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⑧エピペンの事故|事例から学ぶ、知っておくと安心な話

エピペンの事故|事例から学ぶ、知っておくと安心な話 検査・治療・病院

エピペンを持っていると、「これで安心」という気持ちになりますよね。それは間違いではないのですが、実際に起きた事故を見てみると、大きく2パターンあるようです。

ひとつは「打つタイミングで迷ってしまう」ケース、もうひとつは「誤って打ってしまう」ケースです。この記事では、実際に亡くなった方がいる事故も取り上げます。不安をあおるためではなく、同じことを繰り返さないために、知っておいてほしいことをまとめました。

結論:エピペンの事故は、「迷って打てなかった」ケースと「誤って打った」ケースの2つです。迷いは命に関わることがありますが、誤射は多くが一時的な症状で、国内でエピペンの使用によって命に関わる事故が起きたという報告はありません。備えは、使い方を知っておくことと、「迷ったら打つ」を、周りの人と共有しておくことです。

(誤射の報告は、手指に刺さるケースが最も多いとされています。指や手に誤って注射したときは、すぐに受診します)

エピペンの事故|起きるパターンは、この2つ

エピペンの事故は、大きく分けて2つです。打つべきときに打てなかった場合と、うっかり打ってしまった場合です。後者は「誤射(ごしゃ)」と呼ばれます。アナフィラキシー(食べ物などで起きる、全身に出る強いアレルギー反応)が起きていないのに、間違って注射してしまうことをいいます。

パターンどんなケース?
打つタイミングで迷う「様子を見よう」と迷っているうちに、時間がたってしまう
誤って打つ(誤射)アナフィラキシーが起きていないのに、扱いに慣れていなくて誤って注射してしまう

エピペンを打つか迷う|調布市の事故から学ぶこと

「持っているから、もう安心」とは言い切れない。調布市の事故から見えてくるのは、そういうことです。大切なのは、持っていることに加えて、いざというときに迷わず打てることです。

調布市の事故で起きたこと

2012年12月、東京都調布市の小学校で、食物アレルギーのある5年生の女の子が、給食のあとに亡くなる事故が起きました。市の検証委員会が、報告書にまとめています。報告書では、除去食の確認の仕組みと、エピペンを打つ判断が遅れたことが、要因として挙げられています。

時刻できごと
13時22分ごろ「気持ちが悪い」と訴える
13時31分担任が救急車を要請する
13時36分ごろ校長がエピペンを注射する
  • 表は、調布市立学校児童死亡事故検証委員会「検証結果報告書概要版」(平成25年3月)をもとにしています。
  • 検証委員会は、エピペンを注射した時点で、すでに心肺停止だった可能性が高いと推測しています。

少しむずかしいことばが出てくるので、ここで説明を。「検証委員会」は、事故の原因を調べるために市がつくった委員会です。「除去食(じょきょしょく)」は、アレルギーのある食材をぬいてつくった給食、「心肺停止」は、心臓と呼吸が止まっている状態のことをいいます。

エピペンについて、報告書には次のように書かれています。担任の先生は、「アナフィラキシーの初期の段階でエピペンを打つのが効果的」という研修を受けていました。それでも、本人の「ちがう、打たないで」という言葉に影響され、打たなかったとされています。

事故の原因として挙げられたこと

原因は、ひとつではありませんでした。次の5つが、重なっていたとされています。

検証で挙げられた主な要因
除去食であることが、本人や担任に明確に伝わらなかった
おかわりのときに、除去食一覧表(担任用)で確認しなかった
保護者の献立表に、除去食のマーカーがなかった
教職員や関係者ごとに、異なる資料を使っていた
エピペンを、速やかに使う判断ができなかった
  • 検証委員会は、これらのうち一つでも実施されていれば、命を守れた可能性があったと結論づけています。
  • 市の再発防止検討委員会の報告書には、教職員の役割分担の取り決めがなかったこと、針で傷つけることへの恐怖心から、エピペンを打つことにためらいがあったことも書かれています。

迷いを防ぐには|「迷ったら打つ」と役割分担

この事故が教えてくれるのは、「持っている」ことと「いざというとき迷わず打てる」ことは、別の話だということです。本人が嫌がったり、針への怖さがあったりすると、大人でも迷います。だからこそ、「迷ったら打つ」というルールと、誰が何をするかの役割分担を、家族や園・学校であらかじめ決めておくことが大切です(日本学校保健会、調布市の資料による)。

エピペンの誤射|誤って打ってしまったら、どうなる?

では、間違って打ってしまったら、どうなるのでしょうか。多くは一時的な症状で、重い副作用や後遺症の報告は、これまでないとされています。

誤射の例と、体に出る症状

もうひとつのパターンが、誤って注射してしまう「誤射」です。安全キャップを外したあとにいじっていて、自分の指に針を刺した例や、逆さに持って指に針が刺さった例が、数例報告されています(山梨大学医学部附属病院アレルギーセンター)。

状況どうなる?
誤って指や手に刺す誤射の部位は、手指が最も多いとされています。局所の痛みや軽い出血、皮膚が白くなることがありますが、通常は一時的です
誤って太ももなどに注射するほてりや動悸が一時的に出ます。15分程度で元に戻るとされています
打つ途中に、子どもが動いてしまう切り傷ができることがあります
  • 表は、小児科 67巻2号(2026年)「アドレナリン自己注射製剤(エピペン®)の誤射について」、山梨大学医学部附属病院アレルギーセンターのQ&A、日本小児アレルギー学会誌 39巻2号(2025年)の症例報告をもとにしています。
  • 誤射の薬剤による重篤な副作用や後遺症の報告は、これまでないとされています(小児科 67巻2号)。
  • 2015年の症例報告(誤射した3例)では、血圧の一時的な上昇や動悸、注射部位の痛みなどが出ましたが、3例とも重篤なものはなく、1時間ほどで帰宅できました(『アレルギー』64巻10号)。

表に出てくる「局所(きょくしょ)」は、針が刺さったその場所のこと。刺さったところが少し痛んだり、血がにじんだりする、ということですね。

国内で、命に関わる事故の報告はある?

山梨大学医学部附属病院アレルギーセンターのQ&Aには、「現在我が国では、エピペンを使用して生命にかかわるような事故が発生した報告はありません」と書かれています(2019年4月更新)。

切り傷を防ぐには|針が出ている間は、動かさない

切り傷は、薬が体から離れる前に、固定をゆるめてしまったことが原因でした。4歳の男の子で、お母さんは、針が自動でしまわれると思い込んでいて、針が出た直後に固定をゆるめたため、子どもが動いて、太ももに切り傷ができたという症例報告があります。先端を押しつけている間は、針が出たままになっていると知っておくと、防ぎやすくなります(日本小児アレルギー学会誌 39巻2号)。

誤って打ってしまったときの対応

間違って指や手に注射してしまったら、様子を見ずに、すぐ受診してください。使い終わった注射器は、受診のときに医師に渡します。

  • 誤って指や手に注射したときは、すぐに受診します(PMDA 患者向医薬品ガイド)。
  • エピペンを使ったあとは、使い終わった注射器を医師に渡します(PMDA 患者向医薬品ガイド)。

エピペンの事故を防ぐ|日頃の備え4つ

備えといっても、むずかしいことではありません。次の4つを、家族で確認しておきましょう。

日頃の備えは、この4つ

周りの大人と共有しておくこと

備えポイント
使い方の講習を受ける国立病院機構福岡病院アレルギーセンターでは、エピペンの講習(動画版、講師派遣)を案内しています。使い方は、本人だけでなく、周りの大人も知っておきましょう
「打つ」基準を、事前に共有する緊急時の役割分担を決めておく。調布市の事故では、役割分担の取り決めがありませんでした

いざというときのための、持ち方と合言葉

備えポイント
正しい持ち方を意識する青い安全キャップは、使うときまで外さない。注射器の上下どちらの端にも、親指をかけない。注射のあとは、数秒間、押しつけた状態を保つ(PMDA 患者向医薬品ガイド)
合言葉を決めておく「迷ったら打つ」を、家族みんなの共通の認識にする

今日できることは、2つ。まず、「迷ったら打つ」を、家族で声に出して確認すること。そして、園や学校の先生に、いざというとき誰がエピペンを打つのかを聞いておくことです。

エピペンの事故のまとめ

エピペンの事故は、「迷って打てなかった」ケースと「誤って打った」ケースの2つです。

  • 2012年の調布市の事故では、担任は研修を受けていたが、本人の「打たないで」という言葉に影響され、打たなかった
  • 迷いを防ぐには、「迷ったら打つ」というルールと、役割分担を、事前に共有しておく
  • 誤射は、手指に刺さるケースが最も多く、多くは一時的な症状で、重篤な後遺症の報告はない
  • 国内で、エピペンの使用によって命に関わる事故が起きたという報告はない(2019年更新の情報)
  • 指や手に誤って注射したときは、すぐに受診する
  • 使い方の講習などで、本人も周りの大人も、使い方を知っておく

エピペンの事故は、準備をしておけば、防げるものがほとんどです。難しく考えすぎず、まずは、「迷ったら打つ」を、家族みんなで確認してみてください。

「へっちゃら」まっさんより

こんな話を読むと、胸がぎゅっとなりますよね。

学校は親の目の届かない場所ですし、先生も一人の子だけをずっと見ているわけにはいきません。それに、いつ起こるのかもわからないので、不安になります。

だからこそ、具合が悪くなったら我慢せずにすぐ先生に伝えるよう、子どもにしっかり言い聞かせておくことが大切ですね。そして、本人が「打たないで」と言っても、周りの大人は打つ。その約束を、先生とあらかじめ共有しておくことが大事だと思います。

参考にした情報源

運営者まっさんの似顔絵

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※本記事は、公開されている情報をもとに、できるだけわかりやすくまとめたものです。個別の状況によって適切な対応は異なりますので、ご不安な点がある場合は自己判断せず、専門機関・専門家にご確認ください。詳しくは免責事項をご覧ください。 緊急性の高い症状が見られる場合は、自己判断せず、直ちに救急要請または医療機関を受診してください。

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