「アレルギーの本当?」は、へっちゃらの管理人「まっさん」が子供のアレルギーを調べる中で、気になった「アレルギーの雑学」「様々な治療法」「噂話」をまとめて編集しています。詳しくはこちらをご覧ください。
「口の中の粘膜を少し採るだけでアレルギーが分かる」
「頬の内側をこするだけなら、採血しなくてもアレルギー検査ができるのでは?」
前回、
指先から少量の血液を採るだけでアレルギー検査ができる
という検査を取り上げました。
では今度は、さらに採血すらしない、
口の中の粘膜からアレルギーが分かる検査
はあるのでしょうか。
結論からいうと、
現在、口腔粘膜を採取するだけで、一般的なアレルギー検査として原因アレルゲンを診断する方法は確立されていません。
少なくとも、食物アレルギーなどのIgEを介したアレルギーについて、現在の診療ガイドラインで基本となっているのは、
- 症状や食べたものなどの詳しい問診
- 血液中の特異的IgE検査
- 皮膚プリックテスト
- 必要に応じた食物経口負荷試験
などです。
では、なぜ「口の中の粘膜からアレルギーが分かる」という話が出てくるのでしょうか。
調べてみると、
口の中でアレルギー反応が起こること
と、
口の中の粘膜を検査してアレルギーの原因を調べること
が混同されやすいようです。
この違いを整理してみます。
そもそも「口の中の粘膜を採る」とは?
口腔粘膜とは、
- 頬の内側
- 歯ぐき
- 舌
- 唇の内側
など、口の中を覆っている粘膜のことです。
遺伝子検査などでは、頬の内側を綿棒のようなものでこすり、
口腔粘膜の細胞
を採取する方法があります。
そのため、
「血を採らなくても検査できる」
というイメージから、
「アレルギーも口の粘膜で分かるのでは?」
と思う人がいるのかもしれません。
しかし、
遺伝子を調べる検査
と、
現在起きているアレルギー反応や、特定のアレルゲンへの感作を調べる検査
は、まったく同じものではありません。
アレルギー検査では、何を調べている?
一般的な血液によるアレルギー検査では、
特定のアレルゲンに対するIgE抗体
を調べます。
例えば、
- 卵
- 牛乳
- 小麦
- ダニ
- スギ花粉
- ネコ
などに対する特異的IgEです。
現在の食物アレルギー診断では、詳しい症状の経過を確認したうえで、血液中の特異的IgEや皮膚プリックテストなどを使って、アレルゲンへの感作を確認する方法が推奨されています。
つまり、
「頬の内側の細胞を採れば、血液検査と同じようにIgEが分かる」
という単純な仕組みではありません。
口の中でアレルギー症状が起こることはある
一方で、
口の中はアレルギーと無関係なのか?
といえば、そうではありません。
例えば、
口腔アレルギー症候群
と呼ばれるものがあります。
これは、特定の果物や野菜などを食べたあとに、
- 口の中がかゆい
- 唇が腫れる
- 舌がピリピリする
- 喉に違和感がある
といった症状が出ることがあるアレルギーです。
日本小児アレルギー学会の食物アレルギー診療ガイドラインでも、口腔アレルギー症候群は、口腔粘膜に限局する即時型アレルギー症状として説明されています。
ここで、
「口の中に症状が出るなら、口の中を調べれば原因が分かるのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、
口の中で症状が起こること
と、
口腔粘膜を採取して原因アレルゲンを検査できること
は別の話です。
現在の診断では「口腔粘膜を採る検査」が標準ではない
現在の食物アレルギー診断のガイドラインでは、まず、
何を食べたときに、どのような症状が、どのくらいの時間で起きたか
という病歴が重要になります。
そのうえで、
- 皮膚プリックテスト
- 血液中の特異的IgE検査
などを組み合わせます。
さらに、診断がはっきりしない場合には、医療機関の管理下で行う、
食物経口負荷試験
が、食物アレルギーを確認するための重要な検査になります。
このような現在の診断方法の中に、
「口腔粘膜を綿棒でこすってアレルギーを調べる」
という方法は、標準的なアレルギー診断として位置づけられていません。
「口から採ったもの」なら唾液検査とは違う?
ここも混同しやすいところです。
口から採取するものには、
- 唾液
- 口腔粘膜の細胞
があります。
しかし、
唾液から調べる
ことと、
頬の内側の粘膜細胞を調べる
ことも別です。
そして、どちらについても、
一般的なアレルギー診断で、血液検査や皮膚プリックテストの代わりとして確立されているわけではありません。
アレルギーについては、
「血液を採らないから簡単」
ということと、
「医学的にアレルギー診断として確立されている」
ことを分けて考える必要があります。
では、口の中から採った検体で何も分からないの?
「口腔粘膜からアレルギーが分かる」という言い方は難しいですが、
口の中の組織や細胞が、アレルギー研究と無関係
というわけではありません。
アレルギー反応には、
- 免疫細胞
- IgE
- 肥満細胞
- 好酸球
- さまざまな炎症物質
など、多くの要素が関わっています。
研究の世界では、血液以外のさまざまな検体を使って、アレルギーや免疫反応を調べる研究も行われています。
しかし、
研究に利用されている
ことと、
一般の人が口の中をこするだけで、何十種類ものアレルギー原因を診断できる
ことは別です。
現時点では後者について、一般的なアレルギー診断として確立された方法とは言えません。
もし「口腔粘膜でアレルギーが分かる」という検査を見つけたら?
ここは少し注意して確認したほうがよさそうです。
例えば、その検査が、
遺伝子検査なのか
アレルギーになりやすい体質や、特定の遺伝的特徴を調べる検査なのか。
IgEを調べる検査なのか
特定のアレルゲンに対する免疫反応を調べるものなのか。
実際のアレルギー診断なのか
検査結果だけで、
「あなたは○○アレルギーです」
と診断できるものなのか。
これらは同じではありません。
現在のガイドラインでも、
特異的IgEがあることだけで、必ずしも実際のアレルギー症状が起こるとは限らない
ため、検査結果は症状や病歴と合わせて判断する必要があります。
そのため、
「口をこするだけでアレルギーの原因が全部分かる」
という説明を見かけた場合には、
何を測定している検査なのか
を確認することが重要です。
採血が苦手なら、指先採血という選択肢もある
「口の中から検査できないなら、採血しかないの?」
という人もいるかもしれません。
前の記事で取り上げたように、検査方法によっては、
指先から採取した少量の血液
を使って、複数のアレルゲンに対する特異的IgEを調べる方法もあります。
腕から採血するよりも採取する血液量を少なくできるため、
- 採血が苦手
- 注射器が怖い
- 子どもの採血量が心配
といった場合には、一つの選択肢になることがあります。
ただし、検査できる項目や方法は医療機関によって異なります。
「採血なしで分かる」という魅力と、検査の信頼性は別
アレルギー検査について調べていると、
髪の毛だけ
爪だけ
唾液だけ
指先から1滴
など、さまざまな検査方法を見かけます。
「痛くない」
「採血しなくていい」
というのは、確かに魅力的です。
特に子どもの検査では、
できるだけ負担の少ない方法で調べたい
と思うのは当然でしょう。
しかし、
簡単に採取できること
と、
その検査で何が医学的に判断できるのか
は別です。
今回の「口の中の粘膜からアレルギーが分かる?」についても、
口の中から細胞を採る技術がある
ことと、
その細胞から一般的なアレルギー検査ができる
ことを混同しないことが大切です。
まとめ|口腔粘膜だけでアレルギーを調べる一般的な検査は確立されていない
「口の中の粘膜からアレルギーが分かる?」という疑問について調べてみると、
現在、口腔粘膜を採取するだけで一般的なアレルギーの原因を診断する方法は、標準的な検査として確立されていません。
現在のアレルギー診断では、
- 詳しい症状の経過
- 血液中の特異的IgE
- 皮膚プリックテスト
- 必要に応じた経口負荷試験
などを組み合わせて判断します。
一方、口の中そのものにアレルギー症状が起こることはあります。
口腔アレルギー症候群では、果物や野菜などを食べたあとに、口腔粘膜のかゆみや腫れなどが起こることがあります。
しかし、
口の中でアレルギー症状が起こる
ことと、
口腔粘膜を採取すればアレルギーの原因を調べられる
ことは別です。
もし今後、
「口の中をこするだけでアレルギーが全部分かる」
という検査を見かけたら、
その検査は、何を測定しているのか?
を一度確認してみるとよいかもしれません。
「採血なし」という言葉だけで判断せず、
本当にアレルギー診断として使われている検査なのか
まで見ることが、このシリーズでは大切なポイントになりそうです。
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