一年の締めくくりの冬は、インフルエンザの予防接種やおせち料理など、これまでの季節とは違ったアレルギーの注意点が出てくる時期です。今回は、冬ならではの疑問や見落としがちなポイントをお伝えします。
卵アレルギーとインフルエンザワクチン

「卵アレルギーがあると、インフルエンザの予防接種は受けられないのでは」と心配される方は多いと思います。結論から言うと、多くの場合は問題なく接種できるとされています。
インフルエンザワクチンは、ウイルスを鶏卵(受精卵)で育てて作られているため、卵の成分がわずかにワクチンに残ることがあるとされています。しかし、現在の製造技術ではその量はごくごく微量とされ、厚生労働省や小児科学会、アレルギー学会なども「卵アレルギーの人でも、インフルエンザワクチンは通常どおり接種可能」と声明を出しているとされています。海外の研究でも、重度の卵アレルギー(アナフィラキシー歴あり)の子どもたちが安全に接種できたという報告もあるとされています。
- 卵を食べても問題ないお子さんは、通常どおり接種可能とされる
- 以前に卵で強いアレルギー反応(アナフィラキシー等)が出た経験がある場合は、事前に医師に相談する
- まだ卵を食べた経験がないお子さんは、先に少量から試しておくとよいとされる
- MRワクチン・おたふくかぜワクチンは、卵そのものではなく「ひよこの細胞」を使って製造されているため、卵アレルギーがあっても基本的に問題ないとされる
- 心配な場合は、接種前に余裕を持ってかかりつけ医に相談しておくと安心
不安なまま接種を見送ってしまうより、まずは相談してみることをおすすめします。
冬はいろんな食べ物に触れる機会が多い季節
冬は、クリスマス・忘年会・新年会・おせちと、1年の中でも特に「いつもと違う食べ物」に触れる機会が集中する季節です。ここでは、おせち以外の場面での注意点をまとめます。
クリスマスケーキ
クリスマスケーキの定番であるショートケーキには、卵・乳・小麦という、食物アレルギーの原因として特に多い3品目がすべて使われています。消費者庁の調査によると、即時型食物アレルギーの原因食物は鶏卵が最も多く33.4%、牛乳が18.6%を占めるとされ、いずれも子どもに多いアレルゲンとされています。
- 卵・乳・小麦を使わない「アレルギー対応ケーキ」を扱う洋菓子店・通販サービスも増えてきているため、事前に探しておくと選択肢が広がる
- 手作りする場合、卵の代わりに絹ごし豆腐やホットケーキミックス(卵不使用タイプ)、乳の代わりに豆乳を使うなど、代替レシピも多く紹介されている
- 兄弟・友達と同じケーキを囲みたい場合は、対応ケーキを人数分用意するか、取り分け前のホールの状態で対応部分とそうでない部分を分けて盛り付けるといった工夫がある
忘年会・新年会・鍋料理
忘年会・新年会シーズンは、家族での外食や親戚の集まりが増える時期でもあります。特に冬の定番である鍋料理は、エビ・カニなどの甲殻類、牡蠣などの貝類、きのこ類など、さまざまな食材が一つの鍋の中に混ざるため、誤食のリスクが高い料理の一つです。
- 外食の場合、予約時にアレルギーのある食材を伝え、対応可能かを事前に確認しておく
- 大皿・鍋を家族で取り分ける形式は、菜箸やおたまが混ざりやすいため、アレルギーのある子の分は最初から別の鍋・器に分けて調理してもらうと安心
- 親戚の集まりなど、家庭ごとに食材の扱いに慣れていない場所では、念のため食べられるものを持参しておくのも一つの方法
おせち・年末年始の食事で気をつけたいこと

年末年始は、いつもと違う食材に触れる機会が増える季節です。特に注意したいのが「魚卵アレルギー」です。
イクラは「初めて食べて発症する」ことが多い食材
アレルギー専門医の解説によると、魚卵アレルギーは、1〜2歳では新しく発症する食物アレルギーの3位、3〜6歳では2位に位置するとされ、おせちで初めて魚卵を食べて症状が出るケースも珍しくないとされています。魚卵の中でもイクラアレルギーが最も多く、魚卵アレルギー全体の95%を占めると考えられているとされています。
- イクラを初めて食べさせるのは、年末年始の慌ただしい時期ではなく、医療機関を受診しやすい平日の昼間などに済ませておくと安心とされる
- 症状としては、吐く・お腹が痛くなるといった消化器症状が多く、じんましんやかゆみなどの皮膚症状も見られるとされる
- イクラアレルギーがあっても、鶏卵や魚肉のアレルギーとはほとんど重ならないとされ、イクラが食べられないからといって卵や魚全般を避ける必要はないとされる
- イクラアレルギーがある場合、他の魚卵(タラコ・ししゃもの卵等)に対するアレルギーの有無は個人差があるとされ、自己判断でチャレンジせず医師に相談することがすすめられている
- 数の子(ニシンの卵)やトビコ(トビウオの卵)については、まだ研究データが少ないとされる
おせちのアレルゲン早見表(一例)
おせちには、卵・小麦・えびなど、特定原材料が使われている料理が多くあります。
- 紅白かまぼこ・伊達巻・松風焼:卵
- 海老旨煮:えび、小麦
- いくら醤油漬け・鰊昆布巻き・数の子味噌漬け:小麦(調味料として使われることがある)
手作りする場合は使う調味料まで確認し、市販・仕出しのおせちを利用する場合は、購入前に業者へアレルギー表を問い合わせておくと安心です。
冬の乾燥と食物アレルギーの意外な関係
冬の肌の乾燥というと、アトピー性皮膚炎のケアの話に思われがちですが、実は食物アレルギーとも無関係ではないとされています。皮膚のバリア機能が乾燥で低下していると、食べ物のタンパク質が肌から体内に入り込みやすくなり、これが食物アレルギーを引き起こす一因になりうる(経皮感作)と考えられています。
- 保湿剤を塗って肌を良い状態に保つことが、食物アレルギーの発症予防にもつながるとされている
- 顔や手など、食事の際に食べ物が触れやすい部位は特に乾燥しやすいため、こまめな保湿を心がける
- 食後は口の周りや手についた食べ物を早めに拭き取り、その後も保湿することが望ましいとされる
- すでにアトピー性皮膚炎がある場合、乾燥はかゆみ・掻き壊しの悪化にもつながるため、より丁寧なケアが必要
具体的な保湿剤の選び方や、冬のスキンケアの詳しい方法については、「アトピーと四季折々の注意事項と対策」の冬パートでご紹介していますので、あわせてご覧ください。
加湿器のカビ:見落としがちな「加湿器肺炎」
冬は空気が乾燥し、のどや鼻の粘膜の防御機能が低下しやすいため、加湿器を使うご家庭も多いと思います。ここで気をつけたいのが、加湿器内部のカビです。
加湿器の中の水分でカビや細菌(レジオネラ菌等)が繁殖し、それを吸い込むことで肺にアレルギー性の炎症が起こる「加湿器肺炎(加湿器肺)」という病気があるとされています。症状は風邪と似ていますが、抗生物質が効果を示さず、重症化すると呼吸困難を引き起こすこともあるとされています。夏の記事でご紹介した「夏型過敏性肺炎」の、冬バージョンのような病気といえそうです。
- タンクの水は毎日交換し、継ぎ足し使用は避ける
- 説明書に記載された頻度・方法でタンク内部やフィルターを定期的に手入れする
- 加湿しすぎると結露やカビの原因になるため、湿度は50〜60%程度を目安にする
- 風邪のような症状が長引き、加湿器を使っている部屋を離れると改善する場合は、加湿器肺炎の可能性も考え医療機関に相談する
- シーズンオフに片付ける際は、各パーツをしっかり乾燥させてから収納する
まとめ
冬は、卵アレルギーとインフルエンザワクチンの関係、クリスマスケーキや忘年会・新年会の鍋料理、おせちで初めて口にする魚卵アレルギー、乾燥による経皮感作、加湿器内部のカビによる「加湿器肺炎」など、他の季節とは違った注意点がある季節です。特にインフルエンザワクチンについては、「卵アレルギーだから」と自己判断で接種を諦めず、かかりつけ医に相談することをおすすめします。おせちで初めて魚卵にチャレンジする場合も、医療機関を受診しやすいタイミングを選ぶと安心です。乾燥は食物アレルギーの発症とも関わりがあるとされるため、こまめな保湿を心がけましょう。
乾燥による肌荒れやアトピー性皮膚炎の悪化については「アトピーと四季折々の注意事項と対策」で、喘息をお持ちのお子さんの冬の注意点は「喘息と四季折々の注意事項と対策」でそれぞれ詳しくご紹介しています。あわせてご覧ください。
12月、1月は、うちの息子が一番好きなシーズンです。しかも12月生まれなんですよね!
クリスマス会やらなんやら、楽しい行事も多いし、美味しいものを食べる機会も増えますよね。ただ、アレルギーっ子の親御さんにとっては、やっぱり心配が絶えない時期でもあります。「誤食したらどうしよう」と、ヒヤヒヤしているお母さんも多いのではないでしょうか。
しかもこの時期は、病院も大忙しで患者さんが多く、お正月には病院がお休みになることもあります。だからこそ、いつも以上に注意しておきたいところです。
「迷ったら食べない」。これは僕がいつも言っているセリフですが、やっぱり大切なことだと思います。
この記事は、食物アレルギーのあるお子さんを育てる運営者「まっさん」が、自身の経験と厚生労働省・専門機関等の公開情報をもとにまとめています。治療方針については、必ず主治医の指示を優先してください。詳しくは免責事項をご覧ください。
参考にした情報源
- ④卵アレルギーと予防接種|岸田こどもクリニック
- クリスマスにおすすめ!乳アレルギー対応レシピ|マルサンジャーナルSoyana(マルサンアイ株式会社、消費者庁データ引用)
- おせちに良く使用されるイクラ。子どもが初めて食べて発症することが多いアレルギーの相手です|堀向健太(Yahoo!ニュース エキスパート)
- 昔はなかった?食物アレルギーの症状、原因、検査|武蔵小杉小児科・てんかんクリニック
- 冬場に増える加湿器肺炎とは|きなが内科・内視鏡クリニック
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