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⑦アナフィラキシーの補助治療薬「エピペン」|使うタイミングと打ち方

アナフィラキシーの補助治療薬「エピペン」|使うタイミングと打ち方 検査・治療・病院

「エピペン」という名前は知っていても、実際にどんな薬で、どんな仕組みで効くのか、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。

ここでは、エピペンの基本的な仕組みから、使うタイミング、打ち方、処方の対象、日本での歴史まで、まとめて整理します。

結論:エピペンは、アナフィラキシーが起きたときに、医療機関にたどり着くまでの時間を稼ぐための、アドレナリンの自己注射薬です。危険な症状が一つでもあれば、迷わず太ももに打ち、打ったあとも必ず救急車を呼んで受診します。

(食物による重い症状は、心停止までの時間が中央値で30分とされています。処方は、アナフィラキシーの既往があるか、起こす危険性が高いと医師が判断した人が対象です)

アナフィラキシーとは、食べ物や薬、ハチの毒などがきっかけで、全身に急にアレルギー症状が出て、命に関わることもある状態です。エピペンは、そのときに太ももに打つ、自分で打てる注射です。「心停止」は心臓が止まること、「中央値」は、時間の短い順に並べたときの真ん中の値、「既往」は、これまでにその症状を起こしたことがある、という意味です。

エピペンとは?どんな薬か|成分・働き・打つ場所

ひとことで言うと、病院に着くまでの間をつなぐ「応急の薬」です。中身の「アドレナリン」は、体の中でも作られているホルモンで、血圧を上げたり、息を通りやすくしたりします。治療の代わりではないので、打ったあとは必ず病院へ行きます。下の表の「心拍数」は、心臓が1分間に打つ回数、「気管支」は、空気の通り道のことです。

項目内容
役割アナフィラキシーの補助治療(医療機関での治療の代わりではなく、受診するまでの間の応急の治療)
成分アドレナリン。もともと副腎髄質(腎臓の上にある臓器の一部)から出るホルモンです
働き血管を縮めて血圧を上げる、心臓の収縮力と心拍数を増やす、気管支を広げる、ヒスタミンなどの物質が出るのを抑える
製剤0.15mg製剤と0.3mg製剤があり、医師が体重を考慮して決めます
打つ場所太ももの前外側
  • 表は、「エピペン注射液0.15mg/0.3mg」患者向医薬品ガイド(PMDA)、日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」をもとにしています。
  • アナフィラキシー治療の手順では、アドレナリンの筋肉注射が第一に挙げられています(厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー」)。

エピペンはいつ打つ?使うタイミングと症状

東京都の食物アレルギー緊急時対応マニュアルでは、次のような症状が一つでもあれば、緊急性が高いとされ、エピペンを使います。迷ったときも、使うことが基本です。

ポイントは、「一つでも」あれば使う、ということです。「全部そろったら」ではありません。下の表の「持続する」は、おさまらずに続いている、という意味です。

症状の分類具体的な症状
全身ぐったりしている、意識がもうろうとしている、尿や便を漏らす、脈が触れにくい・不規則、唇や爪が青白い
呼吸器のどや胸が締めつけられる、声がかすれる、犬が吠えるような咳、息がしにくい、持続する強い咳き込み、ゼーゼーする呼吸
消化器持続する強い(がまんできない)腹痛、繰り返し吐き続ける

エピペンの打ち方|手順と、打ったあとにすること

打ち方は、青いキャップを外して、オレンジ色の先を太ももに押しつけるだけです。衣服の上からでも打てます。打ったら、すぐに119番に電話して、救急車を呼びます。

エピペンの打ち方の手順

順番やること
1使う直前まで、青色の安全キャップは外さない
2オレンジ色のニードルカバーを、太ももの前外側に垂直に強く押しつけ、「カチッ」と音がするまで押し続ける(緊急時は、衣服の上からでも注射できる)
3そのまま数秒待ってから抜き、注射した部分をもむ

エピペンを打ったあとにすること

順番やること
4すぐに119番に電話して、救急車を呼ぶ
5その場で安静にして、救急隊を待つ。立たせたり、歩かせたりしない
6飲み薬があり、飲める状態なら飲ませる
  • 一度注射した製品は、同じものでもう一度は打てません。誤って指や手に注射したときは、すぐに受診します(PMDA 患者向医薬品ガイド)。
  • ぐったりしているときは、仰向けで足を15〜30cm高くします。吐き気があるときは、体と顔を横に向けます(東京都)。
  • 打ってから10〜15分たっても症状が良くならないとき、エピペンが2本以上あれば、2本目を使います(東京都)。
  • 使ったあとは、すぐに医療機関を受診し、使い終わった注射器を医師に渡します(PMDA 患者向医薬品ガイド)。

保育所や学校での預かり方、周りの人が打っても大丈夫かどうかは、「④アレルギーの薬の種類|飲む・塗る・吸う・打つの使い分け」にまとめています。

エピペンを打つのが遅れたら?心停止までの時間

食べ物が原因でも、心停止までは30分

「まだ大丈夫かもしれない」と様子を見ている間にも、症状は進みます。命に関わる重い反応では、原因にさらされてから心停止になるまでの時間が、原因ごとに次のように報告されています。

原因心停止までの時間(中央値)
薬5分
ハチ15分
食物30分

食べ物が原因でも、心臓が止まるまで、真ん中の値で30分です。「まだ大丈夫かも」と様子を見ている時間は、ありません。

  • 表は、英国の死亡例の分析(Pumphrey 2000)を引用した、日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」をもとにしています。

エピペンを早く打つと、入院が減るという報告も

ここでの「投与」は、アドレナリンを使うこと(エピペンのように打つこと)です。「救急外来」は、救急で診てもらう病院の窓口のことです。

海外の病院の調査ですが、食物によるアナフィラキシーで救急外来を受診した子どもを調べた研究があります。病院に着く前に、早めにアドレナリンを投与された子どもの入院は17%でした。一方、救急外来に着いてから初めて投与された子どもの入院は43%でした。

  • 米国の1つの小児病院で、2004〜2009年の救急外来受診384例(アドレナリン投与234例)を調べた、カルテの調査です(2014年)。日本のデータではありません。
  • 「打たなかった人」との比較ではなく、「病院に着く前に打った人」と「病院に着いてから初めて打たれた人」の比較です。

エピペンを打ったあとも、必ず救急車を呼ぶ理由

いったん落ち着いたように見えても、数時間たってから、もう一度症状が出ることがあるからです。この「症状が戻ること」を、医学では「二相性反応(にそうせいはんのう)」といいます。

症状がいったん落ち着いたあとに、再び症状が出ることがあります。これを二相性反応といいます。日本アレルギー学会のガイドラインでは、二相性反応は、小児で最大11%、成人で最大23%に起こるとされ、およそ半数は、最初の反応から6〜12時間以内に出るとされています。また、発症から30分以上たってからのアドレナリン投与は、二相性反応が出ることと関連しているとされています。

そのため、エピペンを使ったあとは、すぐに医療機関を受診します。食物アレルギーの診療の手引きでは、症状が出てから4時間までは、医療機関で経過を観察することが望ましいとされています。

アナフィラキシーのとき、体の中では?エピペンが効くしくみ

アナフィラキシーのとき、体の中では

アナフィラキシーのとき、体の中では、ヒスタミンなどの物質が出て、血管から水分がもれ出して血圧が下がったり、気管支が急に縮んで息がしにくくなったりします。エピペンの成分のアドレナリンは、この両方に働いて、血圧を上げ、気管支を広げます。「放出」は、体の中で物質が出てくること、「粘膜」は、鼻やのどの内側のうるおった膜のことです。

体の中で起きることアドレナリンの働き
ヒスタミンなどの物質が放出される物質が出るのを抑える
血液の水分が血管の外に出て、血圧が下がる血管を縮めて血圧を上げる。心臓の収縮力と心拍数を増やす
気管支が急に縮み、息がしにくくなる気管支を広げる。気道の粘膜のむくみを減らす
  • 左の列は厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー」、右の列は日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」(アドレナリンの作用)をもとにしています。

エピペンの効き目と副作用

日本で報告された使用例では、約82%で症状が良くなりました。副作用は、ドキドキする、頭が痛い、手足がふるえる、などで、子どもでは軽いと考えられています。下の表の「有害事象」は、副作用やけがなど、薬を使ったあとに起きた、好ましくないできごとのことです。

エピペンの効き目

項目内容
効き目日本で報告された、エピペンを使った例では、約82%で症状が改善しました

エピペンの副作用と有害事象

項目内容
有害事象約3.7%で、アドレナリンの副作用や、針によるけがなどの有害事象がありました
副作用の例動悸、頭痛、手足のふるえなど。一般的な小児では、軽微と考えられています
  • 表は、日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」と、厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」をもとにしています。
  • ガイドラインの数値は、国内の複数の報告をまとめたものの一部です。使うか迷ったときは、使うことが基本とされています。

エピペンの処方の対象・保管・使用期限

エピペンは、希望すれば誰でももらえる薬ではありません。アナフィラキシーを起こしたことがある人、または起こす危険が高い人が、医師の判断で処方されます。下の表の「過量」は、体に強すぎる量のこと、「添付文書」は、薬の説明書のことです。体重に合う種類は、必ず主治医に相談してください。

エピペンの処方の対象・保険・体重の目安

項目内容
処方の対象アナフィラキシーの既往がある人、または起こす危険性が高い人(医師が判断)。希望者全員に出されるわけではありません
保険2011年9月から、保険診療の対象になっています
体重0.15mg製剤は体重15kg以上、0.3mg製剤は体重30kg以上が目安です。15kg未満に0.15mg製剤、30kg未満に0.3mg製剤を使うと、過量になるおそれがあります

エピペンの保管方法と使用期限

項目内容
保管光と湿気を避け、携帯用ケースに入れたまま、15〜30℃で保存します。冷所や高温の場所に置かないでください
使用期限添付文書上の有効期間は、0.15mg製剤が20か月、0.3mg製剤が24か月です。外箱とラベルの期限を確認し、期限前に医療機関で新しいものを処方してもらいます
  • 表は、PMDA「患者向医薬品ガイド」と添付文書の情報、PMDA 審査報告書、厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」、日本学校保健会の資料をもとにしています。
  • ご家庭の体重に合う製剤や、使用の判断は、必ず主治医に相談してください。

日本でのエピペンの歴史|承認から保険適用まで

日本では、もともとハチ毒の対策として入ってきた薬が、少しずつ、食べ物が原因のアナフィラキシーにも使えるようになり、保険も使えるようになりました。下の表は、その流れです。

エピペンは、もともと林業で働く人の、ハチ毒によるアナフィラキシー対策として、日本に入ってきた薬です。

年できごと
1995〜2001年林野庁の監督のもとで、営林署の職員などに25,395本が交付され、実際に使われたのは15例でした
2003年8月0.3mg製剤が、ハチ毒によるアナフィラキシーの補助治療薬として承認されました
2005年食物・薬物などが原因のアナフィラキシーにも使えるようになり、0.15mg製剤も承認されました(審査報告書は2005年2月)
2009年3月厚生労働省の通知で、エピペンが処方されている人に、救急救命士が使えるようになりました
2009年7月その場にいた教職員が、本人に代わって注射しても、医師法違反にはならないという見解が示されました
2011年9月保険が使えるようになりました
  • 表は、PMDA 審査報告書(2003年、2005年)、厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」、日本学校保健会の資料をもとにしています。
  • 2000年には、日本アレルギー学会が早期承認を求める要望書を出しています(PMDA 審査報告書)。

2026年には、針を使わない新しい選択肢「ネフィー」も登場しました。「⑨新薬ネフィーとは|鼻に噴霧するアナフィラキシーの補助治療薬」「⑩エピペンとネフィー比較|体重や状態によって、使える条件が違う」もあわせてご覧ください。エピペンの事故やトラブルについては、「⑧エピペンの事故|事例から学ぶ、知っておくと安心な話」にまとめています。

エピペンのまとめ

エピペンは、アナフィラキシーが起きたときに、受診するまでの時間を稼ぐ薬です。打ったあとは、必ず救急車を呼びます。

  • 成分はアドレナリンで、血圧を上げ、気管支を広げ、心臓の働きを強める
  • 声がかすれる、ゼーゼーする、ぐったりしているなど、危険な症状が一つでもあれば、迷わず使う
  • 太ももの前外側に垂直に押しつけ、「カチッ」と音がするまで押す。衣服の上からでも打てる
  • 食物による重い反応は、心停止までの中央値が30分とされている
  • 症状が再び出ることがあるため、打ったあとも必ず救急車を呼んで受診する
  • 15〜30℃で保管し、使用期限の前に新しいものを処方してもらう

エピペンは、持っているだけでは役に立ちません。いざというときに迷わず使えるように、使い方を、家族や園・学校の先生と確認しておきましょう。

「へっちゃら」まっさんより

うちの子は、アナフィラキシーを起こしたことはありません。でも、これまで大丈夫だったからといって、これからも大丈夫とは限りません。まだ気づいていないアレルギーがあって、知らずに原因となるものを口にしてしまう可能性もあります。

いざというときに慌てないためにも、エピペンの知識は持っておきたいですね。

「迷ったら打つ」と頭では分かっていても、実際にその場に立つと、なかなか手が出ないかもしれません。大切な子どもを守れるように、使うタイミングや使い方を日頃からしっかり学んでおきましょう。

参考にした情報源

運営者まっさんの似顔絵

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※本記事は、公開されている情報をもとに、できるだけわかりやすくまとめたものです。個別の状況によって適切な対応は異なりますので、ご不安な点がある場合は自己判断せず、専門機関・専門家にご確認ください。詳しくは免責事項をご覧ください。 緊急性の高い症状が見られる場合は、自己判断せず、直ちに救急要請または医療機関を受診してください。

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