エピペンは、どうしても「刺す」という行為があります。他人を刺すという行為に抵抗を感じる人もいますし、子ども自身が打つ場合は、怖くてなかなか打つ決心がつかないことも考えられます。
2026年2月、針を使わず、鼻にスプレーする「ネフィー」が日本で発売されました。新しい選択肢になる一方で、うちの子にはどちらが合うのか、迷う人もいるはずです。この記事では、2つの薬のちがいと、選ぶときのポイントを、国や病院の資料で確かめながら、わかりやすくまとめました。
結論:どちらが優れているかではなく、体重、年齢、鼻の状態、処方してくれる医師で、合うほうを選びます。体重15kg未満の子は、どちらも使えない薬として扱われています。ネフィーは、国内の試験が6〜17歳の15人と少ない、登場したばかりの薬です。
(成分はどちらも同じアドレナリンです。使ったあとは、どちらも必ず救急車を呼んで受診します。選ぶときは、主治医と相談して決めます)
エピペンとネフィーの違い|注射薬と点鼻薬
成分は、どちらも同じアドレナリンです。違うのは、太ももに注射するか、鼻にスプレーするか、そして使える体重などの条件です。
成分・投与方法・製剤の違い
| 項目 | エピペン | ネフィー |
|---|---|---|
| 成分 | アドレナリン | アドレナリン |
| 投与方法 | 太ももの前外側に、筋肉注射 | 鼻の穴に噴霧 |
| 製剤 | 0.15mg・0.3mg | 1mg・2mg |
体重の目安・追加投与の違い
| 項目 | エピペン | ネフィー |
|---|---|---|
| 体重の目安 | 0.15mgは15kg以上、0.3mgは30kg以上 | 30kg未満は1mg、30kg以上は2mg。1mgは、原則15kg以上に使う |
| 追加投与 | 10〜15分たっても良くならなければ、2本目(2本以上ある場合) | 効果が不十分なら、10分以降を目安に2回目。同じ鼻の穴に投与するのが望ましい |
保険・有効期間・保管の違い
| 項目 | エピペン | ネフィー |
|---|---|---|
| 保険 | 2011年9月から、保険診療の対象 | 薬価がついている(保険診療の対象) |
| 有効期間 | 0.15mgは20か月、0.3mgは24か月 | 24か月 |
| 保管 | 15〜30℃で、携帯用ケースに入れたまま保存 | 室温(1〜30℃)で、光を避けて保存 |
表のことばで、わかりにくいものを説明しますね。「アドレナリン」は、アナフィラキシー(食べ物などで起きる、全身に出る強いアレルギー反応)の治療に使われる薬の成分です。「筋肉注射」は、筋肉の中に注射することです。「噴霧(ふんむ)」は、霧のようにふきかけることです。「製剤(せいざい)」は、同じ薬で、量などが違うタイプのことです。「追加投与」は、1回で効果が足りないときに、もう一度使うことです。
- 表は、エピペンの添付文書情報・患者向医薬品ガイド(PMDA)、ネフィーの添付文書・審査報告書・適正使用ガイド(PMDA)、東京都「食物アレルギー緊急時対応マニュアル」をもとにしています。
- ネフィーは、患者さん本人やご家族が投与する薬です。噴霧中や噴霧後は、鼻をすすらないようにします(患者向けガイドブック)。
- それぞれの成分や仕組みは、「⑦アナフィラキシーの補助治療薬「エピペン」|使うタイミングと打ち方」「⑨新薬ネフィーとは|鼻に噴霧するアナフィラキシーの補助治療薬」にまとめています。
エピペンとネフィーの費用|薬価と自己負担
気になる費用ですが、薬価は、ネフィーのほうがエピペンより高くなっています。3割負担の目安は、エピペンが約2,900〜3,100円、ネフィーが約6,900〜7,400円です。「薬価(やっか)」は国が決めた薬の価格、「自己負担」は病院や薬局の窓口で自分で払う金額のことです。
薬価と自己負担の目安
| 薬 | 薬価(1本あたり) | 3割負担の目安 | 2割負担の目安 |
|---|---|---|---|
| エピペン 0.15mg | 9,672円 | 約2,900円 | 約1,900円 |
| エピペン 0.3mg | 10,197円 | 約3,100円 | 約2,000円 |
| ネフィー 1mg | 22,975.3円 | 約6,900円 | 約4,600円 |
| ネフィー 2mg | 24,672.1円 | 約7,400円 | 約4,900円 |
- 窓口で払う割合は、70歳未満が3割、6歳(義務教育就学前)未満が2割です(厚生労働省)。
- 目安は、薬価に、この割合をかけた金額です。診察料や調剤料などは入っていません。
- ネフィーの薬価は、2025年11月12日から適用されています(厚生労働省 近畿厚生局の通知)。金額は、国立病院機構 相模原病院の薬剤委員会結果報告(2026年3月4日開催)にもとづきます。エピペンの薬価は、KEGG MEDICUS(添付文書情報のデータベース)によります。
子どもの医療費助成はどうなる?
- すべての都道府県・市区町村で、子どもの医療費を助成する制度があります(こども家庭庁の令和6年度調査)。
- 通院の自己負担が「なし」の自治体は、約72.7%(1,266/1,741)です。ただし、年齢をまとめた数字で、就学前の子だけの数字ではありません。
- エピペンやネフィーが助成の対象になるか、薬局での自己負担や所得制限がどうなるかは、自治体ごとに決まっています。お住まいの市区町村に確認してください。
エピペンとネフィーの選び方|体重・鼻の状態・針への不安
どちらが合うかは、体重、年齢、鼻の状態、針への不安、費用で変わります。迷ったときは、主治医に相談しましょう。

体重・年齢で選ぶ
| 視点 | 確認できていること |
|---|---|
| 体重が15kg未満 | どちらも使えない薬として扱われています。下の見出しで説明します |
| 年齢が小さい | ネフィーは、4歳未満(体重15kg未満)を対象にした臨床試験が行われていません。国内の試験は、6〜17歳で、体重15kg以上の15人です |
鼻の状態で選ぶ
| 視点 | 確認できていること |
|---|---|
| 鼻の手術をしたことがある | ネフィーは、鼻茸(はなたけ)、鼻骨折・鼻の損傷の既往、鼻の手術歴などがある人は、薬の吸収が十分でない可能性があり、ほかの方法のアドレナリン製剤を考えるとされています |
| 鼻炎がある | ネフィーについて、審査報告書では、鼻炎の状態でも、投与を制限する必要はないと判断されています |
針への不安で選ぶ
| 視点 | 確認できていること |
|---|---|
| 針が怖い | ネフィーは針を使いません。使うときは、鼻の穴にまっすぐスプレーを差し込み、プランジャー(押す部分)をしっかり押します |
費用で選ぶ
| 視点 | 確認できていること |
|---|---|
| 費用 | 薬価は、ネフィーのほうが、エピペンより高くなっています |
「鼻茸(はなたけ)」は、鼻の中にできるやわらかいできもの(ポリープ)のこと。「既往(きおう)」は、これまでにかかった病気やけがのことです。「臨床試験」は、薬の効きめや安全性を、実際に人で確かめる試験を指します。
- 表は、ネフィーの添付文書、審査報告書(PMDA)をもとにしています。
- ネフィーの国内の試験は15人で、エピペンのような長い使用実績はまだありません。
- どちらが合うかは、お子さんの体重、年齢、鼻の状態で変わります。主治医に相談してください。
体重15kg未満の子のエピペン・ネフィー
体重15kg未満の子には、エピペンもネフィーも、使えない薬として扱われています。表にある「過量(かりょう)」は、薬の量が多すぎることです。
体重15kg未満のときの、エピペンとネフィー
| 薬 | 15kg未満について |
|---|---|
| エピペン | 15kg未満に0.15mg製剤を使うと、過量になるおそれがあります(0.15mgは体重15kg以上が目安) |
| ネフィー | 体重15kg未満は、ショックなどで生命の危機に直面している場合を除き、投与しない患者に挙げられています。1mg製剤を使うと過量になるおそれがあり、通常のアドレナリン注射液の使用も考えるとされています。15kg未満に投与した成績は得られていません |
エピペンが処方されていない子は、どうする?
エピペンが処方されていない子のために、滋賀県立総合病院の「子どものアレルギー情報センターしが」のQ&Aには、次のように書かれています。
| 症状 | 対応 |
|---|---|
| じんましんのような、皮膚の症状だけ | 抗アレルギー薬(飲み薬)が有効と思う |
| ゼーゼーする、吐くなど、皮膚以外の症状が始まった | 抗アレルギー薬は効果を期待しにくく、医療機関に早く連れていく |
- 体調に異変があれば受診する、ということを、保護者と園などで、あらかじめ話し合っておくことが大切とされています(滋賀県立総合病院)。
- 体重が増えて、処方の対象になったときに、あらためて主治医と相談しましょう。
エピペン・ネフィーを使ったあとの対応
エピペンでもネフィーでも、使ったら必ず救急車を呼んで、病院を受診します。効いたように見えても、これは変わりません。

| 項目 | エピペン | ネフィー |
|---|---|---|
| 使ったあと | すぐに119番で救急車を呼び、医療機関を受診する | 救急搬送を要請し、使い終わったスプレーを持って、必ず医療機関を受診する |
| 使い終わったもの | 使い終わった注射器を、医師に渡す | 使い終わったスプレーを、医療従事者に見せる |
| 追加投与 | 10〜15分たっても良くならなければ、2本目 | 10分以降を目安に、2回目 |
- 表は、エピペンの患者向医薬品ガイド(PMDA)、東京都「食物アレルギー緊急時対応マニュアル」、ネフィーの添付文書・適正使用ガイドをもとにしています。
- 「どちらを使っても、使ったら必ず病院へ」という原則は、変わりません。
ネフィーの処方|登録された医師だけが出せる
ネフィーを処方できるのは、登録された医師だけです。使ってみたいときは、かかりつけの医師が登録しているかどうかを、先に聞いてみましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 処方できる医師 | 動画で、有効性・安全性・使い方を学び、確認試験に合格して、登録された医師のみ |
| 薬局 | 登録された医師の処方箋を受けた薬局にだけ、納入される |
| 使う前 | 登録された医師が、リスクと使い方を説明し、チェックシートで理解を確認したうえで、文書で同意を取る |
「納入(のうにゅう)」は、薬局に薬が届けられること。「医薬品リスク管理計画(RMP)」は、薬を安全に使うために、あらかじめ決めておく計画のことです。
- 表は、ネフィーの医薬品リスク管理計画(RMP)の概要(PMDA)、国立病院機構 相模原病院の資料をもとにしています。
- 承認の条件として、納入前に、医師への講習などを行うことが定められています(審査報告書)。
- かかりつけの医師が登録しているかどうかは、医療機関に確認してください。園や学校での預かり方は、「④アレルギーの薬の種類|飲む・塗る・吸う・打つの使い分け」にまとめています。エピペンの事故やトラブルは、「⑧エピペンの事故|事例から学ぶ、知っておくと安心な話」をご覧ください。
今日できることは、お子さんの体重と、鼻の手術や鼻の病気の有無を確かめて、主治医に、どちらが合うか聞いてみることです。体重15kg未満で処方がない場合は、症状が出たときの対応を、主治医や園と話し合っておきましょう。
エピペンとネフィーの違いまとめ
エピペンとネフィーは、成分は同じアドレナリンで、投与方法と、体重・年齢などの条件がちがいます。
- エピペンは太ももに注射、ネフィーは鼻に噴霧する
- 体重15kg未満は、どちらも使えない薬として扱われている
- ネフィーは、4歳未満の臨床試験が行われておらず、国内の試験は6〜17歳の15人
- ネフィーは、鼻の手術歴などがあると、薬の吸収が十分でない可能性がある
- 薬価は、ネフィーのほうが、エピペンより高い
- 使ったあとは、どちらも必ず救急車を呼んで受診する
- ネフィーを処方できるのは、登録された医師だけ
どちらを選ぶか、あるいは両方を検討するかは、主治医と相談しながら決めていきましょう。
「へっちゃら」まっさんより
エピペンとネフィーは、どちらも体重15kg未満では使用できないということですね。
体重15kgというと、子どもの成長にもよりますが、幼稚園から小学校入学前くらいの体重でしょうか。そのくらいの歳の子であれば、いざというときに自分でエピペンを打つのは、まだ難しいかもしれませんね。
そういった意味では、鼻に噴霧するネフィーは、注射が苦手な子どもや家族にとって、新たな選択肢になるかもしれません。まだ新しい薬なので、これから情報や使用経験が増えていくことに期待したいですね。
もちろん、子どもが自分で使うのが難しい場合に備えて、保護者や周囲の大人も使い方を確認しておくことが大切です。いざというときに慌てず対応できるよう、家族で使い方や対応の流れを共有しておきたいですね。
参考にした情報源
- ネフィー点鼻液1mg/2mg 添付文書情報(PMDA)
- ネフィー点鼻液1mg/2mg 審査報告書・審議結果報告書(PMDA)
- ネフィー点鼻液 適正使用ガイド(医療従事者向け、PMDA 医薬品リスク管理計画)
- ネフィー点鼻液 医薬品リスク管理計画書(RMP)の概要(PMDA)
- ネフィー点鼻液 患者向けガイドブック(PMDA 医薬品リスク管理計画)
- 薬剤委員会結果報告(2026年3月4日開催)(国立病院機構 相模原病院)
- 薬価基準の一部改正等について(保医発1111第6号)(厚生労働省 近畿厚生局)
- エピペン注射液0.15mg/0.3mg 添付文書情報(PMDA)
- 患者向医薬品ガイド エピペン注射液0.15mg/0.3mg(PMDA)
- エピペン注射液0.3mg 他 医療用医薬品情報(KEGG MEDICUS、JAPIC添付文書)
- 食物アレルギー緊急時対応マニュアル(2022年1月版)(東京都)
- 令和6年度 こども医療費助成の実施状況(こども家庭庁)
- 医療費の一部負担(自己負担)割合について(厚生労働省)
- エピペン未処方児への対応について(滋賀県立総合病院 子どものアレルギー情報センターしが)
コラム・レビューの新着
よく読まれている記事




コメント