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③食物アレルギーの治療|症状が出ない量を食べて治すという考え方

食物アレルギーの治療|症状が出ない量を食べて治すという考え方 検査・治療・病院

「アレルギーって、治るのかな…ちゃんと食べれるようになるのかな?」

子どものアレルギーと向き合っていると、一度はそう思ったことがあるんじゃないでしょうか。毎日の除去生活の中で、「このままずっとこの調子なのかな」って、アレルギーっ子を持つお父さんお母さんはふと不安になる瞬間があるのではないでしょうか?

ここでは、いま実際に行われている食物アレルギー治療の考え方と、最近よく耳にする「経口免疫療法」(原因の食べ物を、医師の指導のもとで少しずつ食べて慣らしていく治療)について、難しい言葉をできるだけかみくだいてお伝えします。

結論:治療の基本は、原因の食べ物を全部やめることではなく、症状が出る食べ物だけを必要最小限で除去して、食べられる範囲は食べていくことです。経口免疫療法は、一般の診療としては勧められておらず、専門の医師のもとで慎重に行う治療です。

(おうちで自己判断して量を増やすのは危険です。必ず主治医に相談してください)

「食べても大丈夫な範囲」までは食べていく

治療の基本は「がんばって全部避ける」じゃなくていい

食物アレルギーの治療の基本は、原因の食べ物を食べない「除去食」です。ただし、いまは「食べられるものは食べる」という、「必要最小限の除去」がポイントとされています(東京都アレルギー情報navi.による)。正しい診断に基づいて、原因食物の除去は必要最小限にとどめ、症状が出ない範囲では食べていく、という考え方です(食物アレルギー研究会による)。

「食べられる範囲」がどのくらいかは、病院で行う「食物経口負荷試験」(原因と疑われる食べ物を、医師の管理のもとで実際に食べて、症状が出るかを確かめる検査)で確認します。検査のことは、「①アレルギーの診断・検査|子供のアレルギーどこに連れて行く?」「②アレルギー検査にかかる費用は?|受診の流れも解説」にまとめています。

「念のため全部除去」しなくていい

除去が必要なのは、食べるとアレルギー症状が出る食べ物だけです。血液検査や皮膚検査で陽性だった、というだけでは、除去が必要かどうかは判断できません(東京都アレルギー情報navi.による)。「念のため」「心配だから」という理由で、除去する食べ物を増やさないことが大切とされています(食物アレルギー研究会による)。たとえば、卵アレルギーがあっても、鶏肉や魚卵は卵とアレルゲン(アレルギーの原因になる物質)が違うため、基本的に除去する必要はありません(食物アレルギー研究会による)。

本来食べられる食べ物まで除去してしまうと、成長期の子どもに必要な栄養が不足する可能性があり、生活の質(QOL)も下がるとされています(東京都アレルギー情報navi.による)。除去する食べ物があっても、主食・主菜・副菜をそろえて、いろいろな食品をとり入れれば、栄養状態の悪化を防げるとされています。体重が増えにくいなど、成長が心配なときは、主治医に伝えましょう。たとえば牛乳アレルギーでは、カルシウムが不足しやすいため、牛乳以外のカルシウムを多く含む食品で補います(食物アレルギー研究会による)。

加熱で変わる食品・変わりにくい食品

食物加熱したときの変化
卵加熱すると、アレルギーを起こす力が下がります。加熱の温度・時間・調理法によって、食べられる量が変わります。加熱が不十分な卵や生卵では、症状が出ることがあります。
牛乳主なアレルゲンの「カゼイン」は、加熱しても変わりにくいとされています。
小麦加熱や加工で、症状の出やすさの違いは少ないとされています。
  • 表は、食物アレルギー研究会の「原因食物別の栄養食事指導」(栄養食事指導の手引き2022)をもとにしています。
  • どの程度まで食べられるかは、お子さんによって違います。医師の指示に従ってください。

見直しの目安は、負荷試験の結果で変わる

「そろそろ食べられるようになったかも」と、おうちで自己判断で試すのは避けてください。食べたことのない量は、自宅で少しずつ増やさず、医療機関で確認することが基本です(食物アレルギー研究会による)。

負荷試験の結果その後の進め方
症状が出た(陽性)負荷試験の前の食生活を続けます。同じ量の負荷試験は、6か月〜1年ほど空けて再検討するのが目安です。
症状が出なかった(陰性)試験で食べた量を超えない範囲で、自宅でくり返し食べて、症状が出ないことを確認します。そのあとで、より多い量の負荷試験に進みます。
  • 表は、食物アレルギー研究会の「食物アレルギーの診療の手引き」(2017年版のページ)をもとにしています。
  • 少量の負荷試験で陽性だった、完全に除去しているお子さんは、除去を続けて1年後を目安に、もう一度負荷試験を検討するとされています(食物アレルギーの診療の手引き2023による)。

食べて慣らす治療「経口免疫療法」

食べて慣らす治療「経口免疫療法」

最近、「食べて慣らす治療」として、経口免疫療法という言葉を聞くことが増えてきました。「治るかもしれない」と期待したくなる響きですが、いくつか知っておいてほしいことがあります。

経口免疫療法は、自然に治るのを待っても早い時期の改善が期待しにくい場合に、事前の食物経口負荷試験で症状が出る量を確認したうえで、医師の指導のもとで原因食物を食べ続ける治療です。高度で専門的な知識を持つ医師が、一定の条件のもとで行う必要があり、「食物アレルギーの一般診療としては推奨されない」とされています(食物アレルギーの診療の手引き2023、アレルギーガイドライン2021による)。効果があるのは一部の患者さんで、治療中は症状が出ることが避けにくいとも説明されています(食物アレルギー研究会による)。

なお、負荷試験で確認した「食べられる範囲」を超えない量を食べていくことは、経口免疫療法にはあたりません(食物アレルギー研究会による)。

  • 治療中の副反応(症状が出ること)は、頻度が高いとされています。まれに、アナフィラキシーを含む重い症状が起こることもあります。
  • 治療をやめたあとの摂取や、食べたあとの運動で、症状が出ることがあります。
  • 症状が出る量がはっきりしない、または少ないお子さんに、自宅で量を増やすよう指導することは、安易に行うべきではないとされています。

(日本小児アレルギー学会 アレルギーガイドライン2021による)

どんな流れで進むの?

ステップ内容
①適用の判定食物経口負荷試験で、症状が出る量を確認します。
②増量期少ない量から食べ始めて、少しずつ増やします。
③維持期決めた量を食べ続けます。
④効果の確認数週〜数か月、原因食物をやめたあと、負荷試験で症状が出ない状態が続いているかを評価します。
  • 表は、アレルギーガイドライン2021の図をもとにしています(日本小児アレルギー学会による)。病院によって、細かいやり方は違います。
  • 国立病院機構相模原病院の例では、食物アレルギーの重症度によって、外来で始める場合と入院で始める場合があります。増量期は、医師の指示した量を自宅で毎日食べて、症状を見ながら増やします。確認の負荷試験の前には、2週間、完全に除去します(相模原病院による)。

安全のための備えも、治療の一部

国立成育医療研究センターでは、治療を始める前に、エピペンを含む緊急時の対策と注意事項を十分に説明し、納得してもらってから始めるとしています。また、喘息や皮膚炎の状態が悪いと危険が高まるため、それらを良好にコントロールすることも勧めています(国立成育医療研究センターによる)。

相模原病院でも、内服薬・吸入薬・エピペンなどの常備薬を事前に処方します。さらに、保護者がご自宅の近くの医療機関に緊急時の対応をお願いできるよう、病院が紹介状を作って渡します(相模原病院による)。

もっと安全なやり方も研究されている

国立成育医療研究センターの研究チームは、卵または牛乳の即時型アレルギーがある4〜18歳の子どもを対象に、経口免疫療法のやり方を比べました。その結果、症状が出る量の1/100で始めて1/10で維持する方法は、従来の方法より、負荷試験で症状が出る量が増えた子の割合が高くなりました。この方法では、重いアナフィラキシーは出ず、出た症状も口や喉のかゆみなどの軽いものでした(国立成育医療研究センター、2023年発表による)。

ただし、これは専門の医療機関での研究です。ご家庭でまねするものではありません。

ちなみに、「アレルギーマーチ」って知っていますか?

小児期のアレルギーは、乳幼児期のアトピー性皮膚炎に始まり、続いて食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎と、時期をずらして次々と現れてくることが多く、これを「アレルギーマーチ」と呼びます(国立成育医療研究センターによる)。ただし、これは「多い」という傾向で、すべてのお子さんがこの順番で進むわけではありません。

「せっかく治療しているのに、また別のアレルギーが出てきた……」と落ち込むこともあるかもしれませんが、こうした経過は多くのお子さんで見られるものだと知っておくと、少し気持ちが軽くなるかもしれません。

「防ぐ」という考え方も広がっています

これは治療そのものではありませんが、「アレルギーになってから治す」だけでなく、「アレルギーにならないようにする」研究も進んでいます。

研究わかったこと
卵の早期摂取(PETIT研究)生後4〜5か月の時点でアトピー性皮膚炎のある赤ちゃんに、生後5〜6か月から少量の加熱した卵を食べてもらったところ、1歳のときの即時型の卵アレルギーを8〜9割予防できました(国立成育医療研究センターによる)。
アトピーの早期強化治療(PACI研究)生後7〜13週でアトピー性皮膚炎と診断された650人を比べたところ、3歳時点の食物アレルギーは、早期に強く治療した群で47.4%、従来の治療の群で58.8%でした(国立成育医療研究センターによる)。
  • 卵を始めるときは、まず皮膚の治療を優先します。血液検査が陽性の場合は、すでに即時型アレルギーを起こしている可能性があるため、必ず医師と相談して進めます。自己判断で始めないでください(国立成育医療研究センターによる)。
  • PACI研究は3歳までの追跡で、長期的な効果は、さらに検証が必要とされています。

症状が出たときのお薬について

症状が出てしまったときのお薬の種類や使い分けは、次の記事「④アレルギーの薬の種類|飲む・塗る・吸う・打つの使い分け」でお話しします。

まとめ

治療の基本は「全部避ける」のではなく、症状が出る食べ物だけを必要最小限で除去して、食べられる範囲は食べていくことです。

  • 「念のため」の除去は増やさない。卵アレルギーでも、鶏肉や魚卵は基本的に除去不要
  • 負荷試験で症状が出たら、6か月〜1年ほど空けて見直す。食べたことのない量は、自宅で増やさず医療機関で確認
  • 経口免疫療法は、一般の診療としては勧められておらず、専門の医師のもとで慎重に行う治療
  • 経口免疫療法は、治療中に症状が出ることが多く、まれにアナフィラキシーも。自宅で自己判断は絶対にNG
  • もっと安全なやり方の研究や、アレルギーを「防ぐ」研究も進んでいる

治療の方針は、必ず主治医と相談しながら決めてくださいね。

「へっちゃら」まっさんより

うちの息子も、卵の黄身を少量から少しずつ食べています。

でも、卵はなかなか慣れず、肘の裏や膝の裏にアトピーの症状が出てしまうこともあります。ゴマは全然平気なんですけどね〜。やっぱり、検査の数値が高いからといって、必ず症状が出るとは限らないんです。

「経口免疫療法」をしている途中で、胃腸炎になり、入院までしてしまったことがあります。無理に食べさせたわけではないんですが、タイミングが悪いと、そうなってしまうこともあります。

その子の反応を見ながら、焦らず少しずつ進めていくことが大切だと思います。調子が悪いときは、無理をせずお休みしてもいいと思います。

参考にした情報源

運営者まっさんの似顔絵

へっちゃらはこんな人が書いています

へっちゃらは実際にアレルギーっ子を育てる父親まっさんが運営しています。1人の子供を育てるだけでも大変なのに、アレっ子はさらに大変だなぁ~と感じながら日々格闘しています。詳しい運営者情報はこちらから

※本記事は、公開されている情報をもとに、できるだけわかりやすくまとめたものです。個別の状況によって適切な対応は異なりますので、ご不安な点がある場合は自己判断せず、専門機関・専門家にご確認ください。詳しくは免責事項をご覧ください。 緊急性の高い症状が見られる場合は、自己判断せず、直ちに救急要請または医療機関を受診してください。

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