれているのは、こんな内容です。
- 病名・重症度
- 除去が必要な食品(品目ごとにチェックする形式が多いです)
- 給食・離乳食の対応方法
- 緊急時の対応(エピペンが必要かどうか)
- 運動制限の有無
提出すると、それをもとに園や学校側と保護者とで面談があるのが一般的です。いわば「その子の状態を、お医者さんの言葉で園や学校に伝えるための書類」という感じですね。
書式は無料でダウンロードできます
書式は全国共通のものが無料で公開されているので、主治医に相談する前に、どんな項目があるのか一度見ておくと少し安心できると思います。
📋 生活管理指導表はこちらからダウンロード
📄 学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)(日本学校保健会)
📄 保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表(こども家庭庁)
どちらも医師に書いてもらう前提の書式なので、事前に印刷して持って行くとスムーズだと思います。
与薬依頼書ってなに?
一方の与薬依頼書(与薬依頼票と呼ばれることもあります)は、保護者が「うちの子にこの薬を、この時間に、この方法で飲ませてください(使わせてください)」と園や学校にお願いするための書類です。
アレルギーだけの書類ではなくて、熱性けいれんの座薬や、慢性疾患の飲み薬など、園や学校で日常的に薬を扱ってもらうときに、わりと広く使われているみたいです。医師名・薬の種類・使い方などを具体的に書くのが基本の形で、指定の書式がなく、園や学校ごとにフォーマットが違うことも多いようです。
指定の書式がない場合は、テンプレートをどうぞ
生活管理指導表と違って、与薬依頼書には全国共通の公式書式がありません。もし通っている園・学校に指定の書式がなかったら困ると思うので、一般的な項目を押さえた汎用テンプレートを用意してみました。
📋 へっちゃらオリジナルの配布物です
与薬依頼書テンプレート(へっちゃらオリジナル)
※本テンプレートはへっちゃらが独自に作成したオリジナルコンテンツです。あくまで一例なので、実際に提出するときは、通っている園・学校に所定の様式がないかどうか、念のため確認してみてくださいね。
なぜエピペンには、与薬依頼書が原則いらないの?
ここが、いちばん混同しやすいポイントだと思います。「エピペンも薬なんだから、与薬依頼書が必要なんじゃないの?」って思うのは、すごく自然な発想です。実際、コミュニティでのやり取りでも、そこが迷いのポイントになっていました。
先に答えを言うと、エピペンは他の飲み薬などとは、ちょっと扱いが違うんです。理由は、医師法第17条(医師でない人が医療行為をすることを禁じている条文)の解釈にあります。
医師法第17条の解釈
厚生労働省は2009年、文部科学省からの問い合わせに対してこんな趣旨の回答をしています。アナフィラキシーで命が危ない状態にある子に対して、その場に居合わせた先生が、本人が自分で注射できない代わりに注射する行為は、「繰り返すつもりでやっているわけではない」緊急やむを得ない行動と認められるから、医師法第17条には違反しない、というものです。こども家庭庁が示している保育所向けのガイドラインでも、同じ考え方が採られているみたいです。
つまりエピペンの注射は、法律上は「医療行為」にあたるんだけど、命に関わる緊急事態にたまたま居合わせた人が、その場限りでやる行為だから許される、というイメージなんですね。日常的に薬を飲ませたり使わせたりするのとは、そもそも性質が違うと考えられているわけです。だから、通常の飲み薬みたいな「与薬依頼書をもとに日常的に与薬する」という枠組みとは、ちょっと別物として扱われているんです。
通常の与薬との違い
ちなみに、こども家庭庁のガイドラインQ&Aには、飲み薬などの通常の与薬について「医師名、薬の種類、飲み方などを具体的に書いた与薬依頼票を持参してもらう」というルールが書いてあります。裏を返すと、これは日常的な与薬を想定したルールであって、緊急時に一度きり使うエピペンとは前提が違う、ということでもあるんですね。
実際の現場では、園や学校によって対応が分かれる

ここまでは公的な資料をもとにした一般的な整理ですが、実際の現場では、園や学校によって対応が分かれることもあるみたいです。エピペンについても、独自に診断書や依頼書の提出を求められるケースは実際にあります。
大事なのは、「原則はこうだから、絶対に出さなくていい」と主張することじゃなくて、「本来はこういう考え方があるんだ」と知ったうえで、園や学校とすり合わせていくことなんじゃないかと思います。コミュニティでのやり取りでも、「主治医から園に直接説明の電話を入れてもらう」という方法が挙がっていました。保護者だけで抱え込まず、主治医の力を借りるのも、ひとつの手だと思います。
「診断書」も出してと言われたら
冒頭のエピソードでは、園から「診断書」と「与薬依頼書」の両方を求められていました。ここで、もうひとつの書類「診断書」についても触れておきますね。
診断書は、病名や症状をお医者さんに証明してもらう、決まった書式のない自由記述の書類です。アレルギーに限らず、就職や保険など、いろんな場面で使われるもので、基本的に保険は使えず自費(数千円くらいのことが多く、医療機関によって差があります)になることが多いみたいです。
生活管理指導表と診断書の意外な関係
ここで知っておきたいのが、生活管理指導表と診断書のちょっと意外な関係です。実は2022年3月までは、生活管理指導表そのものが「診断書」として扱われていて、文書料は自費だったんです。それが2022年4月から、保険が使える「診療情報提供書」という位置づけに変わった、という経緯があります。つまり、生活管理指導表はもともと診断書が姿を変えたようなもの、と言えるんですね。
そう考えると、園から「診断書と生活管理指導表、両方出してください」と言われたとき、内容がかなり重複している可能性があります。もちろん園ごとの事情もあるので一概には言えませんが、「生活管理指導表だけで足りませんか?」と一度聞いてみる価値はありそうです。
診断書に書かれているべき内容
それでも診断書が必要と言われたときは、以下のような内容が書かれているか確認しておくと安心だと思います。
- お子さまの氏名・生年月日
- 傷病名(食物アレルギー・アナフィラキシーなど)
- 診断日・現在の状態
- 園や学校での生活上、配慮してほしい内容
- 発行日・有効期間
- 医療機関名・医師名・押印
迷ったときの整理
最後に、3つの書類をシンプルに比べておきます。
| 項目 | 生活管理指導表 | 与薬依頼書 | 診断書 |
|---|---|---|---|
| 記入する人 | 医師 | 保護者 | 医師 |
| 主な目的 | 病状・対応方針を園や学校に伝える | 日常的な薬の使用をお願いする | 病名・症状を証明する(用途は幅広い) |
| エピペンとの関係 | 緊急時対応が必要かどうかを書いておく | 原則いらない | 基本的に生活管理指導表と内容がかぶる |
| 書式 | 全国共通の様式がある | 園や学校によって違うことが多い | 決まった書式はなく自由記述 |
| 費用 | 2022年4月から保険適用 | 書類自体にお金はかからないことが多い | 保険適用外(自費)で数千円くらいのことが多い |
まとめ
生活管理指導表は「その子の状態をお医者さんの言葉で伝える書類」、与薬依頼書は「日常的な薬の使用を保護者がお願いする書類」と考えると、役割の違いがイメージしやすいと思います。エピペンについては、医師法第17条の解釈上、緊急時のやむを得ない行動として位置づけられているので、他の薬とは扱いが違って、与薬依頼書は原則いらないとされています。
とはいえ、園や学校によって求められる書類が違うこともあります。「うちの子の園ではどうなんだろう?」と迷ったときは自己判断せず、まずは一度、園や学校、そして主治医に聞いてみるのがいちばん確実です。
この記事は、食物アレルギーのあるお子さんを育てる運営者「まっさん」が、自身の経験と厚生労働省・専門機関等の公開情報をもとにまとめています。治療方針については、必ず主治医の指示を優先してください。詳しくは免責事項をご覧ください。
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