「ちゃんと伝わっているだろうか」「新しい先生になったら、また一から説明しないと」——保育園や学校とのやり取りは、アレルギーっ子の親にとって、地味に負担の大きい仕事のひとつです。特に幼稚園・保育園の時期は、まだ本人が自分でアレルギーを説明できないぶん、周囲の対応力に頼る部分が大きくなります。小学校に上がると、就学時健康診断や入学説明会など、また新しい手続きの機会が出てきます。ここでは、園選びの段階から、入園・入学前の手続き、進級のタイミングまで、押さえておきたいポイントを整理しました。日々の給食対応の実務については「アレルギーっ子の給食対応」もあわせてご覧ください。
園選びの段階で確認しておきたいこと
特に幼稚園・保育園の時期は、まだ本人がアレルギーについて自分で伝えられないことが多く、周囲の対応力に頼る部分が大きい年齢です。そして、アレルギー対応の手厚さは、施設によってかなり差があります。
- 完全に対応してくれる園(除去食・代替食を用意してくれる)
- 一部だけ対応(特定の品目のみ除去、加工品は個別対応不可など)
- 対応が難しく、お弁当持参が基本になる園
どの対応レベルなのかは、入園を決める前に確認しておくことが大切です。対応が難しい園であっても、それ自体が悪いわけではなく、施設の体制・人員によるものです。「思っていたのと違った」を防ぐためにも、見学や問い合わせの段階で、次のような点を聞いておくと安心です。
- アレルギー対応児の受け入れ実績があるか
- 対応の範囲(完全除去のみか、代替食まで対応可能か)
- 対応できない場合、お弁当・代替食の持参は可能か
- エピペンを預かってもらえるか、預かった実績があるか
対応が難しいとわかった場合も、あらかじめ知っておけば、お弁当持参の準備をするなど、心の準備ができます。逆に、事前の確認が不十分なまま入園し、あとから「実はこの園では対応できない」とわかって、せっかくお友達ができた後に転園を選ばざるを得なくなる——という話も、実際に一定数聞かれます。子供にとっても大きな負担になるため、最初の段階でしっかり確認しておくことが、結果的に子供を守ることにつながります。
小学校入学時の流れ
公立小学校の場合、幼稚園・保育園と違って校区で通う学校が決まっていることがほとんどのため、「選ぶ」というより「決まった学校とどう連携するか」が中心になります(私立・国立を受験する場合は、幼稚園・保育園と同様に事前の確認が可能です)。
- 入学前年の10〜11月頃、就学時健康診断が実施される(このタイミングでアレルギーの有無を伝える機会がある)
- 2月頃の入学説明会でも、食物アレルギーに関する調査・保健調査が行われることが多い
- 保護者の了解のもと、通っていた幼稚園・保育所からの引き継ぎが行われる場合もある
- 中学校に進学する際も、改めて診断書・生活管理指導表の提出を求められることが一般的(小学校・中学校それぞれの在籍期間で有効期限が区切られることが多い)
就学時健康診断や入学説明会の案内は、自治体・学校から郵送で届きます。「まだ入学まで時間があるから」と後回しにせず、届いた案内をきっかけに早めに連絡・相談しておくと、新学期をスムーズに迎えやすくなります。
入園・入学前の流れ
- 入園(入学)先から「生活管理指導表」の書式が配布される
- この生活管理指導表を、かかりつけの医師に記入してもらう(保護者が自分で書く書類ではない)
- 記入済みの生活管理指導表を提出し、それをもとに面談が行われる
- 面談では、重症度・症状が出たときの対応・給食の対応・集団生活での注意点などが話し合われる
生活管理指導表は、保育所用・学校用で書式が異なります。医師の診察予約が必要になることもあるため、入園・入学が決まったら早めに動き始めるのが安心です。
記入費用は保険適用だが、落とし穴もある
2022年4月から、食物アレルギー用の生活管理指導表は、保険適用(診療情報提供書扱い)となりました。以前は1枚2,000〜3,000円ほどの自費負担が一般的でしたが、現在は自己負担2〜3割で作成してもらえます(子供医療費助成の対象なら、さらに自己負担がない場合もあります)。
- 保険適用になるのは、アナフィラキシーの既往がある場合・食物アレルギーがある場合などの条件に該当するケースが基本
- 「アレルギー疾患用」以外の、通常の生活管理指導表(運動制限などに関するもの)は、保険適用の対象外で自費負担のまま
- かかりつけ医が、通っている園・学校の校医・園医を兼ねている場合は、保険請求ができない仕組みになっており、その場合は自費扱いになることがある
- 費用や取り扱いは医療機関によって差があるため、記入を依頼する際に一度確認しておくと安心
面談で伝えたいこと

- アレルゲンとなる食品(品目・重症度)
- 誤って口にしてしまった場合の症状の出方
- エピペンの処方の有無、預ける場合の保管場所
- 家庭での対応と、集団生活で求める対応にギャップがないか
園によっては、園長・担任・調理員・保護者による四者面談が行われることもあります。関わる人が多いほど、情報が正確に共有されやすくなります。
エピペンを預ける場合に知っておきたいこと
エピペンを園・学校に預ける場合、実際には園側が対応に不慣れというケースも珍しくありません。「エピペンを預かった経験がない」「講習を受けたことがない」という声も、実際の保護者コミュニティではよく聞かれます。
教職員が代わりに注射しても医師法違反にならない
「先生が注射なんてしていいのか」と、園・学校側が及び腰になることがありますが、文部科学省と厚生労働省の間で、この点はすでに明確になっています。
- 本人が自分で注射できない状況で、その場に居合わせた教職員が代わりに注射しても、医師法(第17条)違反にはならないとされている
- これは、反復継続する意思を持って行う行為ではなく、緊急やむを得ない措置と解釈されるため
- 「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」(文部科学省監修)に即した対応であれば、法律上問題ないことが公的に確認されている
この点を園・学校側が知らない場合もあるため、必要であれば、ガイドラインの存在を伝えてみるのも一つの方法です。
預ける際に確認・相談しておきたいこと
- エピペンの保管場所(鍵のかかっていない、すぐ取り出せる場所が推奨されている。職員室など)
- 保管場所は、担任だけでなく先生・スタッフ全員で共有しておく(担任が不在の日、パート・実習生が対応する日でも、誰でもすぐ取り出せるようにするため)
- 年1回以上、できれば宿泊行事の前などにも、エピペントレーナー(練習用具)を使った研修の機会があるか
- 症状が教室以外(園庭・体育館・プールなど)で出た場合の対応も、あらかじめ話し合っておく
- 実際に注射する際、針が刺さった状態で本人が動いてしまわないよう、体を支える役割分担も決めておくと安心(園・学校側との研修で扱われることが多い)
エピペンを購入すると、練習用の「エピペントレーナー」が同梱されています。使用期限が切れて処分する前に、園・学校に寄付して研修に活用してもらうのも一つの方法です。
進級・クラス替え・転園時の引き継ぎ
- 新年度が始まる前に、新しい担任・栄養士との面談の機会があるか確認する
- 除去内容に変更がない場合でも、進級時に改めて医師の診断書・指示書の提出を求められることがある
- 転園・転校の場合は、それまでの対応内容(アレルゲン・エピペンの有無・過去の症状など)をまとめたメモを用意しておくと、引き継ぎがスムーズ
「去年は伝えたから大丈夫」と思わず、新しい環境になるたびに、改めて伝え直すという心構えでいると、伝え漏れを防ぎやすくなります。
まとめ
- 幼稚園・保育園は対応レベルに差があるため、入園前に確認しておく
- 公立小学校は校区で決まることが多く、就学時健康診断・入学説明会が伝えるタイミングになる
- 生活管理指導表は医師に記入してもらい、提出後に面談を行う(食物アレルギー用は保険適用だが、校医兼務など例外もある)
- エピペンを預ける場合、教職員が代わりに注射しても医師法違反にはならない(公的に確認済み)
- 保管場所は担任だけでなく、先生・スタッフ全員で共有しておく
- 進級・転園時は、新しい環境になるたびに改めて伝え直す心構えで
園・学校との連携の形は、施設によって差があります。不安な点は遠慮せず相談してください(詳しくは免責事項をご確認ください)。日々の給食対応の実務については「アレルギーっ子の給食対応」もあわせてご覧ください。
この記事は、食物アレルギーのあるお子さんを育てる運営者「まっさん」が、自身の経験と厚生労働省・専門機関等の公開情報をもとにまとめています。
参考にした情報源
- 保育所における食物アレルギー対応マニュアル|横浜市こども青少年局
- 入所(園)・入学までに必要な手続きなど|株式会社明治「知って!食物アレルギー」
- 学校の教職員による『エピペン®』投与と医師法|アレルギーを考える母の会
- 入園・入学時の手引き|Table for All 食物アレルギーケア
- 生活管理指導表について|アクアキッズクリニック
- 『生活管理指導表』料金が保険適応に!|おやなぎアレルギークリニック
- どうする?小学校入学 アレルギー対応準備|アレフレJapan
- 学校給食における食物アレルギー対応|柏市
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