アレルギーの薬の種類は「飲むタイプ」と「塗るタイプ」と「吸うタイプ」と「打つタイプ」の4種類があります。それぞれ用途が違うので覚えておくようにしましょう。そうすることで、症状が出たときに冷静かつスムーズに対応できるようになります。
この記事では、アレルギーの薬を「飲む」「塗る」「吸う」「打つ」の4つのタイプに分けて、役割と使うタイミングを整理します。治療そのものの考え方は「③食物アレルギーの治療|症状が出ない量を食べて治すという考え方」をご覧ください。
結論:薬は飲む・塗る・吸う・打つの4タイプで用途が違い、軽い症状には飲み薬や塗り薬、命に関わる重い症状には打つタイプのエピペン®を使います。飲み薬は「すぐに効く」薬ではないため、重い症状が出たときはエピペン®を使い、救急車を呼びます。
(薬の使い方は、必ず主治医・薬剤師の指示に従ってください)
薬には大きく2つの役割があります
アレルギーの薬は、じんましんや湿疹など軽い症状に使う薬と、アナフィラキシー(アレルギーによる全身の症状が、急に強く出ること)に使う薬に分けられます。
| タイプ | 薬 | 役割 | 効くまでの時間 | 知っておきたいこと |
|---|---|---|---|---|
| 飲む | 抗ヒスタミン薬 | じんましんなど、軽い皮膚症状をやわらげる | 30分〜1時間 | ショック(血圧が下がる状態)など重い症状には、効果が期待できない |
| 飲む | ステロイド薬 | 症状がおさまったあとに再び出る「二相性反応」を抑える | 数時間(4〜6時間) | 緊急時の重い症状への対処としては使われない |
| 塗る | ステロイド外用薬・保湿剤 | 皮膚の炎症をしずめる/乾燥をやわらげる | — | 良くなったように見えても、自己判断で中断しない |
| 吸う | 気管支拡張薬 | ゼーゼーするなど、呼吸の症状に使う | 吸入は速やか(飲み薬は30分以上) | のどのむくみ(声がかれる、犬が吠えるような咳)には効果がない |
| 打つ | エピペン® | アナフィラキシーの治療 | 5分以内 | 緊急時に有効といえるのは、この薬のみとされる |
- 表は、札幌市の保育所向け資料(緊急時対応編)、環境再生保全機構の資料、日本小児アレルギー学会の資料、横浜市の資料(アトピー性皮膚炎)をもとにしています。
- 「—」は、確認できた公的な資料に記載がなかった項目です。
タイプごとの薬の名前
処方される薬の名前は、お子さんによって違います。まず、環境再生保全機構の資料で、症状が出たときに使う薬として挙げられている商品名を紹介します。お子さんの薬の名前と見比べてみてください。
| タイプ | 薬の名前(商品名) |
|---|---|
| 飲む(抗ヒスタミン薬) | ザイザル、アレロック、アレグラ、ジルテック、クラリチンなど |
| 飲む(ステロイド薬) | プレドニン、デカドロンなど |
| 吸う(気管支拡張薬) | メプチン |
| 打つ(アドレナリン自己注射薬) | エピペン |
- 表は、環境再生保全機構(ERCA)「食物アレルギーを正しく知ろう」をもとにしています。この資料には、塗り薬の名前は載っていません。
- 薬の名前や使用量は、お子さんの年齢・体重・症状によって変わります。使用量や回数は、必ず医師・薬剤師に相談のうえで決めてください。処方された薬は、処方箋やお薬手帳の名前で確認し、自己判断で量や回数を変えないでください。
症状をやわらげる薬

抗ヒスタミン薬
アレルギー症状のもとになる「ヒスタミン」の働きを抑える薬です。ただし、効果は皮膚症状など限られた範囲です。誤食に備えて処方されることが多く、症状が出た早い段階で、軽い皮膚症状に対してのみ効果が期待できます。飲んでから効果が出るまでに30分〜1時間かかり、ショックなどの重い症状には効果が期待できません(札幌市の資料による)。
抗ヒスタミン薬には、古いタイプ(第1世代)と新しいタイプ(第2世代)があります。第1世代は眠気が強く、第2世代は脳に移行しにくく、眠気が少なくなっています。ただし、眠気がゼロではありません(国立病院機構熊本医療センターの資料による)。「いつもより眠そう」と感じたら、処方した医師や薬剤師に伝えましょう。
ステロイド薬(飲み薬)
症状がいったんおさまっても、数時間後にまた症状が出ることがあります。これを「二相性反応」といいます(学校向けマニュアルによる)。飲むステロイド薬は、いま出ている急な症状を抑えるためではなく、この二相性反応を抑える目的で使われるのが一般的です。効果が出るまで数時間(4〜6時間)かかるため、緊急時の重い症状への対処としては使われません(札幌市と環境再生保全機構の資料による)。
塗り薬(ステロイド外用薬・保湿剤)
皮膚の炎症をしずめる「抗炎症外用薬」と、乾燥をやわらげる保湿剤があります。炎症をしずめることで、炎症によって皮膚を守る力(バリア機能)がさらに落ちるのを防げます。ステロイド外用薬は抗炎症作用が強く即効性があるため、現在も主要な治療薬とされています(横浜市の資料による)。
皮膚科専門医の指示のもとで適切に使えば、内服薬で問題になるような全身への副作用はないとされています。一方で、感染症、毛細血管拡張、皮膚萎縮といった局所的な副作用が知られているため、使いこなしている医師の管理のもとで続けることが大切です。保湿剤は、入浴後すぐ(5分以内)に塗るのがよいとされています。症状が良くなったように見えても、皮膚の深部に炎症が残っていて再発しやすいことが多いため、自己判断で中断せず、医師の指示のもと続けましょう(横浜市の資料による)。
気管支拡張薬(吸入薬)
ゼーゼーという呼吸(ぜん鳴)など、呼吸の症状には、気管支を広げる吸入薬(β2刺激薬)が使われることがあります(学校向けマニュアルによる)。吸入なら効果が出るのは速やかで、飲み薬だと30分以上かかります(環境再生保全機構の資料による)。ただし、声がかれる、犬が吠えるような咳が出るといった、のどのむくみ(喉頭浮腫)には効果がありません(日本小児アレルギー学会の資料による)。アナフィラキシーの治療の流れでは、アドレナリンの筋肉注射が、β2刺激薬の吸入より先に示されています(学校向けマニュアルによる)。
抗ヒスタミン薬とステロイド薬は、すぐに効く薬ではありません(日本小児アレルギー学会の資料による)。だからこそ、命に関わる重い症状には、まったく別の薬が必要になります。
命に関わる症状に使う「エピペン®」

エピペン®だけが持つ役割
アナフィラキシーのような重い症状には、抗ヒスタミン薬やステロイド薬では対応できません。ここで使われるのが、アドレナリン自己注射薬の「エピペン®」です。緊急時には、薬が作用する時間(5分以内)を考えると、この薬のみが有効といえるとされています(札幌市の資料による)。アドレナリンには、下がった血圧を上げる作用と、気管支を広げて呼吸を楽にする作用があります(学校向けマニュアルによる)。
使うタイミング
エピペン®は、ショックになってからではなく、その手前の段階(呼吸の症状など)で注射するほうが効果的とされています(札幌市の資料による)。どんな症状が出たら重いのかは「⑥アレルギー症状のチェックリスト|軽度・注意・危険の3段階」で確認できます。重い症状かどうか迷う場面の判断は、あらかじめ主治医と相談しておくと安心です。
使い方と、使ったあとの対応
東京都健康安全研究センターの「食物アレルギー緊急時対応マニュアル」(令和7年3月改定)では、次の手順が示されています。
- ケースから取り出し、オレンジ色の先端(ニードルカバー)を下に向けて、利き手で「グー」で握る
- 青い安全キャップを外す
- 太ももの外側に先端を軽くあて、「カチッ」と音がするまで強く押しあて、そのまま5つ数える(注射したあと、すぐに抜かない)
- 太ももから離し、オレンジ色のニードルカバーが伸びているか確認する(伸びていなければ、③に戻る)
- 打った部位を10秒間マッサージする
- ただちに救急車(119番)を呼ぶ
- その場で安静にして救急隊を待つ(立たせたり歩かせたりしない)
- 少なくとも1時間は、5分ごとに症状の変化を観察する
- 血圧の低下が疑われるときは、あお向けにして、足側を15〜30cmほど高くして横にします(学校向けマニュアルによる)。
- 使い方は、主治医・薬剤師の説明に従い、あらかじめ確認しておきましょう。エピペン®と並ぶアドレナリン製剤の「ネフィー」については、「⑨新薬ネフィーとは|鼻に噴霧するアナフィラキシーの補助治療薬」「⑩エピペンとネフィー比較|体重や状態によって、使える条件が違う」にまとめています。
エピペン®の作用は注射後すぐに現れ、1回の注射で約15〜20分続くといわれています(学校向けマニュアルによる)。症状が良くなったように見えても、投与後は効果の有無や副作用の有無にかかわらず、速やかに医療機関で治療を受ける必要があります。症状が回復しても、数時間後にまた出る二相性反応があるため、一人で帰宅させない配慮も必要です(学校向けマニュアルによる)。エピペン®そのものについては「⑦アナフィラキシーの補助治療薬「エピペン」|使うタイミングと打ち方」、事故や、知っておくと安心な話は「⑧エピペンの事故|事例から学ぶ、知っておくと安心な話」で紹介しています。
処方の対象と保管
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 体重 | 体重15kg未満の子どもには処方されない(保育所のガイドラインによる) |
| 保管 | 子どもの手の届かない、すぐ取り出せる場所に置く。15〜30℃での保存が望ましく、冷蔵庫や日光のあたる場所は避ける(保育所のガイドラインによる) |
ちなみに、先生や周りの大人が打っても大丈夫?
「エピペン®は自己注射薬なのに、先生が打ってもいいの?」と気になったことはありませんか。保育所では、居合わせた職員が、自分で注射できない子どもに代わって注射しても構わず、緊急やむを得ない措置として行われるため、医師法第17条違反とはなりません(保育所のガイドラインによる)。学校でも、居合わせた教職員が、自ら注射できない児童生徒に代わって注射することは、医師法違反にはならないと考えられます(日本学校保健会のガイドラインによる)。ただし、使ったあとは、すぐに救急搬送して医療機関を受診します。
実際に、学校ではどんな人が注射しているのでしょうか。
| エピペン®を注射した人 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 救急救命士 | 452件 | 31.9% |
| 学校職員 | 403件 | 28.5% |
| 本人 | 335件 | 23.7% |
| 保護者 | 225件 | 15.9% |
- 令和3年4月1日〜令和4年3月31日の、学校(小学校・中学校・高等学校・特別支援学校など)での集計です。保育所等は含まれていません。
- 日本学校保健会「令和4年度アレルギー疾患に関する調査報告書」の数値を、文部科学省の資料から引用しています。
学校職員が注射した例は、全体の約3割でした。本人が打てない場面では、居合わせた大人が代わりに打つことが、実際にあります。
「薬を持っているから安心」ではなく、備えの一部として
ここまで紹介した薬は、症状が出たときの備えです。薬を持っているだけで安心するのではなく、誤食を防ぐ毎日の管理や、症状をすぐに見分けられる知識と合わせて、はじめて安心につながると思います。症状の見分け方は「⑥アレルギー症状のチェックリスト|軽度・注意・危険の3段階」を参考にしてください。
保育園・学校との連携も忘れずに
保育園や学校に薬を預けるときは、使う場面や保管場所を、園や学校とあらかじめ確認しておくと安心です。生活管理指導表の見方は「生活管理指導表の読み方・解釈の仕方」にまとめています。
まとめ
薬は「軽い症状をやわらげる薬」と「命に関わる症状に使う薬」で役割が違い、重い症状が出たときはエピペン®を使います。
- 抗ヒスタミン薬は軽い皮膚症状向けで、効くまで30分〜1時間。ショックなど重い症状には効果が期待できない
- ステロイド薬(飲み薬)は、二相性反応を抑える目的。効くまで数時間かかり、緊急の重い症状には使われない
- 塗り薬は、皮膚の炎症をしずめるステロイド外用薬と、乾燥をやわらげる保湿剤。自己判断で中断しない
- 気管支拡張薬(吸入薬)は呼吸の症状向け。のどのむくみには効果がない
- エピペン®は5分以内に作用し、緊急時に有効とされるのはこの薬のみ。ショックに陥る前に使うほうが効果的
- エピペン®を使ったら救急車を呼び、症状が落ち着いても必ず受診する
- 本人が打てないときは、居合わせた職員などが代わりに打っても、医師法違反にはならない
- 薬の使い方は自己判断で変えず、主治医・薬剤師に確認する
薬の使い方は、必ず主治医や薬剤師の指示に従ってください。
「へっちゃら」まっさんより
うちの息子が使っているのは抗ヒスタミン薬です。咳が止まらないときや、アトピーのかゆみがひどくなってきたときに使っています。
今のところ、うちではエピペンを使う場面には遭遇していません。でも、いつ何が起こるかわからないので、アレルギーっ子を持つ親御さんは、いざというときのために知識として知っておいてほしいと思います。
>前の記事では
③食物アレルギーの治療|症状が出ない量を食べて治すという考え方
<次の記事では
⑤アレルギーは何科?|かかりつけ医と専門医の違いを知ろう
参考にした情報源
- Ⅲ 保育所等での「食物アレルギー・アナフィラキシー」への対応(緊急時対応編)(札幌市)
- 保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)(厚生労働省。福岡県サイト掲載)
- 食物アレルギーによるアナフィラキシー学校対応マニュアル 小・中学校編(日本学校保健会・日本小児アレルギー学会。滋賀県サイト掲載)
- 学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン(日本学校保健会)
- 災害派遣医療スタッフ向けアレルギー児対応マニュアル(厚生労働省掲載。日本小児アレルギー学会 災害対応ワーキンググループ作成の「アナフィラキシーへの対応」を含む)
- 食物アレルギー緊急時対応マニュアル(東京都健康安全研究センター)
- 学校のアレルギー疾患対応の研修スライド(文部科学省。日本学校保健会「令和4年度アレルギー疾患に関する調査報告書」の数値を掲載)
- アトピー性皮膚炎(横浜市)
- 食物アレルギー教室 ~食物アレルギー症状出現時はどうすればいいの?~(環境再生保全機構「食物アレルギーを正しく知ろう」。病院サイト掲載)
- 抗ヒスタミン薬について(国立病院機構熊本医療センター)
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