「お腹の赤ちゃんのために、卵や乳製品を控えた方がいいのかな」——妊娠中、そんな風に考えたことはありませんか。実は、この「予防のための食事制限」は、今の考え方では見直されています。ここでは、妊娠中の食事とアレルギー予防について、今わかっていることを整理します。
特定の食品を避けても、予防にはならない
「妊娠中や授乳中に、卵・乳製品・ピーナッツなどを控えれば、生まれてくる子のアレルギーを予防できるのでは」と考える方は少なくありません。しかし、これまでの研究では、母親が妊娠中・授乳中に特定の食物を除去しても、子どものアレルギー疾患の発症リスクは下がらないことがわかっています。それどころか、必要な栄養が十分に摂れなくなるという母体側のデメリットや、除去した場合に子どもが将来ぜんそくになるリスクがかえって上がる可能性を示す報告もあります。
- 予防目的での食物除去は、効果が否定されている
- 栄養が偏ることで、母体の健康にとってはむしろ不利益になりうる
- 「念のため」の除去は、良かれと思っていても逆効果になりかねない
心配な食品があっても、自己判断で除去するのではなく、いつも通りバランス良く食べることが基本です。
注目されているビタミンDの話(研究段階)
一方で、近年研究が進んでいるのが「ビタミンD」とアレルギーの関係です。秋冬生まれの子どもや、緯度の高い地域に住む子どもにアレルギー疾患が多いというデータがあり、日照時間が短くビタミンDが不足しやすいことと関連があるのではないか、と考えられています。
- 妊娠中のビタミンDサプリメントが、生まれた子どものぜんそく症状を抑えたとする研究報告がある
- 出生後のビタミンD投与で、卵アレルギーなどの感作率が下がったとする国内研究の報告もある
- ただし、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎への予防効果を裏付けるだけの根拠は、現時点ではまだ十分ではなく、サプリメントの使用が積極的に推奨されているわけではない
「ビタミンDを摂れば防げる」と先走ってサプリメントを大量に摂取するのはおすすめできません。ビタミンDは摂りすぎるとかえって体に負担をかける栄養素でもあります。魚やきのこなど、普段の食事に無理なく取り入れる程度にとどめ、サプリメントを検討する場合は、必ず産婦人科医に相談してください。
運動不足や睡眠不足、ストレスは関係あるの?
「妊娠中、あまり運動できていない」「寝不足が続いている」——これも気になるところかもしれませんが、今のところ食事と似たような結論になります。2026年に発表された大規模な研究(世界40か国、190件の研究データを統合、対象者は合計約280万人)では、母親の妊娠中の食事やストレスと、子どものIgE依存性食物アレルギーとの間に、はっきりした関連は見つかりませんでした。運動不足や睡眠不足そのものが子どもの食物アレルギーを引き起こすという直接的な根拠も、今のところ十分ではありません。
- 「妊娠中に運動や睡眠が足りなかったから、アレルギーになった」と自分を責める必要はありません
- 一方で、慢性的な強いストレスと、子どものぜんそく関連の抗体レベルとの関連を示した、規模の小さい研究もあります
- これは食物アレルギーというより、ぜんそくなど別のアレルギー疾患についての報告です
運動・睡眠・ストレスケアは、「アレルギーを防ぐための対策」というよりも、妊娠中の心身のコンディションを整えるために大切なこと、と捉えるのが実情に近いでしょう。無理のない範囲でのウォーキングやマタニティヨガ、十分な休息を心がけつつ、気負いすぎないことも大切です。
アレルギー対策より、出産の準備にエネルギーを

ここまで見てきたように、妊娠中に「アレルギーを防ぐために何を避けるか」を考えても、はっきりした効果は見込めません。むしろ、限られた体力と気力は、出産に向けてしっかり栄養をとることに使う方が理にかなっています。妊娠中に不足しやすい栄養素は、アレルギー対策とは関係なく、母体と赤ちゃんの発育のために大切なものばかりです。
- 葉酸:緑黄色野菜・レバー・豆類などに多く含まれ、赤ちゃんの発育に関わる栄養素として、特に妊娠初期に意識したいもの
- 鉄分:赤身の肉・魚・レバー・小松菜などに多く、妊娠中は不足しやすい栄養素の代表格
- カルシウム:乳製品・小魚・大豆製品などから。骨の材料になるだけでなく、母体の健康維持にも必要
- たんぱく質:肉・魚・卵・大豆製品をバランスよく。体づくりの基本になる栄養素
「あれもダメ、これもダメ」と食べるものを狭めるのではなく、「今の自分と赤ちゃんに必要なものを、無理なく摂る」という引き算より足し算の考え方の方が、体調管理の面でも続けやすいはずです。つわりなどで思うように食べられない時期は、食べられるものを優先して、栄養バランスは体調が落ち着いてから整えていくくらいの気持ちで大丈夫です。
- 特定の食品を極端に避けたり、逆に摂りすぎたりしない
- 魚・野菜・海藻・大豆製品など、いろいろな食材を組み合わせる
- 体調や食欲に波がある時期でもあるので、無理せず食べられるものから整えていく
まとめ
- 妊娠中・授乳中に特定の食品を避けても、アレルギー予防にはならない
- ビタミンDは注目されている分野だが、まだ研究段階。サプリの自己判断での多用は避ける
- 制限を考えるより、葉酸・鉄分・カルシウムなど出産準備に必要な栄養をしっかりとる方が理にかなっている
体質や持病によって注意すべき食品は人それぞれです。自己判断で除去やサプリメントの摂取を始めず、気になることがあれば産婦人科医・管理栄養士に相談してください(詳しくは免責事項をご確認ください)。生まれた後の離乳食の進め方は「乳幼児期の離乳食」もあわせてご覧ください。
この記事は、食物アレルギーのあるお子さんを育てる運営者「まっさん」が、自身の経験と厚生労働省・専門機関等の公開情報をもとにまとめています。
参考にした情報源
- アレルギーガイドライン2021 ダイジェスト版 第6章 リスク因子と予防|日本小児アレルギー学会
- アレルギー疾患発症予防 ビタミンDの可能性|日本小児アレルギー学会誌
- 学会最前線 あるビタミンが食物アレルギーを予防する?|独立行政法人環境再生保全機構
- 子どもの食物アレルギー、原因は遺伝だけではない|ケアネット(JAMA Pediatrics掲載研究の紹介)
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