最近子供がやたらと膝の裏を掻いているので、気になってよーく見てみたら血が出るくらい掻きむしっていた。肌がガサガサだし、一応保湿で対応してみたけどアトピーかもしれない。うちの子アレルギー持ちだしやっぱり関係あるのかな?
アトピー性皮膚炎は、アレルギー疾患の一つです。そして、荒れた肌は、食物アレルギーとも深く関係しています。ここでは、アトピーと食物アレルギーがつながる仕組みと、赤ちゃんの頃のスキンケアでわかっていることを整理します。
結論:アトピー性皮膚炎は、アレルギー疾患の一つです。生後1〜2か月に湿疹のある赤ちゃんは、食物アレルギーを発症しやすいことがわかっています(食物アレルギーの診療の手引き2023)。荒れた肌から食べ物のアレルゲンが入る「経皮感作」が関係していると考えられています。
(新生児期からの保湿で、アトピー性皮膚炎の発症リスクが下がったという研究があります。ただし、保湿をすれば絶対に防げるわけではありません)
アトピー性皮膚炎は、アレルギー疾患の一つ

2011年の国の報告では、日本人の約2人に1人が、何らかのアレルギー疾患を持っているとされています。食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・花粉症、アレルギー性結膜炎、そして、アトピー性皮膚炎も、この「アレルギー疾患」のグループの一つです。アトピー性皮膚炎も、アレルギー疾患の一つに分類されています。ただし、原因はアレルギーだけではなく、皮膚のバリア機能の低下が大きく関わっています。
アトピー性皮膚炎の有症率は、年齢によって、次のくらいの幅があります。
| 年齢 | 有症率 |
|---|---|
| 4か月児 | 12.8% |
| 1歳半児 | 9.8% |
| 3歳児 | 13.2% |
| 小学1年生 | 11.8% |
| 小学6年生 | 10.6% |
| 大学生 | 8.2% |
- 平成12〜14年度の調査結果です(厚生労働省「アレルギー疾患の現状等」)。
- たとえば4か月児100人を調べたとき、そのうち12.8人が、その時点でアトピー性皮膚炎の症状を持っていた、という意味です。一生のうちに何%がなるか、ではなく、その年齢の時点での有症率です。
- 治る子と、新しく発症する子が入れ替わりながらの数字なので、4か月児で症状があった子が、そのまま1歳半児の9.8%に含まれているとは限りません。
乳幼児期から小学生までは、およそ10〜13%台で、大学生では8.2%でした。「意外と身近な病気なんだ」と感じた方も多いのではないでしょうか。
アトピーの肌が、食物アレルギーにつながる理由

アトピー性皮膚炎の肌は、バリア機能が低下しています。そこから食物アレルギーにつながると考えられている流れを、順に説明します。
①皮膚のバリア機能が低下する
アトピー性皮膚炎では、皮膚の「バリア機能」が低下し、炎症を起こしやすく、皮膚の水分が失われやすい乾燥肌の状態になります。そのため、外からのアレルゲンが皮膚に入りやすくなると考えられています(横浜市の資料による)。
②バリアが弱った肌から、食物アレルゲンが入り込みやすくなる
健康な肌では、角層などの物理的なバリアがあるため、食べ物のアレルゲンは、皮膚の中で免疫に関わる細胞(ランゲルハンス細胞など)まで、通常は届きません。バリアが壊れると、そこから食べ物のアレルゲンが入り、感作が成立すると考えられています(「小児科」2014年、千葉大学の井上・下条両氏の報告による)。実際に、食べ物のアレルゲンが皮膚から入ったことがきっかけで食物アレルギーになった例もあります(茶のしずく石鹸の事例は「食物アレルギーの原因|食べた時と肌からの侵入(経皮感作)」で紹介しています)。
③「感作」が起こる
アレルゲンが体内に入ると、免疫が「IgE抗体」という物質を作ります。この状態を「感作」と言います(横浜市の資料による)。荒れた肌からアレルゲンに触れて感作が起こることを「経皮感作」と呼びます。くわしくは、「食物アレルギーの原因|食べた時と肌からの侵入(経皮感作)」で説明しています。
④感作が成立すると、食物アレルギーなどを発症しやすくなる
感作が成立した食べ物を食べたときに、アレルギー反応(じんましん、かゆみ、場合によっては呼吸器症状など)が出ることがあります。
- アトピー性皮膚炎のある赤ちゃんは、そうでない赤ちゃんに比べて、食べ物に感作されやすいと報告されています(食物アレルギーの診療の手引き2023)。
- ただし、アトピー性皮膚炎のお子さんが、全員、食物アレルギーになるわけではありません。
「二重抗原曝露仮説」という考え方

きっかけは、イギリスのLack(ラック)氏らの報告です。約14,000人の赤ちゃんを追跡した調査で、湿疹のある乳児へのピーナッツオイルによるスキンケアが、のちのピーナッツアレルギーの発症に関わる要因だったとされました。これを受けて2008年に発表されたのが、「二重抗原曝露仮説」です。この仮説は、次のように考えます。
- 炎症のある皮膚から食べ物のアレルゲンが入ると、アレルギーを起こす
- 適切な量とタイミングで口から食べた食物は、むしろアレルギー反応をおさえる「免疫寛容」を誘導する
なお、離乳食の開始を遅らせても、食物アレルギーを含むアレルギー疾患の発症予防効果はないと考えられています(山梨大学医学部附属病院 アレルギーセンター)。診療の手引きでも、離乳食の開始は生後5〜6か月頃が適当で、開始を遅らせることは推奨されていません。また、離乳食を始める前に、湿疹を早めに治療して十分にコントロールしておくことが推奨されています(食物アレルギーの診療の手引き2023)。
早めのスキンケアで、どれくらい変わる?

国立成育医療研究センターが行った研究では、アトピー性皮膚炎の家族歴がある新生児118人(保湿剤を使うグループ59人、対照グループ59人)を対象に、生後1週間から全身に保湿剤を塗る効果を調べました。その結果、生後32週までの間に、アトピー性皮膚炎の発症リスクが32%低下しました。
- この研究で調べたのは、アトピー性皮膚炎の発症リスクです。保湿ケアをすれば、絶対に防げる、というわけではありません。
生まれてすぐの時期からの保湿が、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げる可能性がある、ということは、覚えておいて損はない話だと思います。
まとめ
アトピーは、食物アレルギーとつながっています。
- アトピー性皮膚炎は、アレルギー疾患の一つ
- 湿疹のある赤ちゃんは食物アレルギーを発症しやすく、荒れた肌からアレルゲンが入る「経皮感作」が関係すると考えられている
- 適切な時期に口から食べることは、むしろアレルギーを抑える方向に働くと考えられている
- 生後早期からの保湿で、アトピー性皮膚炎の発症リスクが下がったという研究がある
「アレルギーマーチ」がどんな順番で進みうるかについては、「子供に多いアレルギー4種類|肌荒れ・喘息・鼻炎・結膜炎」や「アレルギーマーチとは|湿疹→食物アレルギー→喘息→鼻炎への流れ」もあわせてご覧ください。
「へっちゃら」まっさんより
我が家の経験からいうと、スキンケアは早めにしておいたほうがいいと思っています。肌が荒れたら、早めにワセリンなどで保湿してあげる。そして、普段からのスキンケアもしっかりして、肌のバリア機能を守ることを心がけています。
そうすることで、「経皮感作」のリスクを下げることにつながりますから。
うちでは昔の「自然が一番」という考え方を聞いて、それを信じていたら症状が悪化してしまいました。今思えば、あのときもっと早めに対処していればよかったと思います。自己判断での行動は間違いも多いので、きちんとお医者さんに相談しましょう。
これはあくまで我が家の経験ですが、みなさんがスキンケアについて考えるきっかけになればと思います。
>前の記事では
食物アレルギーの症状ベスト5|食後のこんな様子は要注意
参考にした情報源
- 厚生労働省|アレルギー疾患の現状等
- 横浜市|アトピー性皮膚炎
- 「食物アレルギーの診療の手引き2023」検討委員会(国立病院機構相模原病院)
- 国立成育医療研究センター|WISH-J研究(二重抗原曝露仮説の説明)
- 井上祐三朗・下条直樹(千葉大学)「早期スキンケアはアレルギーマーチを予防するか」『小児科臨床』2015年
- 『小児科』Vol.55 No.5(2014年)(経皮感作とバリア機能)
- 山梨大学医学部附属病院 アレルギーセンター「離乳食の開始は遅らせたほうがよいでしょうか?」
- 横浜市|アレルギーのしくみ(感作・IgE抗体)
- Horimukai ら「Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis」J Allergy Clin Immunol 2014(要旨)
- 旭労災病院ニュース 第119号(二重抗原暴露仮説・ピーナッツオイル)
- 厚生労働科学研究 成果報告書(新生児期からの保湿剤の研究)
コラム・レビューの新着
よく読まれている記事




コメント