「アレルギーの本当?」は、へっちゃらの管理人「まっさん」が子供のアレルギーを調べる中で、気になった「アレルギーの雑学」「様々な治療法」「噂話」をまとめて編集しています。詳しくはこちらをご覧ください。
「お灸がアレルギーにいいらしい」
こう聞くと、ちょっと不思議です。
お灸といえば、熱い。ツボを温める。昔からある健康法。そんなイメージを持つ人が多いと思います。
それが、なぜアレルギーにつながるのか。
ネットで調べてみると、「花粉症にいい」「鼻炎が楽になった」という話だけではありません。
血行がよくなる。
自律神経が整う。
免疫のバランスが整う。
体質改善につながる。
……なるほど。でも、このあたりは何となく分かるようで、よく考えると曖昧です。
本当にお灸がアレルギーに効くのか。
それとも、「体に良さそう」というイメージから広がった話なのか。
噂の中身を一つずつ見ていくことにしました。
そもそも、お灸って何をしている?
お灸は、もぐさなどを使い、体の特定の場所に温熱刺激を与える方法です。
ただ「体を温める」というより、ツボとされる場所に刺激を加えることが特徴です。
昔ながらの、肌の上でもぐさを燃やすイメージが強いかもしれませんが、現在は皮膚に直接火をつけない方法など、さまざまなお灸があります。
ここで最初の疑問が残ります。
温めることが、どうしてアレルギーにつながるのか。
ネット上で語られている理由を見ていくと、だいたい次のような話に集まっていました。
| よく見かける説明 | お灸とどう結びつけられている? |
|---|---|
| 血行がよくなる | 温熱刺激によって体の反応や局所の血流に変化が起こる |
| 自律神経を整える | 刺激によって緊張や休息に関わる体の反応に影響すると考えられている |
| 免疫のバランスを整える | 体の免疫反応への影響が期待されるという説明 |
| 体質改善 | かなり幅広い意味で使われる言葉 |
この中で一番気になるのが、やはり「免疫」です。
アレルギーは免疫反応と関係するため、「免疫に影響するならアレルギーにも効くのでは?」という話につながりやすいからです。
ただ、「免疫を整える」という言葉だけでは、何がどう変わるのかは分かりません。
そこで、お灸をしたあとに体で起こると考えられていることを、もう少し見てみます。
「血行がよくなる」は本当?
お灸について語られるとき、「血行」という言葉はかなりよく出てきます。
これは単なるイメージだけの話ではありません。
温熱刺激を受けた場所では、皮膚やその周辺の血流に変化が起こります。体を温めれば血管の反応が変わること自体は、特別不思議なことではありません。
ただし、ここから話が大きくなりやすい。
「血行がよくなる」
↓
「老廃物が流れる」
↓
「体がきれいになる」
↓
「アレルギーも改善する」
というように、途中の説明を飛ばしてしまう話です。
ここは注意が必要そうです。
血流に変化が起こることと、それによってアレルギーが改善することは、別々に確認しなければなりません。
血行という話だけでは、まだ「お灸がアレルギーに効く」という噂の答えには届きません。
では、自律神経の話はどうでしょうか。
自律神経を整えると、アレルギーにいい?
お灸や鍼灸のサイトでは、「自律神経を整える」という説明もよく見かけます。
自律神経には、体が活動しているときに働きやすい交感神経と、休息時に働きやすい副交感神経があります。
この二つは、心拍や血管、消化など、私たちが意識しなくても動いている体の働きに関わっています。
お灸による刺激についても、自律神経系との関係を調べる研究があります。
だからといって、
お灸をする
↓
副交感神経が活発になる
↓
自律神経が整う
↓
アレルギーが治る
という一本道ではありません。
アレルギーは、自律神経だけで起こっているわけではないからです。
それでも「自律神経」という話がお灸とアレルギーを結びつけている理由は分かってきます。
鼻づまり、睡眠不足、ストレスなどは、日常生活の中で互いに影響し合います。
例えば、症状がつらくて眠れない。
眠れないことで体調が崩れる。
また症状が気になる。
こうした悪循環の中で、施術を受けて体が楽になったと感じる人がいることは、十分にあり得ます。
ただ、ここでまた一つ問題があります。
「体調が楽になった」と「アレルギーが治った」は同じではありません。
この違いを見ないまま、「お灸はアレルギーに効く」という話だけが広がっている可能性もあります。
ところが、ここまで調べてみると、噂を完全に「体験談だけ」と片付けることもできませんでした。
実は、お灸そのものを調べた研究がある
お灸とアレルギーについて研究を探してみると、特に多かったのがアレルギー性鼻炎でした。
花粉やハウスダストなどによって、くしゃみ、鼻水、鼻づまりが起こるアレルギー性鼻炎です。
2022年には、間接灸を使ったアレルギー性鼻炎の研究をまとめたシステマティックレビューとメタ解析が発表されています。
この研究では、21件、1,549人を対象とした試験をまとめ、間接灸が症状や生活の質に影響する可能性を評価していました。
さらに、2023年のネットワークメタ解析では、アレルギー性鼻炎に対するさまざまな種類のお灸を比較した38件のランダム化比較試験、4,257人分のデータが分析されています。
つまり、
「お灸がアレルギーに効く」というのは、ネット上の体験談だけで広がった噂
と決めつけられる話ではありませんでした。
実際に、お灸を使った研究が行われています。
でも、ここで終わりではありません。
むしろ、研究を見つけてからが、この噂の本当のところでした。
ここまでで分かってきたこと
・「血行」「自律神経」「体質改善」などの説明だけで、お灸がアレルギーに効くとは判断できない
・一方で、アレルギー性鼻炎については、お灸そのものを対象にした研究が複数ある
・ただし、研究があることと、医学的に治療として確立していることは別の話
研究では、何が変わったとされている?
ここが少し意外でした。
研究で主に見られていたのは、「アレルギーが治ったか」ではありません。
鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの症状。
そして、生活の質です。
2022年のレビューでは、間接灸によって症状スコアや生活の質に改善が見られたとする結果がまとめられています。
一方で、血液中のIgEについては、十分なデータがなく、明確な改善が確認できなかった項目もありました。
ここで、「お灸がアレルギーに効く」という噂の見え方が変わってきます。
例えば、
鼻づまりが軽くなった。
これは本人にとって、確かに大きな変化です。
花粉症の季節を以前より楽に過ごせるようになったなら、「お灸が効いた」と感じるのも自然でしょう。
でも、そのことと、
アレルギーそのものが治った。
は同じ意味ではありません。
ネットでは、この二つが「効いた」という一言にまとめられやすいのかもしれません。
では、お灸はアレルギーに効くの?
ここまで噂を追ってみると、答えは思っていたより単純ではありませんでした。
「ただの迷信」と切り捨てられるわけでもない。
一方で、「お灸をすればアレルギーが治る」とも言えない。
少なくともアレルギー性鼻炎については、お灸を対象にした複数の臨床研究や、それらをまとめたレビューがあります。症状や生活の質について改善を示した報告もあります。
ただし、2022年のレビューでは、全体としてのエビデンスの質が低いことや、より質の高い研究が必要なことも指摘されています。
さらに、お灸と一言でいっても、方法は一種類ではありません。
研究によって、使われたお灸の方法、組み合わせた治療、刺激する場所も違います。
だから、「お灸」という一つの言葉だけで、すべての方法に同じ効果があるとは言えません。
まとめ
「お灸がアレルギーに効く」という噂を調べてみました。
ネットでよく見かける「血行」「自律神経」「免疫」「体質改善」という説明だけでは、お灸とアレルギーの関係を説明しきれませんでした。
ただ、調査を進めていくと、アレルギー性鼻炎については、お灸そのものを対象にした研究が複数見つかりました。
症状や生活の質の改善を示した研究もあります。
一方で、研究には限界もあり、これをそのまま「お灸でアレルギーが治る」という話にすることはできません。
今回の噂を調べていて一番面白かったのは、「ただの噂」だと思って追いかけた先に、実際の研究があったことです。
でも、その研究をさらに読んでいくと、
「効いた」という言葉だけでは足りない。
というところに戻ってきました。
何のアレルギーなのか。
どんな症状が変わったのか。
生活が楽になったのか。
それとも、アレルギー反応そのものに変化があったのか。
「お灸がアレルギーに効く」という短い噂の中には、実は全部違う話が混ざっているようです。
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